管理部門の理想と現実

記事の目的

管理部門の役割(理想)と能力が不足する事情(現実)を理解する

雑務の引き受けによりコスト圧縮と利益増に貢献する

会社員は自営業と違い、経理や社会保険その他のめんどくさい雑務を管理部門がやってくれます。

管理部門は従業員の雑務を一手に引き受けることで効率的に処理し、現場サイドに利益につながる仕事に集中してもらいます

ただ、単に作業として処理するだけならば派遣やアウトソーシングが整備された現代では外注すれば済みます。

管理部門の真骨頂

より高度な管理部門の仕事は「リスクコントールのプロ」です。
リスクコントロール自体は営業、開発問わずどの部門も行いますが、管理部門が扱うリスクとは「将来発生する可能性はあるが避けられるコスト」です。

経理であれば「余計な資金調達コスト」や「対応コスト」で、
・資金がショートしないように資金繰り情報の整理と経営層へのアドバイスをする
・税務署や監査人に無用な疑いを持たれないように資料を整えておく、説明できるようにしておく

法務であれば「訴訟コスト」や「対応コスト」で、
・取引においてもめごとになりそうなことを予測し、先んじて手当てをするよう助言する
・コンプライアンス的な観点から、客観的な問題点の指摘と手当てを助言する

これらのリスクの重大さを理解したうえで、リスクをコントロールする(リスクを最小化する、回避する、など)方法を提案できなければなりません。指摘するだけならば周りを困らせるだけです。

逆にいうとこれらができない管理部門に価値はないと思っています。

現実の管理部門の立場

理想論を述べてきましたが、現実として管理部門に上記のような能力が万全に備わっていることはまれだと思います。

その理由はおおむね以下のものです。
①そもそも発言権がない
②人員削減対象になりがち=雑務のウェイトが大きくなりすぎる
③ノウハウが言語化しづらい=教育しづらい
④人事事情

①は「収益を上げる部門が偉い」という文化においては管理部門は軽視されがちであり、立場を強めるには管理部門自身が担っている仕事を発信するとともに経営層からも支援してもらう必要があります。
②は雑務の処理しか注力してこなかった管理部門がコストセンターとしかみられなかった昨今の背景に原因があります。管理部門自身が自己変革し、適切なリソースを経営層に求める必要があります。
③はいわずもがな、どの部門でも起こることです。

④は特殊で、必ず起こっているわけではないですが、特に大企業で起こりがちではないでしょうか(私の経験上)。

管理部門の人事(悪循環パターン)

管理部門は一般的に採用数が少なく、人材の流動性が低くなりがちです。
そのためよその仕事のやり方を知らず、また従来の仕事に固執しがちで、自己変革を起こしにくい体質になりがちです。

また会社によりますが、管理部門は現場部門で評価されなかった人、貢献できなくなった人(高齢や病気になった人)が配置転換されることがあります。グループ企業によっては、親会社で上記のような評価を受けた人が出向・転籍してくることもあります。
残念ながらこういった人は管理部門に求められるような経験や能力がない場合が多く、さらに新人と違って適切な教育を受ける機会も少なく、結果、管理部門の生産性も本人のモチベーションも上がらない、ということになります。

採用時にミスマッチを避けるか適切な教育を行うことが一番ですが、管理部門は採用・評価の基準を定めづらく、また日本的な雇用慣行(クビにできない、終身雇用、給与も大きく下がらない、強力な配置転換権)もあり、解決を難しくしています。

このような状況のため、やる気や能力のある管理部門人材はモチベーションを下げてしまうという悪循環が生まれます。

今後解決できるかは難しい

以上のように管理部門の理想と現実を述べてきましたが、このギャップを解決するには企業だけでなく社会として取り組むことが必要で、すぐに解決することは難しい、というより不可能です。

長期的な視点ではいずれ解決することができるかもしれませんが、いずれにしろ大きな苦労を伴うでしょう。

現在はシステム化、AI、RPAなどで(現場部門だけでなく)管理部門の生産性を向上しようという流れがありますが、本質的には仕事にあたっている「人間」に着目し、持続的に、モチベーション高く仕事にあたるよう評価制度や教育制度を整備しない限り、小手先の変化に終わってしまうでしょう。

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