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『解体屋ゲン』 #55 職人の資格(後編)

ロクさんを主人公にした後編。火事に遭遇したロクとゲンたちはどうするのか。事態は思わぬ方向に動きます。

(リンク先で無料で読めます)

前編はこちら


無事に住民を助け出したゲンたち

しかしロクは大事な大工道具を失ってしまう

ここから先の展開は本文をお読みいただければ、と思います。ちなみにこの話は私も石井さんもお気に入りの一つです。これを書き上げた時は「これはイケる!」という手応えがあったのですが、逆にこんな話そう何度も書けないな、と不安になったのを覚えています。失意のロクさんはどうなるのか、ここから先は本編でご確認ください。 <続く>




ここから先は余談です。今回はちょっと長いかも。

週刊連載を続ける秘訣というか、長期連載に必要な資質とは何か、みたいなことをいつか書いておきたいな…と思っていたのですが、それはズバリ「鈍感力」だと思っています。

週7日のうち、1日休み、1日取材とすると5日で1本のシナリオを上げる。これが私に課せられたミッションです。本当はもっと見直したり書き直したりしたい時があっても、それをやり始めるとどんどん自分の首を締めることになり、次のシナリオの時間に食い込んでしまいます。

その上、5日間を丸々執筆に充てられるかというとそんな訳にもゆかず、世の中のニュースや建築業界のニュースも知らなくてはならず、お話づくりが枯れないように読書や映画を観るのも欠かせません。

もう少し先の話になりますが、我が家の場合は双子を授かり、子育てにも忙殺されることになります。こうなると1本当たりの執筆期間は実質3日もあればいいほうです。

基本的なプロット(あらすじ)を作り→登場人物を決め→ゲストの登場人物像を作り→台割(シーン毎の設計図のようなもの)を作り→シナリオに入る、というのが基本的な作業の進め方です。

ところが最初のプロットでつまづき話が出てこない、なんてこともザラで、パソコンの前に座り時間だけが刻々と過ぎてゆきます。線の細い人ならこの段階で脱落してしまうかも知れません。私も最初の頃は絶っっっっ対に無理!!と思ってました。例えば半年とかの書き溜め期間があって、それでなんとか1年くらい持たせられれば御の字かなー、くらいな気持ちで。

でも〆切のない書き溜めなんてそうそう出来ないもので、連載開始前にはなんとか4本くらいアップしたのかな…その貯金もあっと言う間に使い果たし、すぐに1週間遅れたら石井さんに追いつかれてしまうくらいギリギリの状況に追い込まれました。

こうなると必要なのは……そう「鈍感力」です。飯も喉を通らない…ではダメで、どんだけ〆切が迫ってようと、きちんとご飯を食べ、睡眠を取り、〆切をアップしたら休みを取ります。これが例えば映画や小説の〆切なら、最後は3日完徹で…もしくは10回書き直しをして…みたいなことが出来るのですが、週刊連載でそんなことをしたら翌週死んでしまいます。

頭の切り替えを早く、手を離れたシナリオのことは忘れ(引きずらず)、今書いているシナリオには全力で取り組む。それが終わったら翌週のために体調を整え、睡眠を取り……常にダッシュとジョギングの緩急をつけたマラソン、しかもゴールの見えないマラソンを続けるようなものです。結果16年経った今も走り続けている訳ですが…。

実はこの頃、別名義でもう1本原作を並行して書いていて、週2本ずつアップしていました。私に振る編集部も編集部だと思いますが、当時原作者というのは週2本くらいこなして当たり前、みたいなところがありました。それどころかネオン街を題材にした著名な原作者の方で週に10本(!)書いているという伝説のような話があり、「星野君は週2本でキリキリしてる」と言われる始末です。

失ったものも多いです。私は不器用で執筆速度がなかなか上げられなかったので、友人に連絡を取るのが難しくなってしまいました。せっかく会う約束や飲み会に誘ってもらっても直前でキャンセルしたり、そもそも参加表明できなかったり…。双子が出来てからはそれに拍車が掛かり、この時期よくメンタルやられなかったな、と自分でも感心します。

そんなこんなを乗り越えられたのはひとえに「鈍感力」のおかげ…と書いていて、これが私が生まれ持ったものなのか、週刊連載によって獲得した後天的な能力なのか、だんだん分からなくなってきました。ともあれ、ちょっとのことでは動じない強い心は、週刊連載を続ける上で必須の能力だと思います。



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