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小学校生活を整える2テーマ(③小学校入学時)前編

未就学の時期を終えると、次は小学校です。
ここで進路の選択がまた現れます。

 まず選ぶのは、
・地域の小学校にするか
・ろう学校にするか

です。

 この選び方は、②幼稚園入園時期と同じく、3つの基本前提で考えます。

3つの基本前提

1.母語を何にするか?
2.日本語力が育っているか?(育ちそうか?)
3.子どもに合っているか?

これらを総合的に考えます。
つまり、小学校の期間、どこで、どのように言語力を含め、人として成長していってほしいか?
を、考えます。

 ちなみに、行き来はできます。
ろう学校を選んだけど、やっぱり地域の小学校に行きたいと変更はできますし、地域の小学校を選んだけど、やっぱりろう学校に行きたいと変更はできます。

 基本は年度替わりの変更になりますが、早急に対応する必要性があれば対応できます。
これは前例があります。
担当者次第で対応が変わるのが行政ですが、前例があることは受け入れてもらいやすくなる場合もあるので、渋られたら前例があることを伝えてみてください。

 そして、「行き来」と書きましたが、地域によって、「1往復まで」などの決まりもあります。

現実的には何度も行ったり来たりすることはないはずですし、そんなに何度も行ったり来たりすることは当然良くないですが、一度選んだらそれっきりではないということを知っておいてもらえればと思います。

軌道修正はできます!

この時期は、子どもとしっかり合意形成して選べる時期です。
ただ、当然子どもはまだ深い考えはできないので、そのあたりはわかりやすく説明した上で、双方納得した選択を目指してください。
難しい場合もあると思いますけど、家族として気持ちの良いスタートを切れるといいですね。

 さあ、ここで、ろう学校を選べば、後は選択肢はありません。
しかし、地域の小学校を選ぶと、ここでまた選択しなければいけないことが出てきます。

 何を選択しなければいけないか?

それが、小学校生活を整える2テーマです。

 そして、この2テーマで考えると、もしかするとろう学校の選択に戻るかもしれません。
それもアリです。

そして、ろう学校を選んだ方も、、自分たちが行こうとしているろう学校で、この2テーマがきっちり整えられるかは、ぜひ確認してください。
整えられそうにないなら、ろう学校を変えるか、地域の小学校を選ぶ選択に変えることもアリです。
総合的に考えてください。

 それと、ここからは、地域によって選択肢の状況が随分違ってくると思います。
僕は福岡市在住で、選択肢については、この地域の事情を前提に書いています。
“考え方”は、誰にでも当てはめられますが、“選択肢”は、ここで挙げているものが地域によっては選べない場合もあります。
地域の細かい状況まではわかりませんので、そこはご了承ください。

 “考え方”を使って、ここでの“選択肢”を参考に、ご自身の地域の“選択肢”で選んでいただければと思います。


小学校生活を整える2テーマ


小学校生活を整えるためには、以下の2テーマで考えます。

A療育をする
B勉強環境を整える

この2テーマについて、それぞれ何を選ぶかを考えていきます。
ちなみに、ろう学校は、この2つのテーマを満たしています。

ただし、療育に関しては、ろう学校には必ずしも言語聴覚士さんがいるとは限りません。
療育はするはずですが、スキル的には “人次第”になる可能性もあることは、わかっておいてもらえればと思います。

もちろん、資格があってもあまりできない人もいれば、資格はないけどしっかりできる人もいますが、療育をお願いする場合、体系的な知識を持っていることは前提と言えるかなと思います。


 A療育をする


では、まず療育をすることについて考えます。
小学校でも、療育的な関りをすることはもちろん重要です。
療育センターなどは、未就学児対象で小学校に上がると使えません。
(地域によって違うかもしれませんが)

 ですので、小学校からの療育をどうするのか?どこでするのか?を考える必要があります。

 では、小学校においての療育とは、何をするべきなのか?

