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100日後に死ぬ父。84日目。

 最近、父はお爺ちゃんの家に行くことが多い。昼間に出掛けることもあれば、夜に出掛けることもあり、その両方のこともあった。昼に出掛けると一時間くらいで帰ってくるけれど、夜に出掛けたときは三時間くらい帰ってこない。
 お婆ちゃんが死んでから、お爺ちゃんは伯父さんの家に引っ越すことはなく、一人暮らしをしている。けれどいろいろと心配なので、そろそろ伯父さんの家に引っ越すことも考えないといけないのだけれど、お爺ちゃんはあまり乗り気ではなかった。伯父さんは心配性なところがあるらしく、お爺ちゃんは自分の自由が無くなりそうなのが嫌なのだという。現に伯父さんはお爺ちゃんの運転が心配で、運転免許証をなかば強引に返還させた。他にも伯父さんに対する不満はあるようで、お爺ちゃんも色々と大変だった。
 父はそうしたお爺ちゃんの愚痴を聞きに行っているのだと言うけれど、それにしても出かけすぎである。お爺ちゃんと伯父さんの関係は今に始まったことではないのだし、お爺ちゃんがそれほど愚痴を言うタイプにも思えなかった。
 やはり母の予想通り、夜はお爺ちゃんの家に行かず、少し飲みに出かけているのかもしれない。帰ってきた時に酔っている雰囲気はないので、今までのようには飲んでいないようだけれど、父が一口も飲まずに帰ってくることはあり得ない話である。
 けれど、あと三日後には病院に行くので、僕と母はもう父を刺激したくはなかった。酔って帰って来ない、それでだけで父は優等生である。

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