見出し画像

短編小説「こんな私、」

朝日がカーテンの隙間から容赦なく差し込み、激しい頭痛とともに目を覚ました。

頭が割れるように痛む。最悪の目覚めだ。
昨夜のことが霞んでいて、何も思い出せない。

友達とご飯を食べて、お酒を飲んで…。
その先はもう覚えていない。

冷たい。
踵から脹脛にかけて、シーツの濡れを感じた。
吐き気が込み上げる。

また、洗濯だ。
でも今の自分には、そんな気力すらない。

狭いベッドの隣では、知らない男がまだ気持ちよさそうに寝ている。
その顔を見るたびに、嫌悪感が押し寄せてきてしまう。


震える手でベッドから這い出すように起き上がり、よろめきながら下着をつけ、部屋着を羽織った。

床に転がった自分のスマホを拾い上げる。
充電残量9%。時刻は10:18。

絶望的な気分で画面を見つめる。

一限はおろか、二限すら間に合わない。
これで、二つ分の単位が無駄になってしまった。


私はこんなことをするために、わざわざ上京して一人暮らしを始めたわけではない。

そのはずなのに…。

心の中の埋めがたい何かを、必死に探している自分がいる。
でも、こんなことではそれがどうにもならないことも、私は分かっている。

なのに私は、こんな生活を続けている…。

両親がこんな姿を見たらどう思うだろうか…。

どれだけの負担を被って、私を送り出してくれたのか。
どれだけの苦労をして、私を育ててくれたのか。

どれだけ大切に、私を生んでくれたのか…。

『おはよう』

男は起きたらしく、服も着ないまま、近づいてきた。

『大学は間に合いそうなの?』

「いえ、もう無理です」

『じゃあさ、また、続きしようよ』

「え…」

『はい、座って』

「いや、私は…」

抵抗もできるはずなのに、私はベッドに近づいてゆく。

私は私が嫌いだ…。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?