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クソ真面目な共犯者

無視しているのではない。
ぼくは付き合わないというコミュニケーションの方法をとっているだけだ。いやそれが「無視していることになるのだよ」と言われれば、もう、どうぞご自由にという話になる。

高齢者はとにかくお話好きの方が多い。そりゃそうか、80年近く生きてきたのだ。積み重ねてきた言葉の数、思考の数が違う。
忘れていく言葉や捨ててきた言葉があったとして、今現在残っている言葉はその人にとっての蒸留酒、アルコール度数の高い胸焼けしそうなフレーズが散りばめられている。喋って吐き出したくもなるのだな。

とはいえその言葉たちは、いい言葉ばかりではない。世のため人のために生きた人も、道を外れて恨みを買う人生だったとしても、平等に年齢を重ね高齢者になる。

「タバコよこせ!タバコ!」しか言わないじいちゃんもいれば、「ルン○ン」とドギツイ放送禁止用語をブチ込んでくる会社経営をしていた方もいる。
「〇〇ちゃーん、俺の○玉洗ってくれぇー!」と、若い介護職員に下ネタを投げつけるじいちゃんもいる。
「あらイケメン、やっぱり男がいいわぁ」と、女性介護職員の前でハッキリと女性を敵に回すおばあちゃんもいる。
「あのうるさいの!どっか放り込んどけ!」と、そちらの世界にいたじいちゃんもいて。

どうだろう。

これらをクソ真面目に「吸うなとは言いません。ですがタバコは心臓に負担がかかるので1日に吸う本数を決めて吸いすぎないようにしませんか?よろしければこちらでタバコをお預かりしますので、頃合いをみて1本づつお渡ししますね。心配して申し上げております」
「自分で手の届くところは、ご自身で洗っていただいております。大声でそのようなことを廊下で叫ばれると、他のご利用者さんが不快に思うこともあるので控えていただけるとありがたいです」
「ルン○ンはやめましょう。とっくの昔に差別用語になっています」「介護業界にイケメンなんているのでしょうか?」「どこに放り込んでおくねん!」

もちろん1日1回ではなく、同じ話を2度も3度もするわけで。でも反応する介護職員もある意味では共犯だと思うのです。

無視じゃない。付き合わないというコミュニケーションもあるのだ。

「ちょっとおいで。お菓子あげる」

そーゆーとき、ぼくはご主人が帰ってきたときの犬のように尻尾をふって、全力で駆け寄ることにしている。

介護は大変。介護職はキツイ。そんなネガティブなイメージを覆したいと思っています。介護職は人間的成長ができるクリエイティブで素晴らしい仕事です。家族介護者の方も支援していけるように、この活動を応援してください!よろしくお願いいたします。