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良い出会いになりますように。


先日、一度は行ってみたかった文学フリマに足を運んだ。

素敵なものに溢れて、何度も目は止まるけど、
足が止まったのはたったの1回だけたった。

めっちゃ買ったるで!と意気込んで、両替したばかりの大量の千円札を財布にねじ込んでいたにも関わらず、なんと衝撃的なことに私はたったの2冊しか本を買わなかった。自分でも意外だった。

しかし、その中の一冊があまりにも最高で、
「あぁ、今日私はこの本に出会う為にここに来たんだな」と感じた。
すごく素敵な体験だったので、ちゃんと書いておこうと思う。


***

会場がやたらと暑く、鎧の如く着込んだアウターのせいで到着早々帰りたくなってしまった私だったが、
今の自分の気持ちと全く同じ色をした青い表紙と目が合い、なんとなく見本誌を手に取った。

最近流行りの突飛なタイトルでもなければ、玄人感のあるイラスト表紙でもない。でもそこになぜかすごく惹かれた。

「働くための靴」と書かれたその本は、
見本誌の1ページ目を読んだ瞬間、「今日買うべきはコレだ!」とすぐにわかった。
こだまさんの「ここは、おしまいの地」を試し読みした時と同じくらい、「これは圧倒的に文章が上手い人の本だ!!」と感じたからだ。


これだけ買って帰ろ、と心に決め、人混みをかき分けてコーナーへ向かうと、女の人が一人で座っていた。
本が見えなかったので、まだ売ってますか?と尋ねると、ありますよ、と一冊手渡してくれた。

コミュ症なので、本一冊買うにも凄まじまい勇気が必要だった。

そして、
文学フリマで本を買うことは、コミケで薄いエロ本買うのとは全然違う勇気が必要なのだ、とこの瞬間悟った。

ブヒブヒ言いながらBL本を買う時は、もれなく周りも全員ブヒブヒしてるし、売ってる本人も同じ性癖なことが明白なので、腐女子コミュニティのあの「漠然とした安心感」に包まれて安心しきっていたのだ、と瞬時に思い知らされた。自分がコミュ症なことをすっかり忘れて生きていたのだ。


そんなこんなで本を買おうとすると、お姉さんが「この本が、よい出会いとなりますように」と言って手渡してくれた。

そんなおしゃれな言い方をされたことがなかったので、思わず泣きそうになった。
なんだかとても嬉しかったのだ。

人から手売りで物を買うって、なんてすごい行為なんだと改めて思った。


***


家に帰ってから即、本を読んだ。

内容は、働いて感じたことのエッセイ。
普通に生きて、普通に働いていて、漠然と不安を抱えたり、時々ふと思い出す出来事ががあって切なくなったり、自分となんら変わらない「生活」の中のお話だった。

共感することがめちゃくちゃたくさんあって、
東京に生きてる女性として、おそらく同世代くらいと思わしき方が、こうして不安に思ったりするんだな、と思うと、ものすごく安心した。
読みながら、すごく救われるなぁと思っていた。


「毎日こうしてはたらいていれば、いつか何かを掴めるんだろうか?」
というフレーズがあって、思わず赤線を引きたい気分になった。

借金を払い終わった時「ATMの前で叫び出しそうだった」という所も、
「知ってる中国語を全部使うべきだった」という所も、
Kindleだったらこの本は赤線引きまくって、今頃真っ赤になってるだろう。


生きていく中での
「普通」
は人それぞれ違うけど、

人と出会って、別れて、働いて、
その度に新しい靴を履いて、またすり減らして。

生きていくことの難しさ、
暮らしていく中で感じることを
自分の言葉で表現できるって、なんてすごいことだろうと思った。

300円でこれは安すぎる。
ありがたすぎると思った。


こんなふうに私の日常も、
自分の言葉で表現出来たら
きっと気持ちいいだろうなぁ。


ふと思い出したけど、
小学生の頃の先生が、
「日記はこうやって書くもの」と言って、私の書いた文章をいつも赤ペンでぎっしりと修正してくれていた。
おかげで私は「自分の感じたことを自分の言葉で書く」ことが、今も下手な気がする。

文章を書くのは好きだけど、
ただただ書きたいことを書いていると、今でも脳内で先生の赤ペンが降りかかってきて、もっと漢字使いなさいとか、擬音を無くしなさいとか、日記は毎日ハッピーエンドで終わらせなさいとか、先生の思う「あなたはこうあるべき」がビュンビュンと飛び交う。

そういうのを無しにして、
日常の感じたこととか思ったこととか自由に書き出していけたら、
きっともっと毎日を慈しめるのかもしれないし、自分のことも、好きになれるのかもしれないよね。

共感すると救われるなぁと思うから、
つい人に共感してほしくて文章を書きがちなんだけど、ありのままを文字にできたなら、
それこそハッピーエンドなんだろうな。


少なくとも、私はこの本に出会えて
すごく共感出来たし、友達と不安を共有出来たみたいで、ホクホクしたあったかい気持ちでいっぱいになりました。


文学フリマに行って、ほんとによかった。

和泉りょうさん、私に素敵な本を売ってくださってありがとうございました。
もっと読みたいのでブログ追わせてください。


そして、恐れ多くも、いつか文学フリマ出てみたいなぁと思った一日でした。

(ちなみに買ったもう一冊は、チベットのヤバイ仏像の写真集でした。ミャンマーチベットネパールあたりは、本当いつか行ってみたいな…、あらゆる神がギラついててセンスがヤバイ。)


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