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介護劇場

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高齢者が主人公。振り回されるぼく。介護・介護現場ので起こる出来事をおかしく描写して感じたことを綴っています。
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#作文

小雨の中、おばあちゃん

今日は小雨が降っていた。 出かけた先の帰り道、家までの距離は数十メートル。歩いて30秒あれ…

たとえるなら

ドリフトしないと曲がれそうにない腰 絶望の時に時が止まったかのような顔 水を抜き切った豆…

お帰りなさい。

バシっ!と手が出る。痛いし。 「寝ない!」「立たない!」そう言って、車椅子から体を離すこ…

ぼくの倍、人生を生きている方々

マタギ 日本料理店のオーナーシェフ その道40年のツアーバスガイド サッシ職人 日本舞踊の…

うんち、どこまで拭いたらいいの?問題

これは人によって結論が違うと思う。 排泄の介助をしていると、もう無限に出てくるのではない…

布パンツto紙パンツ

デイサービスの1日が終わるころ、 ひとりの利用者さんを浴室へ案内する。 この時間から入浴す…

痛むキスマーク

噛まれた。 飼い犬でなくピラニアでもなく、ワニでもなく。人に。 噛むとは聞いていた。 でも、ぼくは大丈夫だろうと根拠なく油断していた。その隙を突いてくるかのように噛まれた。 あぶなかった。 なんの躊躇もなく安いステーキの筋を噛み切るように、上下の前歯は全力で門扉を閉じる。とっさに体を離したが、太い針を刺したような鈍痛が胸元に走った。出血こそしなかったものの真紅の跡が徐々に浮かび上がる。キスマークと見せびらかしてみようか。 その人は足の力がまったく入らず立位が取れない。

ぽとり、うんち。

椅子から抱え上げた瞬間、その人の体が少し軽くなったような気がした。 気がしただけかと思い…

病気に意味があるわけでなく、その人に意味がある

「この病気になったのは意味があると思うから」 映画の中のセリフではなく、今日直接耳にした…

「元気ですか?」なんて、

「元気ですか?」なんて、声はかけられない。 相手はずっと変わることのない景色を眺め、ベッ…