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100日後に死ぬ父。47日目。

 今日も父は「取引先の人と飲みに行ってくる」と言い、夕ご飯を食べ終わると家を出ていった。取引先の人ならしょうがない部分もあるけれど、父が本当に取引先の人と飲みに行っているのかは疑問である。
 いつものヤクザのような服装に香水をつけていたので、本当は女の子の居るお店に行くのだと思う。母はもう父の飲み歩きには怒らなった。そのかわり飲みに行くためのお金を渡さなくなり、父は自分の持ち金でしか飲めなくなった。おそらくお爺ちゃんから貰ったお金や、ギャンブルで勝ったお金がまだあるんだと思う。
 父は最近、お爺ちゃんの家に毎日のように通っていて、そのたびに頼まれごとを引き受けてくる。傍から見れば親孝行をしていると思うけれど、父の場合、お爺ちゃんからのお駄賃が目的である。お爺ちゃんは父に甘いところがある。父とは違って伯父さんは頭も良く、このあたりでは一番儲けている会社を経営しているので、お爺ちゃんは怠け者の父が心配なのかもしれない。でもそれで父にお金を渡しても何の解決にもならいのだから、お爺ちゃんにはもう父にお金を工面してほしくない。
 噂で聞いた話によると、父は若い子たちと飲む時はいつも奢っているらしかった。最近では母からお金を貰えていないのに、父がどうして他人に奢れるほどお金を持っているのかが謎の一つである。
 以前母に、昔父が勝手に借金をしていたという話を聞いたことがある。それが結構な額の借金だったので、僕はそんなことをする父が理解できなかった。けれどそんな事をしても僕の父なわけで、僕はそんな父と向き合っていくしかないのである。

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