見出し画像

100日後に死ぬ父。61日目。

 医者嫌いの父は、市販薬に頼りっきりである。頭痛のときも、歯が痛い時も、足が痛いときも、父は市販薬の痛み止めや睡眠薬でやり過ごす。父の薬用のポーチには、たくさんの市販薬が詰め込まれていて、それを食後に取り出しては飲んでいる。父のことだから用法用量をちゃんと守っているかどうかは怪しく、医者が見たらたぶん怒られる飲み方をしていると思う。
 今朝、薬を飲んでいた父に、ちゃんと用法用量を守っているのかと聞くと「説明書は捨てたから分からん」と言った。
 父は説明書を読まないタイプの人間である。電化製品で困ったことがあると、説明書を読む前にまず僕に解決させる。僕もそれほど電化製品に詳しくないので、結局僕が説明書を読んで解決することになる。僕に聞く前にまず説明書を読んで欲しいと言い続けても、父が説明書を読んでくれたことは一度もない。
 さらに父はパスワードも覚えてくれない。たまに父が「オレが決めたパスワードを教えて欲しい」と聞いてくるのだけれど、そんなもの僕が知っているはずがない。父は僕に聞けば何でも解決してくれると思っているところがあるので、そうしたドラえもんみたいな考え方は止めて欲しい。
 便利な社会になるにつれて、父はそのシステムについていけていない。新しく覚えたり勉強することも嫌うくせに、新しいものには興味があるので、結局全て僕が操作したり設定することになる。
 新しいものに興味があるのなら、せめて学ぶ努力はしてほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?