デイサービス職員がデイサービスの1日を紹介します
デイサービスを利用し始めてからはじめて、デイサービスのことを知る。
介護職員のぼくから言うのはなんだが、それでは遅い。
できれば事前にデイサービスについて、いや介護施設については知っておいた方がいいと思う。
「介護は急にやってくる」
いざ介護が必要になったとき、介護施設のことをあれこれ調べたり悠長に選んだりする時間はありません。これは介護職員として介護者・ご家族と接していている中で見てきた紛れもない事実です。
特別養護老人ホームや老人保健施設・グループホームなども一緒で、介護保険を使って介護施設を利用するまえに、
施設がどんなところか
どんなサービスを行っているか
軽くでも知っておいた方がいいと思ったので、書いておこうと思います。
ぼくの勤めているデイサービスは地域密着型通所介護といって、小規模なデイサービスです。利用者さんの定員は1日18名以下と決められています。
大型のデイサービス(1日の利用者さんの定員30名前後)に比べて、個別ケアが中心となります。
大規模・小規模の良し悪しやメリット・デメリットは、利用する本人によって意見が違うので、一概にどちらがいいというのはありません。くれぐれも。
紹介すると言っても、施設のことをあれこれ書くことは業務上の情報漏洩にあたるため、あくまで一般論として紹介していきます。
ちなみにぼくは、デイサービスは2ヶ所、老人保健施設で働いた経験があり、介護職員初任者研修・介護福祉士は来年受験・介護現場は3年の勤務経験があります。
【8時】利用者さんの送迎から始まる
さて、デイサービスの1日は送迎からはじまります。
8時から9時前にはご自宅にお迎えにあがります。
ということは、その時間までに利用者さんには支度をしておいてほしいということです。
ご自宅に迎えに行った際に準備ができていないことがあると「先に〇〇さんを迎えにいってからまた伺います」と臨機応変に対応するのですが、
毎回準備できていないとなると、デイサービス側から契約の調整などが入るケースがあります。
もちろん介護職員も支度のお手伝いをしますが、あまりにも時間がかかってしまうと他の利用者さんのお迎えの時間が決まっていたりすることもあって、できる範囲に限りがあります。
よくあるのが、朝に排便があって着替えに時間がかかってしまうなど。
着替えていただくことはありがたいのですが、職員としては時間通りに乗車してもらう方がありがたい場合があります。
【9時】デイサービスに到着
デイサービスでは提供時間が決まっていて、だいたいどこの施設も9時から17時前後・8時間提供になっています。
9時からサービスの提供が始まるということはつまり、9時までにはデイサービスに到着しておかなくてはいけないということなんです。
提供時間によって、介護報酬(介護事業所が国へ申請する請求書みたいなもの)が細かく設定されていることもあって、時間にはちょっとシビアになっています。
もちろん、安全にデイサービスまでご案内することが何よりも大事なので、時間には余裕を持ちたいということは、運転手がいちばん意識しているところです。もちろん事故があってはいけません。命を預かっているのですから。
警察に停められている送迎車を見かけることがありますが、
「気の毒やなぁ〜」と思ってしまいます。
玄関で待ち受けるスタッフ
デイサービスの玄関では待機している職員がお出迎えします。
利用者さんを送迎車から安全に降ろし、挨拶をしてデイサービスに迎え入れます。
この時点で、
顔色
元気があるかなどの体調
歩行状態
着てきた洋服
排泄があるか
を、ある程度目視で確認します。
体調が悪ければ、すぐに看護師に報告し、ベットに横になってもらうなどの対応を考えます。
高齢者は急に体調が変わるため、朝の体調確認はとても大事なんです。
排泄があればトイレへ案内します。そのまま室内へ案内してしまうと不快感のある状態で過ごすことになり、また衣類が汚れたりするので速やかに対応します。
9時に送迎車が一気に到着するので、朝はやっぱりバタバタしますね〜。転倒事故などにも注意しなくてはいけないですね。
お席にご案内
お出迎えが終わったら、利用者さんをひとりひとりフロアに案内します。
デイサービスではだいたい、みんなが集合するフロアがあります。
長テーブルに椅子が並んでいるような、会議室みたいなイメージでしょうか。馴染みの席が決まっていたり、馴染みの人がいたりと、だいたい席は決まっています。
配席などは介護職員が事前に決めていることが多いです。
というのは、利用者さん同士の相性があって、仲がいい・仲が悪いが少なからずあるからです。
介護職員は気を使うのは、利用者さん同士の揉め事です。
高齢者になると価値観がしっかり決まっていることも多く、自分とは違うやり方や過ごし方に口を出してしまう方がちょいちょいいるのです。
「あの人文句ばっかり言っている」なんて、文句言っている利用者さんがいたり。
最悪、殴り合い。そうなるとデイサービスの利用ができなくなったり、本人が拒否したりすることがあるので、かなり気を使います。
デイサービスに来られなくなって困るのは、利用さん本人もそうですが、送り出すご家族も大変になってしまうのです。
だから配席には十分注意します。
「あの人がいるから行きたくない」「あの人と同じ曜日には利用したくない」なんてことは、介護施設ではあるあるなのですが、できれば避けたいです。
水分補給とバイタルチェック
利用者さんが席に着いたら、お茶を出していきます。
高齢者は喉の渇きを感じにくく、またトイレに行くことをめんどくさがるので、水分が不足しがちです。
とくに夏場は脱水症状の可能性が高くなるので、まずは水分を摂ってもらいます。
次はバイタルチェックです。
体温
血圧
心拍数
呼吸数(だいたい目視)
