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ブランドの三角

前回“デザインの三角”というものを考えてみたのですが、その三角を評価するために存在する“評価軸”について、考えきれていなかったので書いてみたいと思います。そのためにデザインの三角を“ブランドの三角”にして考えてみます。

前回記事はこちら→

前回考えていたのは、私にとっての“デザインの奥義”というもので、それは構造主義の“三角の構造”というものから発想したものでした。
それがこちら…

その三角を評価する軸は

縦軸が密度(密/疎)

横軸が明確さ(鋭/鈍)

というものです。

今回は、その縦軸と横軸の“評価軸”について考えてみたものです。

そして、この評価軸を考えてみる時には、デザインの三角を“ブランドの三角”にしてみるとわかりやすいのではないか?
というところから考えてみました。


ブランドの三角とは?

それがこちら、

全体の大きな三角形は
Brand
Market
Country

となって、
各項目の対立構造は

強・弱

としてみます。
対立構造においては、前回のように“内・外”という項目でも良いのですが、ブランドにおいては強みや弱みなどの考え方の方がわかりやすいかもしれないと思い、“強・弱”としてみました。
では、3項目を具体的に見てみると…

○Brand -ブランド-
個人又は会社としての特徴や、特性。得意なことや出来ること(強い)、不得意なところや出来ないこと(弱い)などをまとめて考える。

○Market -マーケット-
自分のブランドがどういった市場に所属するのか?同時にその市場における現在人気のもの(強い)や人気のないもの(弱い)を考える。又は、自身の作りたいブランドの製品を買ってくれそうな価値観の合う人(強い)と、価値観の合わない人(弱い)などを“設定・想定”して考えてみるのも良いと思います。

○Country -カントリー-
市場が存在している国の特徴や、文化的な背景、社会的価値観といった要素。例えばその国で大切にされている価値観(強い)や、その国で批判される価値観(弱い)、と言ったシリアスな対立の考え方や、その国の文化のメインカルチャー(強い)やサブカルチャー(弱い)と言ったカジュアルな捉え方でも良いと思います。

といった感じで、3つの要素がマッチしているかどうか?で自身のブランドが世の中で受け入れやすい状況かどうかの参考にすることができるし、逆にミスマッチならばマーケットを変更したり、大胆に別の国で商売を始めるというカントリーそのものを変えてみることもありかもしれません。

そして、
本題の縦軸と横軸の評価軸はどうかというと…

まずは縦軸の図がこちら

密度(密/疎)の要素から考えると
Country:−、Brand:+、Market:−

となるわけです。

つまり、
◯縦軸の密度
ブランドというものは唯一“主体的”な存在として考えることが出来るわけですから、密度という軸で評価すると密度は高い。逆にマーケットとカントリーは主体的なものではなくて、あくまで“集合的”な存在なので密度は薄くなっている。つまり、ブランドは一つしか存在し得ないものなので濃密な感じで密度が濃く、マーケットやカントリーでは対象の数が多くて密度が薄まっている感覚。自分という主体から近いから密度が高く、遠いから密度が低いという考え方によっても理解出来るのではないか?と思います。よって唯一ブランドの項目だけが+(プラス)の評価になる。

そして横軸の図がこちら

明確さ(鋭/鈍)の要素から考えると 
Country:−、Brand:±、Market:+

◯横軸の明確さ
これがちょっとわかりにくいので、各項目1つずつ確認していきます。

・カントリーについて
カントリーの項目としては、国の文化や特徴みたいなものであって、それらは隠れて日々の生活の背景を支えている価値観のような存在。故に“見えていない”存在として明確さに欠けるということで、−(マイナス)評価。

・ブランドについて
一方でブランドというものは、自分自身のブランドで考えると唯一無二の存在ですが、社会全体で見てみると“多種多様な存在”があり、ある方向性を持ったブランドがあれば、その反対の方向性を持ったブランドもある。その点からみると、±(プラスマイナス)両方の評価として理解出来る。

・マーケットについて
カントリーという目に見えない価値観(全体)と、ブランドの持つ方針(個)が、1つの出会いの場として成立することによってマーケットが存在していると考える。つまり、マーケットは、ブランドとカントリーの項目の“結果”として見えてくる存在なので、とても明確であると言うことで+(プラス)評価が出来る。

