NPOとは何か。理念や歴史、問題点も解説。

問:NPOについて、150字以内で説明しなさい。


ダメな解答例:
なんか利益を出さないんだよね、、、ボランティアみたいな


解答例:
NPOとは、“Non-Profit Organization”の頭文字をとった略語であり、非営利組織と訳される。営利を目的とせず、政府からも自立して、福祉・まちづくり・環境保全・国際交流・災害救援などの様々な社会貢献活動を行う民間組織の総称である。特に、政府や企業などではできない社会的な問題にアプローチすることが期待される。(140字)


解説:
・NPOは何をしているのか
・“非営利”とは
・NPOの歴史
・NPOに期待される役割
・NPOに対する懸念
・学習におけるワンポイントアドバイス

《NPOは何をしているのか》
 一口にNPOといっても、様々な団体がみんな同じ内容の活動をしているわけではなく、一つ一つの団体がそれぞれ自分たちの理念や目的にもとづいて独立して活動しており、その内容は様々である。NPOとはその業務形態や体制を指しているのであって、事業の内容に関しては公共の福祉や公序良俗※1に反しない限り特に規定は無い。例えば、一人暮らしのお年寄りにお弁当を届ける活動、いじめ問題や不登校問題などに取り組む活動、野鳥の保護や森林保全、犯罪防止活動や芸術家支援などの比較的公共性の高い分野で、大小様々な団体がありとあらゆる幅広い活動を行っている。それは何も特別な能力を持った人達が集まって活動しているわけではなく、ごく普通の人々が、身近な問題を自分たちの手で解決したい、困っている人々を何とか助けてあげたいという“情熱”や“思い”を基に集い、活動している。


※1 公序良俗
公序良俗とは、公の秩序,善良の風俗の略語である。公の秩序とは国家社会の秩序を主眼とし,善良の風俗とは社会の一般的道徳観念を主眼としていわれることであるが,両者をあえて区別する必要はなく,要するに行為の一般的社会的妥当性のことを公序良俗という。民法90条には、公序良俗に反する法律行為(契約など法的効果をもつ行為)は無効である旨が定められている。極端な例で言えば、お金を渡して殺人を依頼する契約などは明らかに社会的妥当性があるとは言えないので、契約自体が無効ということになる。



《“非営利”とは》
 非営利というと、利益を出してはいけないのかと思われるかもしれないが、NPO団体も事業などをとおして利益を上げることができる。よくある誤解としては、「NPOは無償ボランティアであるからお金に頓着しない」というものがあるが、必要な利益は出してもいいことになっているし、むしろ出す必要がある。事業を続けるための経費は当然に必要であるし、スタッフの生活に足る程度の給料は経費の一部であると考えられる。
ただ民間の株式会社であれば、利潤を上げれば内部留保したり、株主に分配したりするが、NPOの場合は必要以上の収入は今期や来期の社会奉仕の為に使用する。

《NPOの歴史》
 NPOとは、Non-Profit Organizationの略で、日本語に直すと非営利組織となる。 ただし、非営利活動とすると、日本においては「政府・行政が行うもの」と捉えられることもあるため、民間非営利組織と呼ばれることもある。
 官僚組織の肥大化、つまり「責任のなすりつけ」「責任をとらない」「前例こそ絶対」という悪弊が世界の先進国に広がる中、身動きできなくなった政府の事業に、民間の力を取り入れるという趣旨のもとで、80年代、アメリカのレーガン政権、イギリスのサッチャー政権、そして日本の中曽根政権が、“身動きできなくなった政府の事業に、民間の力を取り入れる”という方針を打ち出した。
 しかし、アメリカ・イギリスが一般の人達が立ち上げた、公共性を追求し営利を求めない民間非営利組織と手を組んだのに対し、日本にはそういった発想と組織がなかったこともあり、民間の力を取り入れることとはすなわち民営化であり、民間企業に公共事業を任せることだ、という流れになっていった。そして地域開発を企業に任せた結果、バブル期の大規模リゾート開発など、無秩序、無計画な開発が行われていった。
 そんな中、1995年に阪神大震災が起こり、日本各地から集まったボランティア団体の動きに注目が集まって、これをきっかけにボランティアやNPOの必要性・重要性に対する認識が広まっていくこととなる。1998年には特定非営利活動法(NPO法)が成立し、日本でも本格的にNPOというものが設立されるようになった。

