シェア
高橋琴麻呂
2020年5月23日 13:33
※今回は2首1組です。我が里に大雪降れり大原の古にし里は降らまくは後(「万葉集」巻②・103)天武天皇『純になる』僕が住む里に景色を白一色に染め抜くほどに雪が降り積もったよ君が住む古びた大原の里にこの雪が降るのはもっと後になるからだろうね雲の間から不意に漏れた光の雫を一滴心に落とし込んでみると一瞬にして胸の汚れが漂白されて純になるからこの気
2020年5月21日 11:24
春の日の 霞める時に 墨吉の 岸に出で居て釣舟の とをらふ見れば 古の 事そ思ほゆる水江の 浦島子が 鰹釣り 鯛釣り誇り 七日まで 家にも来ずて 海界を 過ぎて漕ぎ行くに海神の 神の娘子に たまさかに い漕ぎ向かひ相とぶらひ 言成りしかば かき結び 常世に至り海神の 神の宮の 内のへの 妙なる殿に携はり 二人入り居て 老いもせず 死にもせずして永き世に ありけるものを 世間の 愚人
2020年5月19日 19:06
待つらむと至らば妹が嬉しみと笑まむ姿を行きてはや見む(「万葉集」巻⑫・2526)『その姿を見るために』“待っているからね”と君から届いた便り…それだけで心は加速度をつけて走り出す待っている所に着けば君は僕の顔を見て嬉しさのあまり微笑んでくれるだろうその姿を見るために早く、少しでも早く君のもとに行こうその姿を見るために僕は今、この命を生きている#
2020年5月18日 21:37
安積香山影さえ見ゆる山の井の浅き心を我が思はなくに(「万葉集」巻⑯・3807) 『深い想い』 美しく雄大な安積香山の姿を映すのは清らかな水を湛える浅い山の泉 清らかで美しいけれど私は、この泉のような浅い心であなたの事を想っているわけではありません そんな、浅はかな気持ちであなたを恋い慕いはじめたわけではありません だって、あなたは私にとってもっ
2020年5月18日 21:34
難波津に咲くやこの花冬ごもり今は春べと咲くやこ(王仁) 『梅の花が咲く頃に』 たくさんの船が行き交う難波の海の その辺り 見あげた先に咲いているのは真白き梅の花 長い冬を越え暖かい風が吹いたら今こそ春が来たと梅の花が咲いた 光を湛えて煌めく海を風を受けて船が行く誰の夢を積んでいるのかゆっくり、ゆったり進んでゆく 梅の花が咲く頃に私の心にも夢
2020年5月18日 18:13
酒坏に梅の花浮かべ思ふどち飲みての後は散りぬともよし(「万葉集」巻⑧・1656)大伴坂上郎女 『風流』 青い空と梅の木の下で気の合う者同士が集まって楽しくお酒を飲む宴 濁り酒の上に梅の花をひとひら浮かべほんの少し風流を気取る いつもよりおしゃれな飲み方がいつもの風景をより美しく変えてゆく ここに集う仲間とお酒と共に風流を分け合った後は梅の花
2020年5月18日 18:06
我が園に梅の花散る ひさかたの天より雪の流れ来るかも(「万葉集」巻⑤・822)大伴旅人 『季節の絵筆』 冬晴れの空の下この庭にひとりたたずんだ おりからの風… 梅の花びらたちが一斉に散ってゆく まるで、それは天空から風に乗り流れ来る沫雪のよう… 冬と春の境めあたりで神様が季節の絵筆を使って私の心に雪に似た梅の花で白い川を描いていった
2020年5月17日 17:39
膝に伏す玉の小琴の事なくはいたくここだく我恋ひめやも(「万葉集」巻⑦・1328)『好きになればなるほどに』綺麗で小さな琴のように貴方の膝に身を委ね愛の言葉を受けたのはそよかな風吹く夜でした…あの日の事が無かったら私は今でも こんなに強く貴方のことを心から恋しくなんて思わないこんなにまでも愛されて大事にされると温もりがいついつまでも消えないよ好きになれば
2020年5月16日 21:30
恋は今は あらじと我れは 思へるを いづくの恋ぞ つかみかかれる(「万葉集」巻④・695)広河女王『恋なんて』私は今、恋なんてしていない…そう思っていたのにどこからか不意にやってきた恋がつかみかかってきた心がつかまれるまでの時間はほんの一瞬で、あの人に出会った時に恋は光の姿で私の中に入り込んできた恋が私の中に入り込んでくるとまた、あの人の事を想
2020年5月16日 21:26
家に有る櫃に鍵さし 収めてし 恋の奴が つかみかかりて(「万葉集」巻⑯・3816) 穂積皇子『いつの間にか』家にある大きな箱に鍵をかけてもう出られないように入れておいた恋の奴どうやって抜け出したのかいつの間にか私の心に つかみかかってきた抑えつけても 抑えつけてもいつの間にか顔を出し私の心に つかみかかってくる恋の奴こいつが現れるとまた彼女の事を
2020年5月15日 00:54
うつそみの人なる我や明日よりは二上山を弟と我が見む(「万葉集」巻②・165)大伯皇女(おほくのひめみこ)『黄昏の二上山』遠い世界へと旅立ちこの世では姿形が見えなくなった愛しい弟よ私は何を見て そなたを偲ぼうかこのうつつの世界でまだ姿形がある私の視線は今君が祀られている黄昏の二上山へ明日からはあの二上山の姿をそなたと思って日々を過ごそう紫と橙が溶け
2020年5月14日 00:08
待つらむと至らば妹が嬉しみと笑まむ姿を行きて早見む《巻⑪・2526》『君に逢える』夕方の太陽がこの心を染める頃なんとなく落ち着かなくて何度も腕の時計を眺める今日は久しぶりに君に逢える待ち合わせの場所に付いたらそこにいる君は“嬉しい”と微笑んでくれるだろうかこんなふうに僕の願いだけを描いたら君の事を また淋しくさせてしまうかなこれからは先読みの
2020年5月14日 00:03
夕さらば君に逢はむと思へこそ日の暮るらくも嬉しくありけれ《巻⑫・2922》『あなたに逢える』夕方の太陽が摩天楼を染める頃嬉しくて嬉しくて落ち付かなくなって何度も時計を見てしまうあなたに逢える時が少しずつ少しずつ近づいてきている…逢えない日々が続いて自分を欺きながら歩いてきたけど今日からは それもやめようあふれる想いも高鳴る鼓動も抑えずに自分の気
2020年5月13日 00:55
恋ひ恋ひて 逢へる時だに うるはしき 言尽くしてよ 長くと思はば(「万葉集」巻④・661 大伴坂上郎女)『恋ひ恋ひて』ずっと、ずっとあなたに恋して 恋し続けて迎えた今日だものこうして逢えた時くらい愛の言葉をたくさん降らせてほしい今夜はあなたなりの言葉で愛を尽くしてよふたりのこの関係を長く続けようと思うなら…今までいくつもの恋の扉をくぐり抜けてき