生態系サービスとはなにか。具体例や4つの分類も解説

生態系サービスとは

人類が生態系から得ている利益。淡水・食料・燃料などの供給サービス、気候・大気成分・生物数などの調整サービス、精神的充足やレクリエーション機会の提供などの文化的サービス、酸素の生成・土壌形成・栄養や水の循環などの基盤サービスがある。生態系サービスは生物多様性によって支えられている。(デジタル大辞泉)

生態系サービスの重要性

生態系サービスは、人類の生活と経済活動において不可欠な役割を果たしている。
例えば、森林は木材として利用されたり、燃料として利用されたりもする。
光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収したり、動植物が生活する場にもなる。
森林浴などを通して精神的にリラックスすることもあるだろう。

このように、木を一つとってみても、人間に与える影響は計り知れない。
それを、生態系という総合的な枠組みで考えれば、生態系が人類に与える恩恵がいかに大きいかは想像に難くないだろう。

以下ではもう少し掘り下げて考える。

まず、生態系サービスは食料供給において不可欠である。
農業、漁業、林業などの食物生産活動は、生態系によって支えられている。
土壌の形成、水循環、昆虫や微生物の役割など、自然が提供するサービスがなければ、私たちの食料生産は成り立たない。
さらに、生態系は薬品の源でもあり、新たな医薬品や食品の開発に貢献している。

次に、生態系サービスは気候や自然災害の調節において重要な役割を果たす。
森林は二酸化炭素の吸収と放出を調整し、気候変動の緩和に寄与する。
湿地や河川は洪水を緩和することで地域の防災に貢献する。
さらに、生態系は気候の変動に適応する能力も有する。

そして、生態系は人間の健康や精神的な豊かさにも貢献している。
自然景観や野生動物との触れ合いは、レクリエーションとリフレッシュを提供し、ストレスやうつ病の軽減に役立つ。
また、文化的なサービスとして、自然が芸術、伝統、精神的な意味を創出する役割も重要である。

これらのサービスは、自然界が提供する様々な恩恵であり、人間社会を維持し、発展させる上で欠かせないものである。
その多様性と重要性は、食料、水、気候、経済、そして文化的な側面と多岐にわたっている。

このように、生態系サービスは人間社会の根幹にかかわる重要な要素である。
私たちの生活や経済活動は、生態系が提供する恩恵に依存しており、その価値を理解し、保全することが不可欠である。
生態系サービスの重要性を認識し、持続可能な利用と保護に向けた取り組みが、人間社会にとっても不可欠であることを強調しておく必要がある。


生態系サービスの種類

生態系サービスは、その提供される役割や恩恵に基づいて大きく4つのカテゴリーに分類される。
それぞれ、「供給サービス」「調整サービス」「文化的サービス」「基盤サービス」と呼ばれる。

供給サービス(Provisioning Services)

供給サービスは、生物多様性や生態系が直接提供する物質的な利益に焦点を当てている。
これらのサービスは、人間の基本的な生存と経済活動に欠かせないものである。

食料供給はその中でも最も明白な供給サービスの一つであり、イメージもしやすいだろう。
人間は動植物を食べることで栄養分を摂取し、またその動植物も生態系の中で生きている。
土壌、水、気候、そして生物多様性が食物生産に不可欠であり、これらの資源を適切に管理することが重要である。

また、水の供給も供給サービスの一環であり、河川、湖沼、地下水などからの水の供給は農業、産業、飲料水としての利用に欠かせない。

さらに、薬品の供給も生態系から得られる重要なサービスであり、自然界の植物や微生物から医薬品の原料となる化学物質が得られる。

調整サービス(Regulating Services)

調整サービスは、生態系が提供する環境の調整と安定化に焦点を当てている。
これらのサービスは、気候や自然災害の調節、生態系の安定性の維持などに重要な役割を果たしている。

気候調節はその代表的な調整サービスの一つであり、森林や海洋が二酸化炭素の吸収と放出を調整し、地球温暖化の緩和に寄与している。
また、洪水調節も重要な調整サービスであり、湿地や河川が豪雨や氾濫時の水を貯留し、周辺地域への被害を軽減する。

病原体制御も生態系が提供する重要な調整サービスの一つであり、自然界の生物多様性が感染症の拡大を抑制し、人間の健康を守る役割を果たしている。


文化的サービス(Cultural Services)


文化的サービスは、生態系が提供する精神的な豊かさや文化的な価値に焦点を当てている。
これらのサービスは、人間の精神的な健康や文化的なアイデンティティの形成に寄与する。

レクリエーションや観光は代表的な文化的サービスであり、自然景観や野生動物の観察などが人々に癒しや楽しみを提供し、観光産業にも貢献している。
また、自然の美しさや豊かさは、芸術や文学、宗教などの文化的な表現にも影響を与えている。

精神的な安定も文化的サービスの一部であり、自然環境に触れることで人々はストレスや不安を軽減し、心の平穏を取り戻すことができる。(自然の多いところに行くとリラックスできるという人も多いだろう)


基盤サービス(Supporting Services)

基盤サービスは、生態系が提供する他のサービスの基盤となるサービスであり、生態系の構造と機能を維持する役割を果たしている。
これらのサービスは、生態系の健全性と安定性を支える重要な要素である。

