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味噌汁も冬もすきです、白葱も

味噌汁の具材を切る。
トントントン
ショキショキショキ。
細く長く響く包丁の音。

ぬわっと湧きのぼる匂い。
みずみずしさに甘さを加えた
さっぱりした感じな冬の台所。
シンクの横の小さな窓には
無数の水滴を帯びた潤いが付き始める。
いつもこうして冬の台所の日々は
移りゆく。

そこには小さな家族があって
中くらいの食卓の上に、豊かなお膳が並ぶ。
お椀がくちびるに当たり
あたたかく少し熱い夜がある毎に
まだやってきていない明日の朝を待ち
昨日の朝を記憶する。

食べ終わると食器を片づける。
蛇口から出るお湯が食器に当たって
弾けては繰り返し
三点の点のまるで余韻のように湯音が響き渡る。

・・・ ・・・     ・・・

みな、それぞれ思うことを語ると
のどの奥もこゝろもひと晩中うるおう。
こんな目の当たりがわたしと家族を繋ぎ留めている。
時折手を休めたりからだを放り出したり
深いため息をついたりして。
台所に立つわたしの影が薄まらないように。


トントントン
ショキショキショキ。

 
 

*****



葱の味噌汁が似合うおかあさんね、と
言われてみたいな。


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