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『解体屋ゲン』 #56 ひと足早い雪

月日が流れるのは早いもので、2019年も1ヶ月が経過しようとしています。ときにみなさんは、自分にゆかりのある場所やかつて住んでいた家を訪れることはあるでしょうか。私は時折思い出したように訪れるクセがあります。

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昔住んでいた社員寮、借りていたレンタルオフィス、はじめての一戸建て、好きだった町並み……10年単位で町並みを見てゆくと、建物そのものが建て替えで消失してたり、それどころか町並みそのものが再開発で姿を変えてたりします。都市にも流行り廃りがあり、例えば代官山ヒルズは昔は流行の最先端でしたが、その後次々と出現した新たなヒルズのせいで影が薄くなったり、最近ちょっとショックを受けたのは、新宿の街並みがなんとなく古ぼけて見えたりとか…。

いつも難しいな、と思うのは、古くなることは悪ではなく経年劣化の味わいが出るのですが(典型的なのは例えば京都ですね)、短期的に見た時にはダサく見えたり、お店であれば具体的に売上が落ちてしまうためにリニューアルをかけてしまいます。リニューアルしたてはいいのですが、そういうお店に限って流行を追うので、また10年もすれば古臭く見えるようになる。最初から経年劣化を計算に入れてそれが味となるように先を見越した建物にすればいいのですが、それはかなり建築家の力量が問われます。予算や工期が限られていることの方が多いですし。

あれ、最初から脱線してしまいましたが、今回登場するおもちゃ屋さんは、実はモデルがあります。それは麻布十番商店街のほぼ中央にある「小林玩具店」さんです。

どうです、この謙虚にして堂々とした佇まい。決して新しくはないのですがいい味わいが出ています。


横板張りの外壁、広い歩道、屋上の手すり、雨除けのひさしなどを見れば参考にしてるのは明らかですね。初代の担当さんと一緒に写真を撮りに行ったのを、つい昨日のことのように……いやすっかり忘れていましたが、これを書いてて思い出しました(笑)。

当時、麻布十番商店街の外れに住んでいたのですが、この街は新しいお店と昔からのお店が混在している不思議な街で、麻布という土地柄のせいか古くからのお店も潰れずに頑張っています。そして古くからのお店が不思議とダサく見えないのです。それは偶然でもなんでもなくて、麻布十番商店街が街を上げてイメージアップと商店街振興に力を入れているからだと思います。

このお店の屋上からゲンさんたちが雪を降らせたら…なんだかワクワクしませんか。この建物を見上げて小さな屋上の手すりを見たときに、このエピソードを思い付きました。だから実際に現地を訪れるのは私にとってとても重要なことなのです。この話の結末は、ぜひ本編でお確かめください。 <続く>





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