その人は「滝」
その人は話す時に、目線を外さない。
私の瞳の奥にある、言葉にならないものを見ようとする。
「目は口程に物を言う」が、
「目は耳程に物を聴く」のだと、理解した。
私はその瞬間、その人の中に森の奥で飛沫を上げる滝を見た。
力強い流れをまといながらも、滝つぼではじけ飛ぶ水滴は爽やかだ。
決して触れることは叶わない大自然の奇跡。
でも、その水の軌跡を眺めているだけで、私の心にあった汚れは下流へと流されていく。肺に吸い込んだ空気が、心を透明にする。
ここは、安全な居場所だった。
その人は動作や姿勢のすべてで、空間を作り出しているのだった。
滝のようにしたたかで、
川のようにしなやかで、
そこに在るだけで、人生という山河になる。
こんな生き方をする人がいるのだと知った。
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