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チェルフィッチュの〈映像演劇〉『風景、世界、アクシデント、全てこの部屋の外側の出来事』

穂の国とよはし芸術劇場アートスペース(愛知県豊橋市)にて、チェルフィッチュの「映像演劇」が上映されています。11:00〜19:00(最終日は17時まで)、当日券1,000円。当日のみ再入場可。チケットは会場内のチケットカウンターにて直接購入のみです。前売りはぴあとセブンイレブンでも買えたんですね。知ったのが始まってからだったので買えず残念。購入にはクレカも使用可能。

そもそもチェルフィッチュってなんぞや?これは岡田利規さんが主宰されている演劇カンパニーです。が、一般的に想像される「演劇」の枠には全くおさまらないです。私が直に作品を見たのは昨年2月に金沢21世紀美術館で行われた『消しゴム森』。滞在可能時間が1時間程度だったので全体を見られず悔しい思い出。初めて触れるチェルフィッチュの世界は正直難解で、できれば丸一日その場にいたかった。普通演劇は観客と演者の世界が舞台の上と下でくっきり分かれている、けど、消しゴム森は自分自身がその世界に紛れ込んだかのような。自分もその世界のひとつのような、そんな感覚を味わえます。同じ空間のほんとに目の前を役者が通り過ぎていく、あれはいつかもう一度経験したい…!

そして今回、地元愛知県でチェルフィッチュ。これは行かねばと朝から名鉄特急に乗って豊橋へ。実にあいちトリエンナーレ2016振りの豊橋往訪。

会場の穂の国とよはし芸術劇場は駅から3分程度。直結の通路があるので道にも迷いません。ここもあいトリの会場で使われていたので懐かしさひとしお。

作品はループ上映されているとのことで、早速チケットを買って会場へ。入り口で検温、消毒に加えてヘッドホン用のカバーを渡されます。使用後は破棄してくださいと。感染対策徹底。

廊下を抜けてアートスペースの中へ。薄暗い空間の中に、四つの作品がそれぞれ間隔を空けて佇んでいます。大きな白いスクリーン、風に揺れるカーテン、小さな丸いテーブル、会場の外が見える窓と並ぶ扉のような大きさのスクリーン。

演者は2人だけ。派手な背景もセットもありません。映像の背景は白一色。物語性というよりは、観る人に思考を促す作品です。

薄暗い空間の中で白く浮かぶスクリーンを見ていると、演者から発せられる言葉が耳から脳へ、体全体へ染み込むような感覚が。

スクリーンだと分かっていても、演者がそこから現れるような気がします。特に揺れるカーテンからは、開いた隙間から本当に人間が出てくるんじゃないかと何度かドキッとさせられました。きっと細部に渡って計算された上映方法なんだろうなぁ、と。

この世界中で、それこそ日本の中だけでも無数の問題が起きているけど、それらを意識したり考えたりしなくても日々の生活はゆるく過ぎていってしまう。そのまま「部屋の外側」の出来事としてやり過ごすのか、それとも外側へ手を伸ばすのか。あなたはどうする?と外側から問いかけられた気がした。それは心の中に小さく小さく灯りをともす。この灯りを増やしていけば、遠い遠い向こう側でもいつかはっきり照らすことができるんじゃないか。

この灯りの元は、人それぞれ違う。私は読書やアート鑑賞、人と話すことで灯りが増えていく。思考を止めずに世界と関わり続けたい。そんなことを考えさせられた作品でした。

上映期間短いですが、行ける方は是非。ちなみに劇場内で配布されている「プラットニュースVOL.48」に今回の作品のインタビューが掲載されていました。こちらも併せて是非。

https://www.toyohashi-at.jp/event/performance.php?id=965


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