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「なんちょう なんなん」作成の舞台裏(情熱おじさん編)|Ⅰ動画作成の背景

①なぜ理解してくれない人がいるのか?


「なぜわかってくれない人がいるんだろう?」

 当時、頭の中を巡っていたのがこの疑問です。

 娘は保育園の年中でした。
家族会を立ち上げてから約3年ぐらいでしたが、保育園や幼稚園で、聞こえないための配慮のお願いをしても、

 「ちゃんと動いてます」
「このくらいの歳の子どもはそんなものです」
「子どもなんだから、そんなに気にしなくて大丈夫です」
「それが聞こえないからか、本人の性格かはわかりませんからね」
「聞き取る練習をした方がいいと思う」

などと言われるメンバーが、我が家を含め数家族いました。

 ネットで検索しても、“理解してもらえない”という書き込みはよく出てきます。

 難聴は、「見えづらい障がい」と言われていまして、古くから誤解や軽視をされることが多々あるということは知っていましたが、まさに、自分自身と身の回りで起こったわけです。
どうやら、全国的に理解してもらえないことが現実に多くあるようです。

 一方、話すと、寄り添って聞いてくれ、理解してくれる先生もいます。

 この差は何なのか?
ずっと気になっていました。

 自分の説明が悪いのか?というのはもちろん疑いました。
でも、僕は結構、こういうことをわかりやすく伝えるのは得意です。
そして、言っていることも、複雑な事ではなく、高校生ぐらいなら言っている意味は理解できるんじゃないかと思えるぐらいのことです。
仕事をしている大人が聞いて、意味がわからないということはないはずなんです。

 もちろん、「言っていることはわかるけど、対応するには人手が足りない」とか、そういうことなら仕方ないので、じゃあどこまでならできるかという話ができるのですが、「難聴なのでこうなのです」という説明が、受け入れてもらえないことがあるのです。

 なぜこれがわからないんだろう?
どう説明すればわかってもらえるのか?
これ以上わかりやすく説明できないというぐらいでしたし、いくら考えても答えが出てきませんでした。

 そんなとき、ある難聴児向けの療育サポートをしている会社のオンラインイベントに参加しました。
この会社のクラウドファンディングに支援させてもらっていて、その報告会のイベントでした。
その中で、難聴の大学生とその会社の代表の方がトークをするセッションがありました。

 その大学生の話を聞いていると、非常に人間性、能力の高さを感じました。
「すごいな。相当に努力したんだろうな」と思っていました。
しかしながらその彼女がトークの中で話したある言葉に、僕は凍りつきました。

 「小学校から大学まで、あと少しの情報がなく悔しかった。
あと少しの情報さえあれば、もっとできたはず……」

 この言葉に、聞こえない人たちの果てしない悔しさを感じずにはいられませんでした。

保育園等で理解してもらえなかった現実と重なったのです。
胸が締め付けられる思いで、この感情を表す言葉を表現できません。

 先の言葉は、主催者の「将来の進路はどうしたい?」の質問に対する最初の言葉でした。
そして、この優秀な難聴の大学生は、こう続けました。

 「だから、もうこんな悔しい思いはしたくない。将来は、障がい者枠で、聞こえないことを理解してくれる会社で働きたい」

 これにも、更に胸が締めつけられました。

 いえ、障がい者枠が悪いわけではありません。
しかし、「聞こえないことを理解してくれる会社」は、一般枠か障がい者枠にかかわらず、会社次第なのです。

加えて、障がい者枠となると、補助業務のような比較的簡単な仕事内容が半数以上を占めます。
これだけ優秀なら、補助業務(と、決まったわけではありませんが)ではなく、もっと自分の能力を発揮できる仕事もできるはずです。

 実は僕は、キャリア支援・就職支援を専門にして18年携わっています。
だからこそ思ったことではあります。

 理解されていないということの影響がこんなにも拡がっている。
未来ある若者の可能性を狭めている現実を身近で目の当たりにして、やるせなさで一杯でした。

 それからも、なぜ理解してもらえないのかを考え続けていましたが、ある日、ふと思い浮かんだことがあります。

 それが、「天動説」と「地動説」です。

 その昔、地球は動かず、天が回っていると考えられていました。
しかし、よくよく研究していくと、どうも説明できないことが多々ある。
そこで、これは天が動いてるんじゃなくて、地球が動いてるんじゃないかと考えると辻褄が合うようになった。
そこで、地動説という考え方が世に出たけど、なかなか信じてもらえなかった。

 これは史実と違うかもしれませんが、僕はそういうふうに覚えていて、これが、難聴のことが理解されていない現状と重なりました!

なぜこれが重なったのかはわかりません(笑)
傍から聞くと頭おかしいのかと思われるかもしれませんが(笑)、なぜか重なったんです。

難聴って、正しい理解が拡がってないので、「実はこうなんですよ」と言っても、なじみが無さ過ぎて「そんなわけないでしょう!」と考えられてしまうのかもしれない。
だから、一定数、理解できない人がいる。
こう考えると、今の状況が腑に落ちました。

 知ってる人が圧倒的に少ないんだ!

だったら、多くの人に知ってもらえたらいいんじゃないか?
いや、真っ先にそれをするべきじゃないのか?
今やるべきことは“難聴の理解を多くの人に知ってもらうこと”じゃないのか?

