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『解体屋ゲン』 #57 神様のお告げ

2004年正月……この頃の話を読むと、今と時代がだいぶ異なるのが分かります。当時はサラ金の取り立てが厳しいとか銀行の貸し剥がしとか、分かりやすい話が多かった。2007年の貸金業法の改正(サラ金規制法)により、こういう話は目立たなくなりましたが、それでは私たちの暮らしは楽になったのでしょうか?


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実を言うと、最近の建設業の景気は悪くないです。皮肉なものですが東日本大震災後の復興需要とオリンピック関連の公共事業、それにともなう首都圏の住宅人気により建設業は比較的潤い、むしろ人手不足で頭を悩ませています。この景気がいつまでも続くのか、オリンピック後はどうなるのかは誰にも分かりませんが…。

その一方、庶民の暮らしは楽になったでしょうか。現実は真綿で首を締められるように、目立たない形でじわじわと苦しくなってきたと思います。
それは例えば
国民年金・厚生年金保険料の値上げ
電気、水道、ガス料金の値上げ
医療費、介護費用の値上げ
ガソリン、たばこ、酒等の値上げ
消費税アップ
ボーナスダウン
残業代ダウン
みたいに。それも一斉にではなく、毎年どこかがほんの少しずつ上がってゆくので漫画にはしづらいです。給料の額面は上がっているのに、いつまでたっても生活は楽にならず、貯金はできない、みたいな家庭が多いのではないでしょうか。

あれ、またしても最初から脱線です。今回の話は、銀行の貸し剥がしにあった男性がゲンの元に駆け込んでなんとかしてもらう話です。

冒頭の一コマです。分かりやすいですね(笑)。この人は結局、ゲンの爆破解体によって救われるのですが(ものすごく大雑把な説明)、ただこの人は運がよかっただけなのでしょうか。

それは違います。この人はゲンの元に辿り着くまでに精一杯の努力をした。だからこそゲンたちに辿り着けた。

実を言うと今回の話は、次回から始まる大きな話の枕なのです。でもいま読み返すと、ジタバタとあがく中年男の姿を描きたかったのだと分かります。

ああそう、私は格好いいヒーローモノを描きたい訳ではないのです。最後の最後までジタバタとみっともなくあえぐ市井の人たちの姿を描きたい。何故なら、そうした人たちの姿こそが本当に格好よいと思うからです。 <続く>




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