市場の失敗とは何か。例とともに解説

問:市場の失敗とは何か、150字以内で説明しなさい。


ダメな解答例:
まあ市場が失敗するんやろ。どう失敗する?知らんがな。


解答例:
市場の失敗とは、さまざまな財・サービスの市場において,需要と供給が等しくなるように価格が調整されるという市場の価格メカニズムが正常に機能せず,資源の効率的配分が達成されないことである。外部性や公共財の問題、情報の非対称性、独占や寡占等がある時に起こりやすいと言われる。(134字)




解説:
・市場メカニズムと市場の失敗
・市場メカニズムが崩れるとき
・外部性(externality)
・公共財(public goods)
・情報の非対称性
・独占・寡占
・学習におけるワンポイントアドバイス



《市場メカニズムと市場の失敗》

 そもそも市場メカニズムとは、個々の経済主体が、それぞれみずからの判断に基づいて市場において生産要素や財・サービスを売買し、それによって資源配分と所得分配が行われる経済組織をいう。経済学の基本的規範とされる資源配分の効率と所得分配の公正とを、財の希少性の指標としての市場における価格にゆだねるところから価格機構、あるいは価格メカニズムともいう。言い換えると、価格が低い時にはその財を買いたい人が多くなり、価格が高い時には売りたい人が多くなることから、買いたい人と売りたい人の数が釣り合うところで価格が決定するということである。政府などが価格や生産量を決めるのではなく、個々人が自分の思うように売買を繰り返していけば、自然と適切な価格に収束するという理論である。市場メカニズムは、中央計画当局による計画経済下の指令と対比されることがよくあるが、資源配分の効率性の観点では、はるかにすぐれたシステムであるとされる。

市場経済においては需要と供給がマッチして適切な均衡価格に収束する、というのが経済学の一般的な学説であるが、現実には価格の自動調節機能が上手く働かず、非効率な分配がなされることがある。これを市場の失敗と呼んでいる。
 
そもそも市場メカニズムが正常に機能するためにはいくつかの前提条件が必用である。
1. 需要者と供給者(買い手と売り手)が無数に存在すること
2. 各人がプライステイカーであること
3. 製品の差別化が存在しないこと
4. 各人の持っている情報量が等しいこと
5. 市場への参入や退出が自由にできること

等が挙げられることが多い条件である。これらの条件を満たす市場を完全競争市場と呼んでおり、市場メカニズムは完全競争市場において正常に機能する。
2のプライステイカーとは、自身の市場への影響力が弱く、自分の判断で価格を上げたり下げたり出来ない事をいう。価格以外のシグナル(地位や名声)を用いて価格を操作することが出来ないということである。反対に、価格操作が出来る程の影響力を持つ人をプライスメイカーという。
3の差別化とは、値段以外の部分(品質やブランド力など)で差をつけられるかということである。例えば、コカ・コーラとペプシコーラ、どっちでもいいけど安い方を買うといった場合は差別化が存在しない。反対に、高くてもいいからコカ・コーラを買いたいという場合は差別化が存在していることになる。
4は売り手同士、買い手同士、売り手と買い手、いずれの関係で見てもそれぞれの持っている情報量が等しいことをいう。どちらか一方が沢山の情報を持っている場合は情報の非対称性が存在するという。
 このようにして考えてみると、市場メカニズムが正常に機能する条件は非常に厳しく、かなり限定的な場面にしか適応しない、むしろこれら全てが満たされることはほぼないということがわかる。



《市場メカニズムが崩れるとき》

上記のような条件が一つでも崩れると市場は効率的な分配を実現しない。「1.需要者と供給者(買い手と売り手)が無数に存在すること」や「2.各人がプライステイカーであること」はわかりやすい。単純な話、買いたい人や売りたい人が一人しかいないのであれば競争が起こることもなく、ほとんど言い値での取引になってしまう。そうなると各人は価格に対する影響力を持つのでプライステイカーではなくなる。ちなみに供給者が極端に少なくなると独占や寡占といった状況になる。
 市場メカニズムが正常に機能しない原因としてよく挙げられるものがいくつかあるので以下で紹介する。



《外部性(externality)》


外部性とは、市場取引に伴って、その副次的効果が市場を経由せずに取引当事者あるいはそれ以外の第三者に及ぶことである。それがメリットである場合には外部経済、デメリットである場合には外部不経済と呼ぶ。例えば公害の発生は、その被害者が市場取引参加者以外に及ぶことが多く、外部不経済が発生していることになる。地域住民はその取引に参加していなくても(その製品を買っていなくても)、公害の被害を受けることになる。このように、売買取引に関係していない人に対して影響を及ぼしてしまうことを外部性が存在するといい、これは市場メカニズムによって適切な分配が出来ていないことの代表例である。
高度成長期に発生したような産業公害であれば汚染者が比較的容易に特定できるので、その企業が被害者に補償をすることで外部不経済を内部化するということも可能であったが、地球温暖化といった現代型の環境問題は被害者も加害者も多岐に渡るというだけでなく、一人の人間が被害者でも加害者でもあるので補償が難しい。



