見出し画像

100日後に死ぬ父。59日目。

 父が服を買う時の優先順位は、安さ>機能性>デザイン、の順番となっている。節約のために安いモノを買うというよりは、服なんかにお金をかけたくないという考え方で、父はオシャレにあまり興味がない。好きなメーカーーもとくになく、普段着をいつも安いという理由で「しまむら」で買っている。ブランド物には興味はあるものの、高くて手が出ないのでいつも偽物を買う。父曰く、たとえ偽物でも堂々と使っていれば本物に見えるのだといって、とにかく人から見て本物に見えればそれでいいのである。
 父は「安い」という言葉に弱く、別にたいして必要ないモノでも、普段よりも安売りしていると迷わず買う癖がある。そのせいで無駄に物が増え、そのくせ使いもしないので、結局買って損するばかりだった。安物買いの銭失いというはまさに父のことで、そのせいで我が家の家計は大きな被害を受けている。
 父はお金を持っていれば持っているだけ使う。とにかくお金を貯めるということが出来ない人で、僕は父がお金を貯めて何かを買ったという話を聞いたことがない。
 そんな父に呆れ果てた母は、父にお小遣いを渡すことを止めることした。だから父が何かを買う時は、「理由」と「値段」を母に伝え、許可が下りないとお金を貰えない制度になっている。
 けれど父は嘘や言い訳を息をするように言うので、なんども母を騙してお金を貰ったりしていた。そうして嘘がバレると、今度は買った物のレシートを見せないといけない制度にしたりと、母はいつも父の無駄遣いと、日々戦い続けているのである。
 今日の父は、安いからという理由で菓子パンを沢山買ってきていた。べつにパンをいっぱい食べたいわけでもないのに、ただ安いから買ってきたのである。しかも賞味期限が近いので、早めに食べないといけない。
 もちろん母は怒り、明日の朝ご飯はみんな菓子パンにしなければならなくなった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?