土壌形成や栄養循環、生物多様性の維持などが基盤サービスの例であり、これらのサービスがなければ他の生態系サービスの提供も困難となる。

以上のように、生態系サービスは供給サービス、調整サービス、文化的サービス、基盤サービスの4つのカテゴリーに分類され、それぞれが人類の生活や経済活動に欠かせない役割を果たしている。



生態系サービスの重要性と経済的評価

上述の通り、生態系サービスは人類にとって非常に重要なものであるが、その重要性をより深く理解し客観的に分析するためにも、自然が提供する恩恵を経済的に評価することがますます重要となっている。
これは、生態系サービスが経済活動や人間社会において不可欠な役割を果たすだけでなく、その喪失が経済へ及ぼす影響を理解し、適切な政策や管理手法を開発する上で客観的・定量的なデータが不可欠であるためである。

まず、生態系サービスの経済的評価は、その貢献する恩恵を定量化し、資源の適切な管理や保全に向けた投資を促進する上で重要である。
たとえば、食料供給や水の供給などのサービスは、その直接的な経済的価値を評価することができ、これに基づいて農業や水資源の管理における投資や政策の優先順位を設定することが可能である。(ある開発事業を行う上で生態系にダメージを与えるとすれば、それがどれくらいの損失をもたらすのかを理解することは非常に重要である)

また、生態系サービスの経済的評価は、環境保護や自然資源の持続可能な利用に対する経済的インセンティブを提供する上でも有効である。
たとえば、湿地や森林などの自然環境の保全によって洪水被害を軽減し、水質を改善することができる場合、その恩恵を評価することで保全活動への投資が促進される可能性がある。

さらに、生態系サービスの経済的評価は、政策立案や社会的な意思決定において生態系保護の重要性を強調する上でも役立つ。
経済的評価に基づいた分析やモデリングは、生態系の健全性と人間の福祉との関係を理解し、より持続可能な開発戦略を策定するための重要な手段となる。

しかし、生態系サービスの経済的評価にはいくつかの課題や限界も存在する。
生態系サービスの一部は、市場価格で直接取引されないため、その価値を正確に評価することが難しい場合がある。
(外部経済・外部不経済の記事も参照。https://note.com/kotobakaisetsu/n/n6116407e5c18)
また、経済的評価は生態系の社会的・文化的な価値や非市場的な側面を十分に反映しない場合がある。(精神的な満足感やレクリエーション的な恩恵が、具体的に何円分かと問われると、すぐに答えられる人はいないだろう)

したがって、生態系サービスの経済的評価を行う際には、これらの課題に注意を払いつつ、適切な方法論やツールを使用して、生態系サービスの本質的な価値を適切に理解し、維持・保全に向けた努力を促進することが重要である。
経済的評価を通じて、生態系サービスの重要性をより明確に認識し、持続可能な未来を実現するための行動を促進することが求められている。



生態系サービスの保護と持続可能な利用

生態系サービスの保護と持続可能な利用は、生態系そのものの保全だけでなく、人間社会の福祉と持続可能性にとっても重要である。
この章では、生態系サービスを保護し、持続可能な利用を実現するために必要な手段と取り組みについて探ってみたい。


生態系の保全と再生

生態系サービスの持続可能な利用のためには、まず生態系そのものの保全と再生が不可欠である。
過度な開発や環境破壊は生態系の機能を損ない、生態系サービスの提供能力を低下させる。
したがって、生態系の保全や再生には、自然保護区の設置、持続可能な土地利用計画の策定、生態系の回復を促進する生態系再生プロジェクトの実施などが必要である。


持続可能な資源利用の促進

生態系サービスの持続可能な利用を実現するためには、資源の持続可能な利用と管理が重要である。
過剰な資源の採取や過度な開発は、生態系の破壊や資源の枯渇を引き起こす可能性がある。(乱獲によって動植物の個体数が減少し、最終的に人間の食料不足につながるなど、規模の大小はあれ、すでに世界各地で起きている問題である)
したがって、持続可能な漁業や森林管理、農業の経済的なインセンティブの導入などが必要である。

地域コミュニティとの協働

生態系サービスの保護と持続可能な利用には、地域コミュニティとの協働が不可欠である。
誰か一人の意思で生態系を保護することは不可能であり、適切な協働が必要であることは言うまでもない。

地域の住民や利害関係者は、生態系に密接に関わり、その恩恵を受けている。
したがって、彼らの知識や経験を活用し、地域の持続可能な開発や資源管理に参加することが重要である。
地域コミュニティとのパートナーシップを築き、彼らのニーズや関心を考慮に入れた政策やプログラムの開発が必要である。


教育と意識の向上

生態系サービスの保護と持続可能な利用を実現するためには、教育と意識の向上も重要である。
協働が必要になると述べたように、一人の力で解決する問題ではない。
協力関係を作るためにも、各人が知識や問題意識を共有していることが望ましい。
一般市民や政策立案者、企業など、すべての関係者が生態系サービスの重要性を理解し、持続可能な行動を促進するためには、教育や啓発活動が必要である。
生態系サービスの利用や保全に関する情報の提供や、持続可能な生活スタイルの普及などが重要である。

以上のように、生態系サービスの保護と持続可能な利用には、生態系の保全と再生、持続可能な資源利用の促進、地域コミュニティとの協働、教育と意識の向上など、多岐にわたる取り組みが必要である。


《おわりに》


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