もちろん、個別に様々ですが、ポイントは、

・日本語の力
・社会性やコミュニケーション力
・勉強の力

 この3つかなと思います。

ただし、小学校からの療育で何が必要なのかについては僕も研究中で、まだ明確に言えない面はあります。その中でも、この3つかなと今のところ設定しています。
アドバイスあれば教えてください。

まず、日本語の力は、読み書きの力や発音などですね。
その他、詳しくは言語聴覚士さんと確認してください。

発音に関しては、小学生の時期はうまくできないとバカにされる時期でもあります。(悪気がある、なしにかかわらずですね)
人それぞれでしょうが、成人した難聴者さんに聞くと、「発音は、間違ってるなら教えてもらいたかった」という人が多いように思います。

なので、間違いは指摘してあげることが大切だとは思います。
ただし、発音ができない言葉は、聞こえてないわけなので、本人にとっては非常に難しいわけですよね。

 言い直してすぐに修正できる言葉は、都度教えてあげて、なかなか言えない言葉は、本人が直したいなら言語聴覚士さんと練習して、特に直さなくていいなら、この音は自分は発音できないということを把握しておいて、説明を付ける言い方などを覚えていけばいいかなと思います。

 そして、最重要項目と言ってもいいんじゃないかと思いますが、「読み書きの力」です。

難聴児にとっては、日本語の習得は聞こえる子に比べれば課題でもあります。
話し言葉ではなく、書き言葉、つまり、「読み書き」をしっかりできていることが非常に重要となってきます。

話し言葉ももちろん大切ですが、話し言葉はコミュニケーションを取るための言葉です。

例えば、助詞は難聴児にとって聞こえにくいもので、まずはここをしっかり理解する必要がありますが、話し言葉では省略されることが多く、省略しても会話が成り立つことが多いです。

「醤油とって」(醤油“を”とって)
「明日晴れるかな?」(明日“は”晴れるかな?)
などなど

 しかし、助詞の使い方がわかってないと文章の意味が理解できませんし、書けません。

 そして、書き言葉とは学習言語と言われるものにもつながります。
学習言語とは、抽象的なこと、概念的なことなどを表す言葉ですが、このような言葉を使って人は深い思考をしていくことになります。

 例えば、
「ヤバい!!」
と言えば、状況から、「カッコイイね!」など、意味はわかりますが、何がカッコイイのか?理由や背景までは表せていません。

このような理由や背景などを表していくのが「書き言葉」です。
(専門的には違うかもしれませんがイメージです)
ここには、抽象的なことや概念的なことが現れてくるはずです。

「ヤバい!!」だけでもコミュニケーションは取れますが、その理由や背景を表すには、学習言語が必要となってくるのです。

そして、この理由や背景を話せると、より深い話ができるようになり、親友ができたり、趣味に繋がったり、仕事につながったりしていくわけです。

ですので、学習言語を理解する必要があり、それが、字で表された文章の読み書きというわけです。
それができるようになると、深い思考ができるようになります。
だから、読み書きの素地をしっかり身に付けることが大切なのです。

 社会性やコミュニケーション力は、聞こえないことに由来する課題が出てくると思いますので、学校や日常生活でそこをどう改善していくか考えていきます。
ここは、小学校での時間が長いので、小学校の先生と連携を取るのは前提ですが、そもそもどんな課題があるのか?どう解決していくのか?について、言語聴覚士さんや他の専門家などと一緒に考えることが必要だと思います。

 わざわざ課題を見つけるというわけではないですが、聞こえないことに由来する社会性やコミュニケーションの不足はわかりにくいので、そういう部分がないかをしっかり見る必要はあります。

これは、ずっと気づかずにいて、仕事をしだして発覚して誤解されたレッテルを貼られて苦労することもあるので、事前にわかれば学んでおきたいところです。(礼儀や時間感覚、一般常識など)

知っていたらすぐにわかることもあるし、意識すればすぐに身に付けられることも多いです。

そして勉強ですね。

良く聞かれる言葉で、「9歳の壁」というものがあります。
これは、難聴児に限ったことではなくて、誰にでも当てはまることのようで、小学校4年生ぐらいから勉強がガラッと高度に変わっていくときに、対応できるかどうかという話です。

 この頃、勉強は“学習言語”が中心となっていきます。

 学習言語。
先ほどもお話ししましたが、抽象的なこと、概念的なことですね。
目に見えないこと、電流とか、濃度とか、友情とか、誠実とか、そういった言葉が中心となって勉強が進んでいくので、このあたりの言語力が身に付いていないと、この先の勉強についていけなくなるわけです。

 読み書きの力ともつながりますが、勉強ができなくて学校に行きたくなくなってしまうことはありますので、読み書きと連動して、勉強のベースも作っていきたいところです。

 療育の観点では、これらを任せられる場所を選ぶことになります。
場合によっては複数選ばざるを得ないことになるかもしれませんが、状況次第ですね。

 

