「最近の」ではなく「優秀な」若者が辞めている
「最近の若者はすぐ辞める」と言っている人もいますが、新卒入社者の離職率は実は長年に渡り約3割を常にキープしています。1999~2005年の間(いわゆる就職氷河期)は、今よりも高い35%前後で推移しました。
つまり、最近の若者が突出して辞めていくわけではないことがデータからわかります。
この「離職率は約30年間ほぼ横ばい」という事実は、人事界隈(特に採用)の人であればもうすでに聞いたことがあったと思います。
データからわかるように離職率は一定の値をキープしています。つまり、自社にいる1年目〜3年目の社員のうち3割が、入社後3年以内に離職します。
例に漏れず、入社1年目〜3年目以内の社員が退職した場合、「離職率は約30年間ほぼ横ばい」という事実を知っている人事担当者は、淡々と受け止めます。まあ、データ通りだよね、と。でも、本当にそれで良いんでしょうか?
離職の数はデータ通りであったとしても、退職理由は世代によって変化している可能性もあります。それによって、会社が対策できることもあるかもしれない。また、「退職」と一言でまとめても、「どういう人材の」退職なのか?が気になるポイントです。
ここで、冒頭に紹介した「最近の若者はすぐ辞める」という中年世代のぼやきですが、(実際の離職数は以前と変わらないにも関わらず)なぜ、そう感じられているのでしょうか?
これは、あくまでも仮説ですが、最近は「目立つ人」「優秀な人」が辞めていくから、話題になるのではないでしょうか。
一昔前までは、新卒入社をした会社で定年まで迎える終身雇用を、会社も労働者も前提としていました。そこで活躍し、出世し、階層構造の上の方を目指すのが模範的なサラリーマン人生だったはずです。そこで頑張って定年まで迎えれば、退職金もたっぷりもらえる。そんな時代でした。
でも今はどうでしょうか?2019年にトヨタの社長が「終身雇用は守れない」と発言したり、終身雇用が前提ではなくなってきています。ということは、いずれ転職をしないといけない可能性が大いにあるということになりますね。では、より良い転職先を目指すには、まずは何かのプロフェッショナルとして活躍し、他社でも求められるような人材になる必要があります。いわゆる日本的な風土な会社では、社内異動を繰り返し、その会社での「総合能力」は高めることはできるかもしれませんが、それが外に行って通用するかどうかはわかりません。しかも、平均退職金給付額も減っています。つまりずっと同じ会社で働いても、昔ほど金銭的にもキャリア的にも旨味がありません。
となると、優秀な人材ほど、早い段階から外に出て、自身でキャリアを構築し、キャリア自律をしたいと思うのは当然ではないでしょうか?
私が知っている限りでも、3年以内に辞めたのは本当に優秀な方々ばかりです。優秀が故に、見切りも、行動も早いわけです。
離職率自体は統計データ内に収まっていたとしても、その退職、見過ごしてしまって本当にいいんですか?と思います。
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