見出し画像

ショートショート 「変人隔離法」

世の中には一定数の変人が存在する。
尤もこれは仕方のないことだし、奴らの存在自体を否定するつもりは毛頭ない。
でも迷惑を被るのはやっぱりゴメンだ。
ボクの名前は鈴木太郎。
どこにでもいるようなごくフツーの中学2年生だ。
ボクはこれまで幾度となく変人どもから嫌がらせを受けており、その都度勇気を出して奴らの行動を咎めたり、根気強く奴らを諭したりして来た。
でも何ともならなかった。
変人どもはボクの言うことをちっとも理解してくれなかったし、ボクも奴らの話を理解することが出来なかったのだ。
奴らと話をする度に、ボクはあたかも宇宙人を相手にコミュニケーションを図っているかのような錯覚に陥った。
そんな経験を重ねた末、ボクの心は一つの諦念に達した。
世の中には決して分かり合えないタイプの人間がいるということを悟ったのだ。
先月14歳になったばかりのボクが、どうしてこんな虚無感を抱かなければならないのだろう。
世の中一体どうなっちゃってんだよ?
あ〜あ、いっそ変人を一処に集めて隔離する法律を作ればいいのに。
そうだ。
そうすればいいのだ。
そうでもしない限り、フツーの人が安心して暮らせる社会を築くことなんて出来っこない。
それにきっと変人どもだって変人同士のほうがストレスフリーな日常生活を送ることが出来るんじゃないだろうか。
うんうん、そうに違いない。
ボクはクラスメイトの政治まさはるに早速このアイデアを伝えた。

「なるほど。お前にしちゃあいいことを思い付いたな」
「だろ? 変人隔離法っていうんだ」
「変人隔離法か。今晩パパに進言してみるよ」
「マジで?」

なにを隠そう、政治まさはるの父親は現職の総理大臣なのだ。

「ああ。必ず伝えておく。俺だって変人には関わりたくないからな。きっと実現すると思うぜ、変人隔離法」
「おー。頼もしいなぁ」
「ところで鈴木…」
「なんだ?」
「元気でな」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?