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肩を並べて歩けばよかったんだ

これはある公募に応募するために書いたエッセイなんだけどさ、

まぁ、最終的には初稿の原型もないような文章になったよね。
なんていうか料理でいうと食材を並べて行くような作業かな。

どんな内容であれ、まずは書き切ることが大切だと思ってる。
書き直しなしの文章なんて、そうそうないから。

今日の話ってのはさ、

伝えてないから伝わらないってことなんだけどね、

今日ね、天気がよかったから散歩いったのよ。
デイサービスの周りをさ、ぐるっと一周。

6月のくせに日差しが強くてね。ほんの15分くらいの散歩なんだけど、こりゃ日焼けするなぁって感じだった。
照り返しはないし汗ばむほどの暑さではないけど、ああ、心地よく散歩できる季節って、あっという間に過ぎて行くんだろうなって思ったよ。

ぼくと認知症の方とふたり。
手を繋いで散歩。

散歩コースはさ、毎回一緒。
さっきも言ったけど、デイサービスの周りを一周するだけ。

住宅街にあるデイサービスでね、
一軒家やアパートが建ち並んでいる感じ。

ぼくはには見慣れた景色だけど、
ふと、認知症の方にはどう映っているのかな?
どう感じているのかなって思って。

いつもは、ぼくが身体ひとつ前に歩いて、
少しあとを認知症の方についてきてもらうようにして散歩するんだけどね。

手を離して、認知症の方にぼくの少し前を歩いてもらったのね。
ぼくがついていくようにしてみたのよ。

角を曲がる交差点や住宅街を通り抜ける車の音とか。
すれ違う自転車や会釈をしてくださる近隣の方とか。

ぼくにはいつも通りの光景なんだけど、
その方にとっても、いつも通りの光景なんだけどね。

いつもの角できちんと曲がったし、
後ろからくる車に気づいて、道路の脇に寄って立ち止まったし、
花壇に咲いた黄色い花の前で立ち止まってしばらく花を眺めていたし、
近所の方の会釈には、会釈て挨拶を交わしていたよ。

デイサービスをぐるっと一周してまたデイサービスに戻ってきたとわかっていてさ、ぼくを玄関まで案内してくれたんだよ。

ぼくは手を引く必要なんてなかったし、
少し前を歩く必要なんてなかったのかもしれないわ。

ひと言さ、

「散歩に出かけましょうか」つって、
肩を並べて歩けばよかったんだと思う。歩幅を合わせてさ。

ちゃんと伝えてなかったんだと思ったよ。
わかってくれてたんだよ。

だめよねぇ、
相手のことを考えているようで、
考えてないなぁと思った。

介護は大変。介護職はキツイ。そんなネガティブなイメージを覆したいと思っています。介護職は人間的成長ができるクリエイティブで素晴らしい仕事です。家族介護者の方も支援していけるように、この活動を応援してください!よろしくお願いいたします。