療育先の選択肢


では、療育先の選択肢は何があるかといいますと、大きくは以下の4つです。

・通級教室
・難聴特化の放課後等デイサービス
・病院や民間のことばの教室など
・通信教育

 

・通級教室


地域によっては、「言葉の教室」という名称になっていることもありますが、公立の小学校が管轄する通級教室ということで捉えてください。

 これは、毎週90分、授業を抜け出て療育をする教室です。
授業を抜けますが、その分の補講は原則ありません。
内容的には療育で、勉強を教えるところではありません。
もちろん、勉強で困っている相談をすれば、相談には乗ってくれるはずですが、基本、勉強をする場所ではありません。

 担当の先生が自分の学校に来てくれる方式や、通級教室のある学校に、こちらから出向く方式があります。
ちなみに、出向く場合、親の送り迎えが必要ですが、自分の学校に通級教室があれば、送り迎えは不要です。
ただし、親は見に来なければいけないと思いますし、見に行った方がいいですね。

 90分なので、授業を2時間分抜けることになります。別の学校に行く場合は、更に移動の時間もあるので、3時間分ぐらい、毎週授業を抜けることになります。
放課後の時間帯もありますが、希望者全員がその枠を取れるわけではありませんし、高学年になれば、6時間目とかぶることはありそうですね。

 国語や算数の時間にはかぶらないよう配慮はあるようですが、1年生は、ほとんど国語と算数の授業なので、どうにもならない場合もありそうです。
国語と算数とはかぶらないにしても、毎週3時間程度授業を抜けてしまうと、その教科の学びはかなり不足することにはなります。

また、この通級教室は、小学校の先生が担当します。
ですので、当然ですが、言語聴覚士さんではありません。
たまたま言語聴覚士の資格を持っている人が先生になって配属されているとかはあるかもしれませんが、かなり稀なケースで、まずないと考えた方がいいと思います。

 これに関しては、言語聴覚士を配置するようなシステムにするべきだと思いますが、現状そうはなっていません。
年に数回勉強会を行ったり、年に1回は言語聴覚士の講座を受けたりなどはあるようですが、専門スキルとしては、やはり不足する感は否めません。

もちろん、資格がなくても、しっかりと療育をできる先生もいるようですが、実際に聞いた話では、全く療育をできていないケースも聞いています。
担当の先生次第で天国と地獄になる現状がありますね。

ここは、スクールカウンセラーのように、言語聴覚士を学校または難聴学級や通級教室に配置できるシステムをぜひ作るべきだと思います。

 

・難聴特化の放課後等デイサービス


これは、地域によるので、近くにないケースの方が多いかもしれませんが、通える場所にあれば、ここで療育ができます。
必ずではないですが、難聴特化であれば、難聴のわかる言語聴覚士がいる可能性が高く、プロとしっかり療育ができます。

 一般の放課後等デイサービスに言語聴覚士がいたり、資格はないけど、家族に難聴児がいて、難聴に理解の深い方がいたりすることもありますが、言語聴覚士でも難聴がわかる言語聴覚士自体が非常に少ないですし、難聴児の家族というだけでは、訓練までできるわけではないので、一般の放課後デイでは、発音練習などの専門的な訓練は難しい可能性が高いと思います。

社会性やコミュニケーション、勉強については対応できるかもしれませんが、難聴を踏まえた対応ができるかどうかは、これも人次第になるかと思います。

放課後デイなら、授業を抜けることもありませんし、難聴のわかる言語聴覚士がいれば安心して任せられます。

 

・病院や民間のことばの教室など


こちらも、難聴のわかる言語聴覚士が対応してくれるはずです。
そもそも、こういう場所では、できる人がいないとやらないはずなので、やっているということは、専門家がいるはずです。

日程なども、土曜や放課後で合わせやすいのではないかとは思いますが、個別に事情は変わってきそうです。

それと、発達教育センターが、相談や、年6回の自立活動なども行っています。

 

・通信教育


これは、デフサポさんがやっているサービスで、他にもあるかもしれませんが、デフサポさんは、言語聴覚士さんと連携してやっているようなので、専門性は高いと思います。
(具体的に内容まで見たことがないので、「思います」という言い方にさせてもらっています)

そして、通信教育なので、もちろん学校の授業とかぶる心配はないですし、通えないということもありません。
ただし、当然ながら料金はかかります。

 ということで、この件、やっと半分近くなので(笑)、残りは、後編でお話しします。

後編はこちらです↓

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