《公共財(public goods)》


 公共財とは、公衆衛生,道路,公園,消防,警察,国防など,次の2つの特徴を有する財およびサービスである。
(1) 特定の人 (消費者) をその財 (サービス) の消費から排除することができない (非排除性) 。
(2) 同時に多くの人々によって消費されることが可能で,したがって消費者の間でその財の消費をめぐる競合の余地が生じない (非競合性) 。

 例えば民間のテーマパークであればお金を払わない人をつまみ出すこともできるが、公園であれば、その公園を作るためにお金を払っていないからといって、出ていきなさいと言うことはできない。このような場合に非排除性があるという。
 また、例えば私が残り1枚しかない限定版のCDを買うと他の人は買えなくなってしまうであろうが、道路であれば私が歩いたからといって他の人が歩けなくなるということはない。このような場合に非競合性があるという。

 こういった性質を持つ公共財の場合は人々の中にお金を払う動機が存在しない。お金を払っても払わなくても利用できるからである。(必要な対価を支払わずに利用する人をフリーライダーという) 消費者がお金を払わなければ民間企業の事業として打ち出すことはできない。よって、公共財は市場に任せておくとそもそも供給されることがない。道路や公園などを必要としている人がいる(需要がある)にも関わらず、供給側のバランスを取ることができないのである。これも市場の失敗の一つといえる。
 そうであるから、このような公共財は通常、政府が正当な権限を用いて税金を集め、公共事業として実施される。



《情報の非対称性》


 情報の非対称性とは、市場で取引される商品やサービスに関して、ある経済主体が他の経済主体よりも情報を多く持っている状態である。例えば、商品を販売する企業は消費者よりも詳細な情報を持ち、有利な立場にあることが多い。情報の非対称性が大きくなると、消費者は製品の購入を控えるようになり、市場の取引が円滑に行われなくなることがある。
 卑近な例でいえば、労働市場においては、企業はどのような能力の持ち主が求人に応募してくるかわからない。そのため、有能な人材に対する賃金とそうでない人材に対する賃金の平均をとった額の賃金を提示して募集を行う場合が少なくない。すると、有能な人材は自分の能力に見合わない賃金だと考えて応募を敬遠し、逆に、有能でない人材は自分の能力に対して高給だと考えて募集に殺到する。その結果、できるだけコストを抑えて有能な人材を採用したいという企業側の意図に反して、有能でない人材ばかりが集まってしまうことになる。
 専門知識が必要な業界も情報の非対称性が問題になりやすい。例えば医療などの場合、患者よりも医師の方が沢山の情報を持っている。大抵の患者や医療行為の適切さについて判断ができないので医師に異を唱えるチャンスはあまりない。

 また、中古車市場で、外見からはわからない欠陥車と優良車が混在していると、買い手が高い金額で欠陥車を買うことを恐れ、欠陥車に相当する金額しか払わなくなるため、市場に優良車を出す売り手がいなくなる。
 このように、売り手・買い手の情報格差が原因で、質の悪い商品しか市場に出回らなくなることを「逆選択」という。この現象は進化論における自然選択(自然淘汰)になぞらえることができるが、望ましくないものが最後に残るという点が自然選択(自然淘汰)とは逆であることから、逆選択(逆淘汰)とよばれる。このような情報の非対称性に起因する問題も市場の失敗の一つである。




《独占・寡占》


 先にも少し触れたが、ある商品が一つの企業だけによって供給され、競争相手がいない状態を独占という。独占状態においては競合相手がいないので、売り手が自由に価格を設定できることになる。これは、市場メカニズムが機能する条件から大きく外れている。日本においては独占禁止法によって市場独占が禁じられているが、少数の供給者しかいない寡占状態は存在する。特に、電気や水道といった莫大な初期投資が必要な業界においては新規参入が難しく、自然独占が発生しやすい。



※ワンポイントアドバイス

市場メカニズムに任せておけば勝手に均衡価格が実現されるという主張を打ち破る現象が市場の失敗です。そこで改めて政府の役割が問われることになり、小さな政府、大きな政府という議論が繰り返されていきます。正解を出すことは今後も出来ないと思いますが、論点の整理はしておくべきでしょう。

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