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すでに西日は地平線の向こうへ隠れ、空は薄闇を広げ始めていた。街を歩く人間は見るからにアウトローな連中ばかりで、そうではない人間は足早に家路へと帰る。日が暮れれば、この街は完全に牙を向く。その牙は逆らう者へ容赦なく突き立て、噛み砕き、そして食らう。慈悲などなく、一度噛み付けばその命を最後まで食らうのだ。 そんなデッドシティ、フォーストリートに店をかまえるデッドエンドは、主に夕刻から明け方近くまで営業しているバーだ。店主の堂妙寺という男が料理の腕を振るい、もう一人いるウェート
「おーお、うようよいやがる、ディザートチャイルドどもが」 唇を吊り上げてビアンカは笑うが、デッドシティに足を踏み入れた瞬間から若干の緊張感を持っていた。それは悠々と隣を歩く、バートも同じだった。 なぜならデッドシティ第一の区画、ワンストリートはディザートチャイルドたちの縄張りだった。 ディザートチャイルドたちは、犯罪予備軍である親に捨てられた子供たちを呼ぶ。この砂漠化した荒野に面している区画にいるため、ディザートチャイルドと呼ばれている。 彼らは集団で生活をしている。
地球上では、過去に三度の世界大戦を経験している。 一つは第一次世界大戦。もう一つは第二次世界大戦。その後も紛争は絶えなかったが、それでも一定の戦争を除き、世界大戦と発展するような戦争はなかった。 それよりも地球温暖化と戦うほうが、より有意義な課題とすら思われていた。 社会はよりよい方向へと、進んでいたし、これからもずっと続くと誰もが確証もないのに信じて疑わなかった。 だが第三次世界大戦は、なんの前触れもなく訪れた。 旧アメリカ合衆国による、各国核保有国へ向けての核
西日が荒野を照らす。だがそれはどこぼんやりとかすみ、はっきりしないまどろみの夕焼け。薄く幕がかかったかのような空は、もう何十年、いや数百年になるらしい。 それでも年々よくなってきていると、ニュースの向こうで偉い地質学者が言っていたが、目に見えてはっきりわかるものではなかったし、実感できるようなものでもなかった。 「腹減ったぁ……」 唇の端に煙草を咥えたビアンカは、目的とする都市をスカイブルーの瞳に写しながら、どこか力なく言った。淡い西日に照らされたショートカットの髪は金