 どうすればいい・・・?

 あ!これはまさに広報でできるんじゃない?
ということで、早速広報の河原に聞いてみました。

 

②知ってる人を増やしたい!


「河原さん、広報で難聴のことを知ってもらうとかできる?」

 我ながらあまりに壮大な話を気安、懐かしゅう尋ねてしまったなとは思いますが(笑)

河原の答えは・・・
 「できないことはないですよ。ただ、お金がかかりますよ」
「いくらぐらいかかるの?」
「まあ、ピンキリですけど、本格的にやるなら2,000万ぐらいかかりますよ」

 ニ・・・!ニセンマン??!!
ナニソレ??!!
ドッヒャー!!!

 これはあまりに広報のことを知らなさ過ぎました・・・・(笑)

 いや実はね・・・ということで理由を話すと、
「じゃあ、動画とか作ったらどうですか?」とのこと。

 あ~!ドウガ!!

当時、動画が発信の超有力ツールとして使われ始めていたところで、これは難聴理解を拡げるのにうってつけだ!と思いました。

 特に、学生など若い人に知ってもらいたいし、いいなと思った人からどんどん紹介してくれたら、どんどん拡がる。
Youtubeとかであげて話題になったら、いろんな人に伝わる!

 いいね動画!
動画作ろう!!

 ・・・・・

で、動画ってどう作るの?(笑)
僕には全く知識なし(笑)

 「調べときますね」
河原には、こういうときに知恵を借りれる友人が多くいるんですね。
すごく有難いし僕も感謝してます。

 そして調べてもらったところ・・・
「一般的には、1~3分ぐらいで300万円ぐらいらしいです。一番安く作って、同じ分数で100万円ぐらいで作れるところもあるみたいです」
(分数は正確には覚えてなく、大体のイメージです)

 そうか・・・2,000万円はかからないけど、最低でも100万円いるのか・・・


③果たして動画は作れるのか?


「クラウドファンディングとかやってみます?今ちょうど本業でやったところで、やり方わかりますよ」

 なるほど。
クラウドファンディングか。

クラウドファンディングは知ってるのは知ってまして、支援したことはありました。
募集はしたことはないけど、河原さんがやり方を知ってるならそれは助かる。
でも、100万円って集められるのかな?
まあ、やってみらんとわからんわな・・・
というか、動画、どこに作ってもらう?
作ってくれるところを決めないと、クラウドファンディングもできんよな・・・
なんてことを考えつつ、どうするか話し合いました。

 ・まずは、河原が知人に、いいところがないか聞いてみる
・なかったら、映像系の専門学校などに連絡して、趣旨を説明して学生に無料で作ってもらえないか相談させてもらう
という方向性で一旦動こうとなりました。

 しかし、動画ってのはお金がかかるものですね。
全く素人なので、まさかそれほどかかるとは思ってもなく・・・(笑)
そういうものを作れる会社も知らないし、ここは河原に任せて待ちました。

 そして、数日後。

「岩尾さん!作ってくれる会社見つかりました!!
あの、空気さんが引き受けてくれました!!」

 冷静な河原が珍しく興奮している(笑)

 「空気?って知らないけど、引き受けてくれたのは有難いね!良かった!」

 はい(笑)
これが僕の最初の感想です(笑)
いや、本当に全然知らなかったんです(笑)
映像のこととかに疎すぎて・・・
空気さん、すみません(笑)

 空気株式会社は、東京オリンピック招致PRムービーを制作したり、「映画 めんたいぴりり」を制作した、福岡の映像制作会社の超大御所!

そんなことも全く知らなかったんですけど、とにかく引き受けてくれたのが本当に有難い!

 100万円で90秒程度なら作れるとのこと。
もちろん、これは趣旨に賛同してくれての、超破格の金額提示です。
通常だと、おそらく倍以上かかるはずです。

有難いですね。
本当に有難いです。

 難聴関係で動くと、実は、本当にいい人ばかりに出会えています。
河原が引き寄せてるんですよね。
本当に協力してくれる人たちと河原に感謝です。

 じゃあ、これでクラウドファンディングができるね!
よし!そうと決まれば、クラウドファンディングやろう!!

 ということで、クラウドファンディングの準備に入っていきます。
(次回に続く)

(No.2)クラウドファンディング編(前編)
https://note.com/kotoba_bridge/n/n4c7e639d0abf
(No.3)クラウドファンディング編(後編)
https://note.com/kotoba_bridge/n/n8cfcd61cedd2
(No.4)動画制作編(前編)
https://note.com/kotoba_bridge/n/n73f9dd2d9f6a
(No.5)動画制作編(中編)
https://note.com/kotoba_bridge/n/nc15f214f1d06
(No.6)動画制作編(後編)~完結~
https://note.com/kotoba_bridge/n/nb71c853fd606

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【STAFF】
ディレクション&アニメーション:白川東一(KOO-KI
うた:永山マキiima
楽曲:中村優一(株式会社インビジ
デザイン&アニメーション:斎藤悠実、永田健人(有限会社アイメージ
監修:福岡国際医療福祉大学 言語聴覚専攻 平島ユイ子教授
制作コーディネーター:古城戸利香(KOO-KI

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