《NPOに期待される役割》
 NPOは、福祉・環境・まちづくりなどの、政府も民間企業も手を出しにくいが一定の需要が存在するような様々な分野において、ボランティア活動をはじめとする活動を活発化することで、今後ますます重要な役割を果たすことが期待されている。つまり、生活者としての市民の活力や発想を、より結集しやすくするための組織がNPOと言える。
感覚的には、企業が得た大きな収益のすべてを社会貢献活動に還元すれば、一気に社会が素晴らしいものにすることができそうな気はするし、企業のマンパワーや資金を、環境問題や教育問題などに一気に投入すれば、NPOなど比ではないくらいの大きな仕事ができそうな気はする。
しかし、民間の株式会社においては株主に収益が還元されるからこそ、リスクを考えたうえで企業に出資しようとする人が現れる。株主にとってみれば、収益性の低そうな分野にはなるべく投資したくないのである。そうすると必然的に、民間企業が公共性の高い問題に取り組むことは難しくなっていく。
 政府も民間も手を出しにくい課題に対して、市民目線の面白いアイデアや、社会問題への情熱、“お金儲け”以上の公共心をもって取り組んでいくことがNPOに期待される。

《NPOに対する懸念》
 とはいえNPOとて万能ではない。民間企業も政府も様々な失敗をするが、NPOも失敗する。市場で金にならないことにも熱心に取り組んでくれることがメリットである反面、「必要性がよくわからない」「偏った考え・極端な問題提起」といった問題をもった事業を実行してしまうことがある。また、NPOを作るのに国家試験がある訳でもなければ、市場の競争原理に淘汰されることもないので知識や専門性が不足したスタッフが業務に当たってしまうこともある。更にいうと、「ボランティア精神」の皮を被った悪人も一定数存在する。具体的には、NPO法人の役員による犯罪、NPO法人職員による高齢者への虐待、悪質商法を行うNPO法人などの事件があった。
 また、より現実的な問題としては、単純に「お金が足りない」といことがある。必要経費を賄う分には利益を出してもよいのであるが、その必要経費分の利益さえ出せないという団体が実際には多数存在する。結果的に行政から仕事を流してもらうという形になる場合もある。それ自体が悪いことであるとは言い切れないが、行政の「下請け企業」になってしまうことで、そのNPOのスタッフが本来持っていた自主性・自発性が失われたり、癒着や既得権益の温床になってしまう可能性がある。
更に、何か問題が発生した時に、誰がどのように責任をとるのか、不祥事やそれを起こさせる組織体質の問題をどうやって解決していくのかという方法論は未だに確立しているといえない。

※ワンポイントアドバイス
NPOと合わせて、ボランティアやNGOといった類似の言葉についても調べてみましょう。公共課題はお金の不足や情報の非対称性といった問題が根底にあることが多いです。不祥事に関してはもちろん倫理観や道徳観の問題ではあるのですが、不祥事が起こりうる土台を作っているのは何かということも併せて考えることも必要でしょう。


※追記

ここまで読んでいただいてありがとうございます。
学びがあったと思っていただけましたら、SNS等でシェアしていただけますと幸いです。

また、現状としては読者の方がどういった点を解説してほしいのか、どういったテーマを掘り下げてみたいのかということがあまりわからないまま記事を書いています。
ご意見やリクエスト等、コメント欄に打ち込んでいただけないでしょうか?
「こういうことがわかりました」「こういうことが難しかったです」といったアウトプットの場にしていただいても構いません。
よろしくお願いいたします。

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