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勉強になった記事(よそ様が書かれたもの)

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よそ様が書かれた勉強になった記事
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2020年1月の記事一覧

【熱力学3】自由エネルギー減少則【不可逆過程】

前回,「状態の変化に必要な仕事は,操作の仕方によって異なる」と言いました.直感的には,素早く動かす方が無駄が多くなり,必要な仕事が多くなるということで納得がいきます.しかし,ちょっと立ち止まって,ここでいう「無駄」とはなんのことか論理的に考えてみましょう. 理想仕事源まず,議論の出発点として,仕事をする系を用意しましょう.これを仕事源と呼びます. ここで,どんな操作の仕方をしても,その系のする仕事は一定となるような仕事源を用意したとましょう.このように振る舞う仕事源のこと

「大数の法則」をわかりやすく(その2)

今回は大数の法則を考える上で必要な”近づき方”を見てみましょう。 この記事の対象としているのは次のような方々です。 〇大数の法則自体は知っていて、数学的背景も知ってみたい方 〇機械学習やデータサイエンスを使う方で数学への興味が強い方 〇シンプルに興味がある方 この記事以降では純粋数学初心者の方でも可能な限りきちんと数学的に理解していただけるよう努力しています。 ですので、純粋数学とはこういうものというイメージが無い方には最初は難しく感じるかもしれません。 はっきりい

「確率変数」とはなにかをわかりやすく

前回、大数の法則の記事を分かりやすく説明しようという記事を書きました。 そして、その記事の続きとしてもう少し数学的な内容に踏み込んだ大数の法則を解説したいと思ったのですが―― そのまえにこの大切なテーマに関して説明しておかないと、とてもじゃないけど数学的に正確な議論はできないと感じ、この記事は別に独立させることにしました。 ということで、今回のテーマは確率変数です。 確率変数とはわかりそうでわからないこの言葉。 高校生のときには「ある試行に対してその値をとる確率が定

「大数の法則」をわかりやすく(その1)

機械学習やデータサイエンスの応用でも時々顔を出す数学。これをなるべく正確に、でも分かりやすく説明するのがこの記事の目的です。 今回は統計を使うときには避けられない大定理、大数の法則を分かりやすく説明してみたいと思います。 というのも、この大数の法則、なんとなく分かった気にはなれますが、ちゃんと理解しようとして数学の本を開いてみるとなんだか3つくらいあるんですよね。 大数の弱法則とか大数の強法則とか、はたまた確率収束だとかほとんど確実に収束だとか―― 雰囲気をつかむこと

【熱力学2】自由エネルギー【熱力学におけるポテンシャル】

温度と外部変数だけではわからないこと温度と外部変数で状態を指定したとします.これを次のように書きましょう. これで私たちが手にしたのは,ただの「白地図」のようなものです.「地形」の情報は何もわかりません.どういうことか例をふたつ挙げましょう. ある温度一定の環境のもとに一種類の気体を用意し,密度の高い系と,密度の低い系を用意したとしましょう.それらをくっつけて,仕切りに穴をあけると,図1のように,密度の均一な状態に「混ざって」ゆきます.新しい平衡状態に達した後に穴をふさい

【熱力学1】状態の指定,温度とは何か【エネルギーと温度】

物理学では,私たちが考えようとする対象をこの世界から適宜切り取って,「系」と呼びます.物理学の仕事は大まかに言って,「系の状態を表すこと」,それから「系の状態の時間変化を記述すること」です.熱力学は前者の,状態を表すための学問です.そこでまず,「系の状態を表すのに必要な変数は何か」を考えることになります.今回は,その際に,温度という概念を導入します. 着目系と環境外部と何もやり取りをしない系を「孤立している」といいます.孤立した系を考えれば,エネルギーは保存しますから,孤立

序: 熱力学の目標

冷たいビールのほうが嬉しいものですが,冷たいビールも早く飲まないとぬるくなりますね.熱いコーヒーも部屋に放っておけばぬるくなっています.そしてぬるくなったコーヒーやビールは,もうもとに戻せません.例えばガスコンロや冷蔵庫を使えば,ガス代や電気代がかかりますから,何の代償もなく元に戻っているわけではありません.だから熱いコーヒーや冷たいビールのほうが,ぬるいのよりもありがたい.しかしそれはどれくらいありがたいのでしょうか? 緩和ビールは冷たいままで,コーヒーは熱いままでいるこ

宇宙について

 宇宙が膨張していることは、夜空の星を観測することでわかります。遠い星ほど、その距離に比例して、地球から遠ざかるスピードが大きいのです。その比例定数は「ハッブル定数」と呼ばれます。「星の遠ざかるスピード(速さ)」=「ハッブル定数」×「星までの距離」です。  「遠ざかるスピード」は、光のドップラー効果で正確に測定できます。救急車が遠ざかるときに音の波長が伸びるため、振動数が小さくなり、低い音に聞こえるように、遠ざかる星の光も波長が伸びて、振動数が小さくなるのがドップラー効果です

宿題は必要か?

ゆとり教育の反動なのか、小学生には毎日たくさんの宿題が課されているようです。親御さんからの質問されることもあります。 「何でそんな簡単なことも分からないの!と思わずイライラして、叱ってしまうんです。」 「叱るとすねてますますダラダラするんです。」 「塾に入れたほうがいいのかと思う。先生の子供の頃はどうでしたか?」 などなどたくさんの質問を受けます。親からしたら子供の教育はすごく大事ですよね。 個人的な考えは、サンプル数「1」ですから、私の考えを書いても仕方ありません

シミュレーション仮説の現実味について

世の中にシミュレーション仮説というものがある。今の宇宙は何らかの上位存在によるシミュレーションであるという話である。確かに宇宙はかなり論理的に機能している様に見えるし、プランク時間を1クロックとして処理されていると言われると、あまりにシミュレーションっぽくて反証の余地が無い。これも悪魔の証明の一種なのだろうか。 しかしこのシミュレーション仮説、次がいけない。我々の世界がシミュレーションであるという根拠?が、そういう存在がいたとして、その存在もさらにその上の存在によるシミュレ

地平線を超える:一般相対論/ブラックホール

前回はブラックホールを作った.ブラックホールとは,Einstein方程式の解であり,事象の地平線を持った時空の構造であった. ブラックホールの一つ,Schwarzschild(シュワルツシュルト)計量は このような線素で表されるのだった.Schwarzschild計量の事象の地平線はr=r_s で決まる部分にあるのだった.r_s は中にある質量で決まる空間的な半径で,これより内側の情報を外部に持ち出すことができないものだった. 地平線を実感する情報を持ち出すと言うのはど

地平線:一般相対論/ブラックホール

今回は"ブラックホール"の話.ブラックホールとは何を持ってそう言うのか,例えばどんなものかと言う話をしよう. ブラックホールとはブラックホールとは光すら出られないの重力的な物体である.もっと物理の言葉で言えば(自分の理解では)事象の地平線をもつ時空の構造がブラックホールである. よくイメージするのは宇宙にある,とてつもなく重い天体だろうが,実はブラックホールには重さの制限はない.ものすごく軽い数グラムのブラックホールも存在は否定されていない(が,観測はされていない).重要