#マリー・アントワネット
短編【小説を読まぬ大人の成れの果て】小説
「鷲見泉、あの小説な。少し書き直してくれないかな」
職員室に呼ばれた鷲見泉勇人は担任であり歴史教師でもある白石忠文にこう言われ、反射的に
「どうしてですか。嫌です」
と言った。
「うん。わかる。そう言うと思った。だけどな鷲見泉。あの小説は学級新聞にはふさわしくないと先生は思う」
勇人が通う私立汝自知学院附属中学校では二年生になると年に二回、学級新聞を創ることになっている。
それは大きめの
短編【空飛ぶマリー】小説
美しい自慢の髪はバッサリと短く切られていた。
か細い両の腕は後ろ手にきつく縛られている。
身窄らしい貧素な服を着せられていても、その凛とした姿勢は気品に満ちていた。
彼女は堂々と前方に聳え立つギロチン台を見据えて歩いた。
途中、死刑執行官シャルル・アンリ・サクソンの足を踏みつけた彼女は己の人生で最後の言葉を発した。
「あら、ごめんなさいね。わざとじゃないのよ。わざとじゃ」
1793年、10月1