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恩田陸

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#本紹介

恩田陸「夏の名残りの薔薇」

恩田陸「夏の名残りの薔薇」

かなり不思議な感じのミステリー
小説を読んでるというより 舞台を観ているような感覚

山奥のホテルに招待された客 招待したのは不穏な過去をもつ三姉妹
三姉妹の芝居めいた会話を中心に 毎晩豪華なパーティーが開かれるが
そのホテルでいくつかの変死事件が起こる

語り手を変えながら 同じ出来事が 変奏曲のように繰り返される
何が本当に起きたことで 誰が本当のことを言っているのか
読み進めながら 頭が混乱

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恩田陸「球形の季節」

恩田陸「球形の季節」

噂ってこわい 読後の第一印象はその一言につきる

元はある少年の思いつきなんだけど 噂や言葉が広がるうちに
何か得体の知れない力を持ち始める それが怖い

舞台は谷津という田舎町
作品中に出てくる「本当の谷津」とは何のたとえだろう
不幸な出来事で心に傷を負ったものや
ある種の感受性の強い子はそこに跳んでいくことができる 
そこは現実よりも心地いいらしい
そして
「8月31日みんなを迎えに来る」そん

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恩田陸「月の裏側」

恩田陸「月の裏側」

怖かった
読んでる間中 じっとりと湿っぽい空気がまとわりついて じわじわ恐怖が迫ってくる感じ

無意識のうちに他者と同化することを避ける多様性こそが 生物としての正しい戦略のはずなのに

なぜか私たちは 常に『ひとつ』になりたがり 誰かに服従することに 憧れや安らぎを抱いてしまう
意識を いや無意識さえも 他人に支配され『盗まれる』ことに心地よさを感じてしまう

だからこそ 人は簡単に 

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恩田陸「上と外」

恩田陸「上と外」

上・下巻合わせるとかなりのボリュームだけど ぐんぐん読めてしまう

登場人物の言葉が心にぐっと突き刺さる
素敵な人生観のひとたち

人生は、何もしないでいるには長いが、何かをやりとげるには短い。

自分からは何もしないくせに、いつも他人が何をするか気にしてるひとがいるでしょ。ところが、誰かが手を伸ばして何かを手に入れると、それはあたしが欲しかったのにずるいわ、とか、不公平だから分けてちょうだい

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恩田陸「ねじの回転」

恩田陸「ねじの回転」

この人の世界観ってやっぱりいい いつも そうそうそのとおりって思ってしまう

世界は常に均衡していなければならない。例外や過剰は許されないのだ。
神の摂理は、不自然なもの、いびつなものを見逃さず、均一であるものも許さない。
その一方で、世界は常に変容していなければならない。停滞は生命にとって無意味であり、死そのものである。逆に言うと、生命活動とは変容することなのだ。

時間を遡行し 歴史を変

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恩田陸「光の帝国」

「常野」とは 権力を持たず群れず常に在野であれ という意味だそう

常野からきた特殊な能力をもつ人たち なみはずれた記憶力や遠くの出来事を見る力など さまざまな力を持ちながらも 普通の人々の中でその力を生かしながら穏やかに暮らす常野一族

彼らをめぐる連作短編集

彼らはみな穏やかで優しく 自分の能力を受け入れ 人のために使い生きてゆく
その能力ゆえに辛いこともある 『光の帝国』の結末は痛ましく残

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