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歩かなきゃぁ、始まらねーよな

どう?
「パ・タ・カ・ラ」
やってる?

口腔体操、30分くらい持ち時間あるんだけど、
時間持たないから、早口ことばしたりストレッチしたり、顔面体操したりしてる。たまにギター持ち出すこともある。

ああ、引き出しの多い介護職員になりたいよ。

今日の話ってのはね、

出来ていたことが、
だんだんと出来なくなっていく利用者さんがいてね。

半年前くらいかな、入院したのね。
期間にしてひと月くらいの入院だったけど、その後デイサービスに復帰するまでに3ヶ月くらいかかって。かなり体力が落ちてしまって。

入院する前はさ、杖をつけば一人で歩いても危なくなかったんだけど。
退院後は杖だけだとちょっと危なっかしくて、席を立ったときは必ず見守りをするようにしてるのよ。
杖歩行がしんどそうでさ、デイサービスではシルバーカーを使ってもらってるんだけど。シルバーカーは上半身を両手で支えることができるから、重心が安定するのね。車輪があって移動もしやすいし。

歩行がそんな感じで、さらに手足の痺れも出るようになってしまって。
入院前は痺れなんてなかったのよ。
それがね、その利用者さん手先の器用な方でさ、細かい工作することが唯一の楽しみだったわけよ。
「仕事をしなくなってから、楽しみがなくなったんだよ。でもね、細かいもの作ってると楽しくてね。ずっとモノ作っていけたらいいなと思って」
入院前、入浴介助の時にそんな話を聞いてね。
本人が言うように、折り紙だったりとか切り絵だったりとか、ほんとに細かく丁寧に作る人でね。デイサービスに来てる時間のほとんどを工作に使っていたし、なんなら持ち帰ってもやってたみたいなのよ。

けれどね、手の痺れがひどくなってしまって最近は、
「痺れてできんから、もういいよ」と言って、椅子に座って眠っている時間が多くなってきてしまってさ。
回復の余地があるかといえば、あまり期待できないのも事実でさ。元気な時は午後のレクリエーションにも参加してたんだけど、今は、
「できないから、見てるよ」
といって、参加しなくなってしまって。

人ってさ、生きがいがないと、
生きていけないだなと思い知ったよ。

なんでもいいんだろうね。なんでも。
絵を描く。俳句を作る。顔馴染みに会いに行く。孫に元気な顔を見せたい。何かひとつでいい。何かを残しておかないと。何かが残るようにしておかないと。

さて、どうしたものかと考えるわけ。

90歳近い高齢者に「あたらしい生きがいを見つけましょう!」なんて、釈迦に説法だと思うし。たとえ教科書にそう書いてあったとしても、自分よりも倍近く生きている人に対して軽々しくそんなことが言えるわけないでしょ。
もう、いっそのこと渋谷ギャルをデイサービスに放り込んで、
「この塗り絵とパズルヤバくなーい!アゲェー!(渋谷のギャル知らねぇ。)」とかなんとか、無理やりテンションを上げてもらうしかないのかもしれないね。なんやそれ。

ここは大きく勘違いしてだな。

「〇〇さん!またぼくに会いにきてくださいね!」と、会いに行けるアイドル商法をかましてハグでもしておこうか。剥がされるまで強く抱きしめようか。なんやそれ。

とにかく気になるので、あしたは散歩に連れ出して、
話を聞いてみることにするよ。

いずれにしても、
歩かなきゃぁ、始まらねーよな。

介護は大変。介護職はキツイ。そんなネガティブなイメージを覆したいと思っています。介護職は人間的成長ができるクリエイティブで素晴らしい仕事です。家族介護者の方も支援していけるように、この活動を応援してください!よろしくお願いいたします。