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酒を愛してしまったからな

表題は、と或る將棋々士の呟き。將棋聯盟會長でもあった大山康晴15世名人が棋士たちを無遠慮に評價して囘るといふ、現代であれば、パワハラとも取られかねない企畫の中で紹介されたものである。

發言者の五十嵐豊一八段 (當時) が、大山15世名人に期待されたほど活躍できなかったのは、「酒を愛してしまったから」らしい。易きに流れたといふことだらうか。

節酒ノスヽメ

僕は左黨ながら、酒は嗜む程度以下に留めることを強く勸める。何かの道で大成するために、ではない。節度を保って、社會生活を送るために。下戸の (或いは、醉はぬことに白けて、飮まぬ) 人からは稀に「飮み助は樂しさう」と羨ましがられるが、飮酒のやうに容易く得られる快樂に毎日浸ってはいけない。飮酒以外の物事に對する興味が減衰してしまふ。

節酒や禁酒が簡單にできれば良いのだけど、困ったことに、酒は美味い。自分のやうな常飮理事を除いても、この評價に贊同する人は多からう。贊同者の一定數は、仲閒內で飮み食ひする樂しみを酒の美味さに合算してゐるやもしれないが、幸か不幸か、酒は獨りで飮んでも美味い。

これでノンアルならば、どれだけ良かったか。自分の場合、味の面で酒に代はる飮料が見附けられないので、已む無く酒を選んでゐる。仕事後の飮酒で得られる輕い脱力感は惡くないが、別に醉ひたいわけではない。不味い酒には手を出さず、食中酒に向かないものやアサヒ スーパー ドライを好まないことも、その傍證と言へよう。アルコール依存症ではあることは確實だが。

お酒やめますか?それとも(ry

前述のとほり、酒は、そのほかの物事に對する興味を削ぐ。大切な人と一緒にゐる時であれば、餘計なことを忘れて、その人との時閒に却って沒入できるといふ效能が有るかもしれない。

自分を律して、この、數少ない利點だけが得られゝば苦勞しないが、自分に限って言へば、酒量を抑へられず、萬事どうでも良くなってしまふ場合が殆んどである。「外國語[*]を勉強する」「今晩中に確定申告を濟ます」程度の課題は、腦內審議を經ること無く、翌日以降に囘される。重要事を面倒に感じてしまふことさへ有る。

[*] '母語以外の言語' の意。「國」に縛られない用語が欲しいところ。

それでも飮みたいあなた(/わたし)へ

それでもなほ飮みたければ、能ふ限り人と關はらないことである。飮酒時に限らず、日頃から獨りでゐることが望ましい。酒に因る(と責任轉嫁される)失敗のうち、他者を害さないものはまだ良いからである。

自爆は、他者に無害であっても、惡ければ己れの命を落とす。それに、無害とは言ひつゝ、周りに何かしらの迷惑 (最惡は遺體處理の勞) を掛けるのだが、人閒關係を壞し、社會生活に支障を來たすよりは良からう。

かう言ふと、他者を氣遣ってゐる風であるが、そも〳〵人より酒を愛してゐるのである。まともに取り合ってはいけない。

人からの愛を必要としないのであれば、酒と上手く添ひ遂げられるやもしれない (この場合でも、最善は下戸)。「讀書や映畫鑑賞を好む」「ぼっち飯や獨り旅も樂しめる」くらゐの孤獨耐性では、人閒關係を酒で狂はせてゐる割りに、所々人に賴るといふブレが生じる。

酒に走りたければ、「もう一度ぬくもりを ... 」などゝのち〳〵後悔せぬやう、「愛などいらぬ!!」級に振り切ること。このやうな人が發する表題文「酒を愛してしまったからな」は、きっと堂々としたものであらう。それでも、酒は程々に。


しご]た ちん]ちん そつぁ たん]たん。もろ]た ぜんな] そつい] かえ]て [に]かと かっ とっの] がそりん]に しもん]で '仕事はテキトー、酒はグビ〴〵。貰った錢は酒に替へて、新しいのを書く時のガソリンにします' 薩摩辯 [/]: 音高の上がり/下がり