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100日後に死ぬ父。26日目

 今朝、父は歯が痛いと言って痛み止めを飲んでいた。病院嫌いな父はもちろん歯科医院も嫌いで、歯が痛くても歯医者に診てもらおうとしない。僕が物心ついたころから、父が歯科医院に行ったという話を聞いたことがないので、父の歯は相当重症だと思う。
 一番衝撃的なのが、父が虫歯を自分でペンチで抜いたエピソードである。その時は血が大量に出て、当たり前だけれどとても痛かったらしい。ペンチを使って歯を抜くなんて、まるで映画の拷問シーンである。
 自分で歯を何本抜いたのかは知らないが、父にはとても歯が少ない。だから食べ物も柔らかいものしか食べないようにしている。歯だけを見れば、誰もがお爺ちゃんだと決めつけると思う。無理やりにでも歯科医院に行かせたら、治療費はいくらかかるのだろう。もしかすると50万くらいは掛かりそうである。いや、それ以上かも。
 歯が痛い日は父のテンションは低い。何度も痛み止めを呑みすぎて、効き目が弱くなってきていることもあり、今朝の父は一言も喋らなかった。
 
 歯科医院に限らず、父を病院に連れていくにはどうしたらいいのだろう。毎年の健康診断も父は行かないので、家族としては心配である。しかも最近、食生活を改善した訳でもないのに、急に痩せてきている。調べてみると、糖尿病の症状が多々見られるので、どうにかして病院に連れていきたい。
 けれどにいくら説得しても、父が僕と母の言うことを聞くことはない。いつも一方的に逆切れをして、話を止めてしまう。今朝も痛み止めを飲んでいる背中に向かって、「痛み止めを飲まずに、歯医者に行けよ!」と注意しても、無視された。
 こちらの心配を全く聞き入れてくれないのはとても腹が立つ。

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