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猫になった日 ~猫という名の選択~

綺麗なとても綺麗な 満月の3日後の夜
僕はいま猫になった
待つことしかできなくなった
飼い主が探しにきてくれる日まで

僕が猫になった日

人間としての充電池がすべてなくなった
誰しも余力は残しているはずだが
ほんの一瞬で
ちっぽけな僕のつまらない計算が狂い
予備電池も使う羽目になった

その予備電池さえも たった一言でショートした

こんなに綺麗さっぱり 身体から何もかがなくなるとは…
笑いたかったが声というものすらでなかった
もう少し考えてSAVEしながら時間を使えばよかったと
変な反省が頭をよぎったが すべてが今更だった

身体が小刻みに震えて 
椅子に座っているのか
机に身体を預けているのか
泣き声なのか 心の叫びなのか
身体中の感覚がすべて消えた

空白の時間が過ぎ  そして猫になった

猫としての帰り道は
なんだかとても軽かった

鏡に映った僕の姿は自分でも驚くほど
実体のない まさに幽霊に近いものだった

いつもなら息が少し苦しくなり
マスクを鬱陶しく感じる 長い登り坂も
重いはずの僕の身体は空気と一体化したのかのように 
ふわふわと浮いているように感じた

家について何をしたのかは覚えてない
気が付いたらソファーで目が覚めた

猫になった日が終わった

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