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「維新」には古代の人々の前向きな思いが込められている(『詩経』大雅・文王篇)

今回取り上げるのは『詩経』大雅・文王篇からの言葉。

周は旧邦なりと雖も、其の命維れ新たなり
(読み:シュウはキュウホウなりとイエドも、ソのメイコれアラたなり)

『詩経』大雅・文王篇

周は古い歴史のある国ではあるが、その天命はまだまだ新しい、という意味。

「維新」という言葉はここからきています。

「これあらたなり」と読むので、ここから新しくしていくぞ!というイメージです。

小学館『日本国語大辞典』にも、「すべて改まり新しくなること」とありますので、現代でも同じ意味で使われていますね。


周というのは殷王朝の後に生まれた王朝です。

元々は殷の傘下にある国に過ぎませんでしたが、前1046年の牧野の戦いで殷を破り、周王朝を開きました。

この周王朝が力を失い、前771年に洛陽に遷都したことで、春秋時代が始まります。

洛陽に遷都してからは東周と呼ばれますが、この東周は前256年に秦の昭襄王(しょうじょうおう)に滅ぼされるまで存続しています。

ちなみに、昭襄王は秦の始皇帝の曽祖父にあたります。

周は東周時代を含めると800年くらい存続していたことになるので、とても歴史のある国です。

では、この詩はどの時期の詩なのでしょうか?

後漢末の儒学者である鄭玄(じょうげん)によると、この詩は周王朝がまだ盛んだったころに歌われていたものと考えられています。

「古い国だけど、むしろこれからますます盛んになるぞ!」という人々の期待が感じられますね。

滅亡寸前の時期の詩だったら、「周はまだまだ頑張れるんだぞ・・」という感じの悲しい詩になるところでした。

一安心です。

周は旧邦なりと雖も、其の命維れ新たなり
(読み:シュウはキュウホウなりとイエドも、ソのメイコれアラたなり)

大雅・文王篇

古代の人々が抱いていた、未来への期待に溢れた詩。

私たちは歴史を知っているので、後の周王朝の凋落を思い出してちょっと寂しい気持ちになりますが、当時の人々からすると、世の中が安定していて将来に期待が持てる時期だったのでしょう。

「其の命維れ新たなり」というところに、古代の人々のポジティブな気持ちを感じます。

「維新」という言葉には、意味以上に前向きな気持ちが宿っているのかもしれませんね。


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