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100日後に死ぬ父。74日目。

 倉庫の大掃除は昨日の一日でだいぶすすんでいた。倉庫が家から離れていることもあり、父がいらない物をわざわざ持ち込んでいなかったのが幸いだった。「いるもの」と「いらないもの」の仕分けはほとんど終わり、僕がゴミ処理場へ持って行くものは倉庫のシャッター前にまとめられていた。 
 一日で仕分けがほぼ終わったとはいえ、それでもいらないものは多かった。もう使わない古い棚や、必要のない機械も捨てることになり、今回もゴミ処理場には何度か行くことになりそうだった。とりあえず今朝は二回ゴミを運んだけれど、それでもまだ半分くらい残っていたので、続きは明日やることにした。
 母と父は倉庫の掃除に取り掛っていた。一年くらい全く使っていなかったので、作業場よりも掃除のやりがいがあったとのことだった。
 掃除の途中、スノコの下に手のひらくらいの紙屑の塊を母が見つけた。あまりにも不自然な紙屑だったので、箒で突いてみると、紙屑が微かに動いた。明らかに何かが潜んでいると感じだ母は、父に助けを求めて、紙屑の中を覗いてもらうことにした。
 驚いたことに、紙屑の中にはネズミの赤ちゃんが5匹もいた。まだ目も開いていないくらいの赤ちゃんで、親指の爪程の大きさしかなかった。生き物が苦手な母は悲鳴をあげて、父は「かわいいなぁ」といって和んでいた。僕も写真を見せてもらったけれど、確かに小さい犬のようにも見えて可愛かった。ネズミの赤ちゃんを初めて見たけれど、大人のネズミとは結構見た目が違っていた。
 父は「飼ってみよう」と言ったけれど、さすがに母が許可するはずもなかった。かといってそのままにしておくことも出来ず、結局母親ネズミが見つけてくれることを願って、巣をそのままシャッターの外に移しておいた。すこし可哀想だけれど、倉庫をネズミの巣にするわけにもいかなかった。
 母と父が家に帰る時には、まだネズミの巣には赤ちゃんがいたらしい。とりあえずまた明日様子を見てから、今後どうするか決めることにした。

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