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100日後に死ぬ父。76日目。

 先生から紹介状をもらってから、気付けば一週間以上経っていた。父は今週中に大きな病院に行くと言っていたけれど、いつ行くかの話がまったく出ていなかった。今朝父に確認してみると、「昨日までに受けている仕事を終わらせておかないといけないから、まだ行けない」と言った。先生の話ではおそらくは入院するかもしれないとのことだったので、今受けている仕事以外は現状もう受け付けていなかった。あとどれくらいで受けている仕事が終わるのかを聞くと、だいたいあと10日くらいだと父は言った。
 あと10日も病院を先延ばしにしていいのか僕は心配だった。本人的には体重が痩せたこと以外、糖尿病の症状が他に出ていないとのことだったけれど、父が本当のことを言っているかどうかは分からなかった。
 そもそも医者が「立っているのが不思議」と言っていたくらい数値が高かったのもよくわからない。父がやせ我慢をしているようにも見えないし、未だに父が糖尿病であることを、僕自身も実感できていなかった。けれどそれを改めて確かめる為にも、父には早く病院に行ってほしいのである。
 仕事を終えて家に帰ると、父はまだ仕事をしていた。大掃除で作業場が使いやすくなったことで、どうやら作業効率も良くなり、父のやる気にも少しは繋がったようである。いつもなら机に置きっぱなしにしてあった空き缶やゴミも、今日はちゃんと片づけられていた。綺麗になった作業場は、父に何かしらの変化を与えているようであった。
 

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