血圧計で測って、数値を記録していきます。
この時点で、発熱や血圧に異常がある場合は、看護師に相談もしくはご家族に連絡などの対応をします。
バイタルが正常であれば問題なく入浴できますが、異常がある場合、入浴なしやシャワー浴などの判断をします。
全ての利用者さんのバイタルチェックを行います。
朝の挨拶をしてやっと始まるデイサービス
そんなこんなで忙しくしていると、9時30分ごろになっていて、
全員落ち着いたところで朝の挨拶が始まります。
「みなさん!おはようございます!」
日付を確認したり、今日の予定を伝えたり、お昼ご飯の紹介やちょっとした小話なんかをして利用者さんを和ませていきます。
【10時】体操してしっかり体を動かす
ここからやっとデイサービスの1日が始まるといったところでしょうか。
音楽に合わせての体操だったり立ち上がり体操だったり、施設によってさまざまです。
よくある体操が、
ラジオ体操
NHKの健康体操
「北国の春」に合わせた体操
「三百六十五歩のマーチ」に合わせた体操
これらが定番でしょうか。
デイサービスよっては手すりを使った体操や器具を使った体操などをしている施設もあるかもしれません。
下肢筋力の維持を目的とした体操が多いようです。
入浴開始
午前中はなんと言っても「入浴」がメインになります。
だいたいどこのデイサービスも、午前中は入浴がメインになっています。
デイサービスを利用するご本人もご家族の要望も「デイサービスには入浴をしに来ている」というニーズがいちばんにあります。
自宅の風呂は入りにくい。ひとりで入ると転倒が怖い。介助するご家族も高齢で入浴介助は負担が大きいなどの理由で、入浴介助はデイサービスの中でもとくに重要な業務のひとつです。
とくに認知症のある利用者さんの入浴介助は、介助に慣れた職員でもうまく案内できないこともあります。
入浴設備もデイサービスによってさまざまで、小規模施設では個浴が多く、大規模施設は銭湯みたいな形式で、一度に複数人が一緒に入ります。
もちろん、男性・女性は時間帯を分けて入ります。
入浴していない時の過ごし方
脳トレをしている施設が多いのではないかと思います。
計算・塗り絵・線繋ぎ・漢字クイズなどの、書店で売っているような脳トレや、手指リハビリのための工作など、こちらも施設によってさまざまです。
【11時30分】口腔体操してからお昼ごはん
お風呂へ入りに行っていると、午前中の時間はあっという間に過ぎていきます。
施設によっては利用者さんに、リハビリ目的でお昼ご飯の準備や洗濯物の取り込みなどを手伝っていただくこともあります。
そんなこんなで、時計の針が11時30分を回った頃、
口腔体操が始まります。
口腔体操とは、食事前に口周辺や舌・飲み込みのトレーンングをしておくことによって、唾液の分泌を促し、消化を助け・誤嚥を防ぐ目的で行われる口のトレーニングです。
介護現場だと「パ・タ・カ・ラ」という王道の口腔体操があります。
簡単なストレッチも交えながら、お昼ご飯まで体操をしていきます。
【12時】お昼ご飯
さぁやっと、お昼ごはんの時間です。
だいたいどこの施設も、12時から13時までの1時間は昼食の時間になっています。
お昼ご飯は予めメニューが決まっている施設が多いでしょう。
好き嫌い・アレルギー・食事形態(一口大・刻み・ペースト・ゼリー)など、その人に合わせたもので配膳されます。
糖尿病がある人や、透析のために水分制限がある人・飲み込む力が弱く誤嚥しやすい人・麻痺がある人など、利用者さんはさまざまおられますので、介護職員は緊張感を持って食事介助にあたります。
認知症のある方は、間違えておしぼりやティッシュを口にしてしまう「異食」があったりするので、注意して見守りを行います。
お薬は忘れずに
利用者さんによっては食前薬があったり食後薬があっりするので、看護師管理のもと服薬のサポートしていきます。
職員も交代で昼食休憩に入ります。
【13時】口腔ケアで口の中の食べ残しを綺麗に
食べ終わった人は、口腔ケアです。
簡単に言えば、うがいと歯磨きです。
口の中に食物残渣(しょくもつざんさ)、いわゆる食べ残しがあると雑菌が繁殖して抵抗力の弱った高齢者の方は、思わぬ病気になったりする可能性があります。
また、食べ残しが気管支に入ってしまうと誤嚥性肺炎になってしまうこともあり、最悪の場合は入院、そのまま復帰できずお亡くなりになるケースも珍しくありません。
入れ歯の間に詰まった食べ残しにも注意が必要です。
自分の歯でも虫歯になって歯を抜くことになれば、おいしくご飯を食べられなくなってしまいます。そうなると大きな生きがいをひとつ失ってしまうことになります。
介護では口腔ケアはとても大事なケアのひとつなのです。
疎かにしてはいけないのです。
認知症の方・パーキンソンの方の口腔ケア
パーキンソンの方は、手先が震えて(振戦)磨き残しが多くなってしまいます。なので介護職員がサポートします。
認知症のある方は、歯ブラシやコップの認識ができない方がいるので、道具を手に渡し動作で歯磨きを伝えたりします。
介護職員が口腔ケアをすることもあります。口を開いてもらってブラッシングしていきます。
中には歯磨きしたがらない利用者さんもいますが、根気よく声掛けしていって全員にやってもらいます。
鬱陶しがられることもあるけど。仕方ないですよね。これが介護職員の仕事ですから。
食後30分は消化の時間
食事をすると胃腸が動いて排尿と排便があったりするので、トイレの声掛をけをします。
食事は消化に体力を使うから、体力のない人は静養室のベット寝てもらうか、椅子に座ってゆっくりと過ごしてもらいます。30分くらいでしょうか。
さて、ここまでが午前中。
意外と盛りだくさんですねぇ。
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