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100日後に死ぬ父。67日目。

 今日は父に髪を切ってほしいと頼まれたので、夕ご飯が終わってから僕は父の髪を切る準備をした。仕事で疲れていたけれど、もたもたしていると父の機嫌が悪くなるので頑張るしかなかった。髪を切ると言っても、前回と同じようにバリカンで刈るだけだけれど、それでもなかなか大変な作業である。
 今回も前回と同じ3ミリで刈ることにした。父の薄毛の進行具合を確認すると、前とそれほど変わっていなかったので、まだ本人には伝えないでおくことにした。糖尿病のことで悩みはじめているのだから、これ以上悩みの種をわざわざわ増やすこともない。
 バリカンを刈る作業というのは不思議なもので、しばらく集中して作業してると、ひとつのアートを作っているような感覚になる。父は散髪中ずっと大人しく黙って座っているので、それが僕をさらに彫刻家の気分にさせた。
 父も僕も満足のいく仕上がりになると、父は「ありがとう」と言ってお風呂へと向かった。

 切った髪を片付けていると、お風呂に行った父が数分で戻ってきた。どうやら今日は髪を金髪に染めることもするらしく、半裸でせっせと準備を始めていた。これ以上頭皮に刺激を与えない方がいいと思うけれど、それはまた次の進行具合を確認してからまた伝えることとした。

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