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『解体屋ゲン』 #59 小さな小さな障害(二)

せっかく手にいれた爆破解体のチャンスをあっさり手放すゲン。そのきっかけになったのは小さな赤ちゃんを1日預かったことでした(ネタバレ)。実を言うとこの時はまだ子どもがいません。この話、どこかに取材したのかな?今読み返すと割合よく書けている気がします。


ツイッターだったかな、誰かが「この頃のゲンさんは口を開けばVコードって言ってる(大意)」みたいことをつぶやいてくれてて苦笑しましたが、確かにその通りで、Vコード爆薬という必殺技を覚えてしまうと、ついつい大きな現場はそれで〆たくなってしまいます。

例えばウルトラマンならスペシウム光線でやっつける!あとはそこに至るまでの過程をどうするかという話な訳で…他にも怪獣を退治する方法はあるでしょうが(例えば宇宙空間に放り出す)、最後の最後にスペシウム光線が出ないと視聴者はすっきりしなくないですか?

これを逆から見ると、作り手側としては「せっかく爆破解体ができる大きな現場なのに、Vコードを使わないと読者の期待に答えられないのではないか」と忖度してしまいます。

これがふとした拍子に、
期待に答えられない → アンケートの数字が取れない → 打ち切り
みたいな思考の負のデフレスパイラルが起きて、ますます他の手を使うことが怖くなります。でも、読者というのはワガママです。毎回ワンパターンの必殺技ではすぐに飽きられてしまうでしょう。
それくらい必殺技というのは(すごければすごいほど)両刃の剣なのです。

今回、ゲンたちはVコードを使わないことを決断します。工期が遅れるのでペナルティが加算され、下手すれば倒産です。

戦う前から負けが見えるのは辛いですよね

鉄骨だけの現場って、実際に目の当たりにするとすごく違和感があるんです。それは自然界にない直線や無機物がむき出しで出現しているからだと思います。

この描き文字、荒涼感がすごくないですか?

実を言うとこういう荒涼感で引く(終わる)のも作者としては不安です。決して読後感がよくないですし、ハラハラドキドキでもなく、展望が見えないままでの引きは、書き手側も辛い。でも、敢えてそういう形にもトライしないと漫画が類型的な幾つかのパターンに収まっていってしまうのです。

先の見えないゲンたち(と作者)に未来はあるのか。この先は本編でお確かめください。 <続く>








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