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短編小説

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2022年7月の記事一覧

短編【ささやかで不確実な完全殺人】小説

短編【ささやかで不確実な完全殺人】小説

監禁状態から解放された時、ぼくは首相が凶弾に倒れた事を知った。

体調の異変に気がついたのは猪烏さんから連絡をもらって二日後の事だった。

「ごめん、春馬くん。俺、コロナ陽性出てしまった。もしかしたら、キミに感染してしまったかもしれん」

その日のうちに病院へ行った。すぐに検査をしてもらえるのかと思ったら唾液収集の容器を渡され、明日の朝九時に病院に提出して下さい、と看護師から言われて帰された。

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短編【名言】小説

短編【名言】小説

私は仕事帰りで立ち寄った古本屋で【日本の名言集】と言うタイトルの単行本を手に取りパラパラと捲った。一番最初に永野重雄の『私の悪口は全て報告せよ。しかし、言った人の名は言うな』という名言が目に入った。

永野重雄。戦後、日本の経済を支えてきた経済界の重鎮。その永野重雄の名言『私の悪口は全て報告せよ。しかし、言った人の名は言うな』という言葉は、私の座右の銘になった。たった今から!

深い。深すぎる名言

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短編【リピート・デイズ】小説

短編【リピート・デイズ】小説

リピート・1

午前六時。私はいつもより早く目覚めた。ドリカムに『決戦は金曜日』と言う名曲が有る。愛の告白を決戦と置き換え、意気込む女性の心の機微を描いた名曲。今日はその金曜日。私にとっても決戦の日。だからと言って告白をすると言うようなロマンチックな意味での決戦じゃない。もっと現実的な意味での『決戦の日』なのだ。私は、ある大手出版会社に務めている。今日、私が記事を書いている音楽専門誌『メロディライ

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短編【悪魔のストラップ】小説

短編【悪魔のストラップ】小説

「あれ?姉ちゃん、珍しいね。日曜日なのに家に居るなんて」
「だって、予定無いもん」
「デートは?毎週毎週、彼氏と出歩いてたのに」
「別れた」
「また?付き合ったばかりでしょ?」
「だって、いい男、見つけちゃったんだもん」
「見つけちゃったって…。今度の彼氏、原子力発電会社で働いてるエリート社員で金持ちだったんだろ?」
「そ。ご飯奢ってもらったり、バック買って貰ったり、旅行に連れて行ってもらったりし

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短編【紫の蝶】小説

短編【紫の蝶】小説

1

「なあ、出来杉」
「なんだ、野比」
「おまえ、一日何時間勉強してたんだよ」
「俺か?最低8時間かな。調子がよけりゃ10時間」
「そうか。お前でもそれくらいしてるのか。じゃ俺はもっとしなきゃならんな…。それにしてもお前は凄いよなぁ」
「何が」
「大学一発で合格してさ。しかも受験勉強中に3人も泥棒を捕まえて表彰もされてさ」
「ああ。アレは偶然だよ。俺の部屋、強盗に狙われ安いんだな」
「強盗に狙わ

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短編【心オーナー】小説

短編【心オーナー】小説

『いらっしゃいませ』

という橙色の文字が光っている自動受付機のモニターをタッチする。何人で来たのか、カウンター席にするのか、などの設問に、それぞれ『一人』と『どちらでもよい』を選ぶ。すると13番と書かれた発券伝票がでてきて「番号に書かれたお席にお付き下さい」と女性の声を模した電子音声のアナウンスが自動受付機のスピーカーから流れる。

《おき寿司》の従業員たちは、お客様の邪魔にならないように、汚れ

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