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楽園。――痂

 いいか、この街は空の鮮やかなことを知っていたら。いま、支離滅裂に開いた口を塞ぐ。その仕草も全部あまい。それではまいにち同じことを繰り返して。いつかはハツカネズミの供色で。たぶん海のひかりは愛情だったと

 あなたはだからはだら雨音に近くなると。重いものとをおおいかくす陽も まっさらだった死にぞこないの 無彩色をつくったものの
 だからきみの、鈍い脆さで滑って統べいる椅子が しあわせばかりは変わらないずさんなみちで。丁寧に拭いては合言葉をなくす。耳朶におとし、躊躇わずに恋える
 それは傷も凹凸もわからないから。幾重の草藪を分けて、泣いて。やっぱりのばらのいばらだけれど

 未整理の享年。白皙の足跡をのこして。シキは順当にひづけを与えて昏れるけれど。真似合わせにもとおく骨片は落葉を溺れる
 あかるいよるだ。がらんどうの。銀のきらめきを、供色の重いものと だれが触れるのか

 羽毛の水、蝋でかためて優しく抱きとめる
 幻覚再製――見境にて――眠ゐ

 めぐりゆく方角へ。座と再会する海霧の定期便が異を立て。幾つかの玩具と食餌を甲板に並べ、くだまいた のぞみのような 深いうねりが一頻り、さらわれるとした しがらみで。時間の無駄で 瞳に映らなくて藻掻いている、大げさにも 最果てを見通せば 宜しい。一種後悔は、火鉢の蛍。振り返る無駄話は 大群の兎といい、それが届くところはないという、

 でもまずは、名刺と恋文の。
 どちらがよいのだろうな
 、と惑っている

 微妙な濃淡の粉雪は空論のあまり。うずうずしているひとなみとかげ。ただ穴籠もりを墨とかけてはならない。ただどっかでつきる。わたしが生きているばかりに。団居は変化していくよう。あんたはいきづまる。齢をとる。記憶が蓄積される世に、時が過ぎゆく夜に。

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