ちょっとわかりにくいので例を出すと…

ある一つのファッションブランドを作ったとします。でもそのブランドは、その国の文化や価値観にそぐわないものだったとしたら、市場原理によって淘汰されマーケットでは存在出来ない。一方で、あるファッションブランドがその国の人々に受け入れられて人気が出れば、評価されそのブランドの洋服が買われ存在しつづけることが出来る。つまり、逆説的に言うとマーケットで存在出来ているブランド(お客さんが買ってくれるブランド)は、ブランドの価値観が“その国”の価値観に共感され認められているということである。それはすなわち、2つの価値観(ブランドの価値観とカントリーの価値観)の接点として立ち現れてくる1つの場所(現象)として“マーケット”が存在しているということである。つまり、Brandの価値観がCountryの価値観に認められた結果“出現したものがマーケット”であるということなので、“明確さ”において+(プラス)の評価が出来るのだと思うのです。

では、これを前回に引き続き、バルミューダのトースターで考えてみます。

バルミューダのトースターのブランドの三角

◯ブランド
強→世界一美味しいパンを食べられる、美しいトースター。
弱→トースターのみの機能で用途が少ない

◯カントリー
強→食文化が発展していてパン食や美味しいものを食べたい人が多い。つまり、機能的なものが充足し、豊かなものを求める傾向がある。
弱→様々な要因によるだろうが、日本では比較的住空間が小さいと言われるため、トースターとしか使えないものを置く場所の確保が難しい。

◯マーケット
強→美味しいパンを食べたい人や住空間が広い家庭のように、こだわりを持つ人は多少製品価格が高くても購入してくれそう。
弱→購買層は収入も高く、住空間も広い戸建てだと考えるとそう言った顧客層は存在しそう。しかしニッチな市場かもしれない?

と言った感じでしょうか?
この三角の構造で考えると、市場はニッチでも、ブランドとカントリーの価値観が似ているため、マーケットとして購入してくれる層は存在しそうだなということはわかります。

しかし、実は“私は”バルミューダのトースターを買っていません。三角の構造からはマーケットが存在しそうなのに、買っていない人(私)がいる。
考えれば当たり前のことなのですが、
それがどういうことかというと…

私は、あまり朝食にパンを食べないので、バルミューダのトースターを買っていません。なぜならブランドの強い要因の“美味しいパンを食べられるトースター”にマッチしないのでマーケット(購入者としての私)が成立しない。同時に小さめ住居の賃貸なので、トースター機能とレンジ機能の一人二役の多機能レンジを持っています。この観点からもカントリーの“弱い要因”にマッチしているので、マーケットは成立しない(同時にブランドの弱い要因にも属してしまっているわけです)。なので結果として、私はバルミューダのトースターを買っていない。

しかし、バルミューダのトースターは世の中でとても認知されていて、多くの人に買われ愛用されているという事実がある。

このことからわかることは、購入する人がいて、ブランドが成立しているということは、“マーケットがある”ということであり、ブランドの価値観とカントリーの価値観が近いという“証明”でもある。それは三つの要素が支え合う形で三角の構造が成立しているということであるが、一方でマーケットが成立しない“購入しない人がいる”という当たり前の事実です。

つまり、
このブランドの三角は、ブランド・マーケット・カントリーのそれぞれの“価値観”について考察し、3項目の関係性が“合っているか合っていないか”について分析することが出来るということ。一方で“市場規模”について考えるものではないという感じでしょうか。たった1人でも価値観が繋がる人がいればマーケット(売買)が成立してしまうので、その大きさは測ることができない。世界一の高級時計職人さんは顧客が3人しかいないけど成り立っているみたいな話も聞いたことがあります。ならば、たった1人でも共感が得られるならブランドには価値があり、それで十分という考え方も出来るでしょう。私も自分自身がブランドを作りたいから作り、それに共感してくれる人が1人でもいてくれたらラッキーだと思う人間ですし、人それぞれによって重要度が変わるものだと思います。なので、ビジネス的に数字が重要ならば、市場規模の試算は必要な人がそれぞれ別で行えばいいのかなと思います。

まとめ

さて、バルミューダのトースターからブランドの三角を考えてみましたが、このプロセスの中で縦軸横軸の評価というものは必要でしょうか?

おそらくこういうことだと思います。

前回のデザインの三角というのは、アイデアや内容を積み上げていく際に使うものであって、今回のブランドの三角は、そこで練られたアイデアが一体どんな人に“共感”されるのか?ということ。

デザインの三角で考えられたアイデアを、このブランドの三角における“brand”の場所においてみて、どのような国で、どのような人なら好んでくれる可能性があるか?という“共感”してもらえる人達を分析すること。それが今回のブランドの三角のポイントのように思いました。


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