万葉集翻案詩:『恋なんて』

恋は今は 
あらじと我れは 
思へるを 
いづくの恋ぞ 
つかみかかれる

(「万葉集」巻④・695)
広河女王


『恋なんて』

私は今、
恋なんてしていない…
そう思っていたのに
どこからか
不意にやってきた恋が
つかみかかってきた

心がつかまれるまでの時間は
ほんの一瞬で、
あの人に出会った時に
恋は光の姿で
私の中に入り込んできた

恋が私の中に入り込んでくると
また、
あの人の事を
想い続ける日々が始まって
一日のうちの多くの時間と
心のすべてが
あなた色に染まってしまう

恋なんて
していないはずだったのに…


【メモ】

この歌の作者の広河女王(ひろかわのおおきみ)は、穂積皇子の孫にあたる人です。
穂積皇子の歌と合わせてみると、手本にした部分もあるでしょうが、DNAを感じさせるような詠み口ですね。


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