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小学校生活を整える2テーマ(③小学校入学時)後編

小学校生活を整える2テーマは、

A療育をする
B勉強環境を整える

で、前編では、「A療育をする」についてお話ししました。


今回は、後編、「B勉強環境を整える」についてお話しします。

前編に引き続き、選択肢は地域によって事情が違うと思いますので、そこは各地域でご確認ください。


B勉強環境を整える


「勉強環境を整える」
つまり、情報の保障です。

では、情報の保障のために何ができるのかと言いますと、少人数クラスを作ってもらうことです。

情報の保障はツールでも補え、椅子の足に消音剤やテニスボールをつけるのもそうですし、今はITツールも充実して、送信機能付きマイク(ロジャーなど)もあります。
ロジャーが使えない子は、ポケトークmimiなど、音声文字変換アプリが有効です。

値段の問題で買えない方は、学校に相談することをお勧めします。
福岡市では2022年度からロジャー導入の予算を組みましたし、大阪では、もっと以前に助成されていた実績があったはずです。

補聴器や人工内耳の性能も上がりました。
ロジャーのみで言葉をほぼ拾える子もいるでしょうが、そこまでできない子ももちろんいます。

難聴児の多くは、言葉を拾って⇒考えていく流れになるので、聞こえる子に対する授業の進め方では、どうしても、難聴児には言葉が早い場合が多く、ついていくのがきつかったり、聞き取れないケースも出てくるはずです。
大人数の授業では、周りの音もありますし、聞き返しを頻繁にしずらい面もあります。

こういう場合、少人数クラスなら、周りの音も少なく、先生と1対1に近い形でゆっくり話しながら授業ができ、聞き返しもしやすい環境です。
そこまでしなくていい子どもさんもいるかもしれませんが、この環境は難聴児にとって、勉強面では非常に助けになる環境です。

ちなみにうちの娘は両耳90dB以上、補聴器をつけて40dB前後ですが、大人数クラスではロジャーで言葉を聞きとれない時もあるようです。
少人数クラスではロジャーを使わないでも、大体聞き取れているようです。

 

勉強環境を整える選択肢


では、勉強環境を整える選択肢には何があるかと言いますと、

・難聴学級
・他の特別支援学級
・支援員さん

の3つとなります。
もちろん、「ろう学校」も勉強環境を整える選択肢になるので、地域の小学校でどうしても整えられない場合、ろう学校も選択肢として考える必要が出てきます。

 

・難聴学級


これは、特別支援学級の中で、難聴に特化したクラスです。
確か、MAX8人だったと思います。
これを超えたら2クラスになります。

 自分の通う学校になければ、校区外の設置している学校に通うこともできますが、親の送り迎えが必須になります。
帰りは、放課後デイを利用すれば18時ぐらいに迎えに行けばすむようになりますが、朝は必ず送る必要があります。

 また、新設申請もできます。
これは、一人でも申請できます。
基本、申請されたら、新設しなければいけないことになっているようですが、どうしても部屋がないとか、先生が確保できなかったとかになると、新設できない可能性もあります。
あと、もちろん、予算が取れていないと難しいので、年中の2月ぐらいには新設希望を出すことをお勧めします。

難聴学級の目的は、少人数クラスで、主に国語や算数をしっかりと身につけていくことです。
また、社会性を身につけていくのにも向いています。
人数が少ないので、目が行き届いて課題が見えやすく、解決に向けた動きが取りやすくなります。

 支援級に来る先生は、難聴がわかる先生はほぼいませんが、特別支援教育を志している先生なので、かなり親身になってくれる先生が多いです。
うちも、めちゃくちゃ親身になってくれるし、難聴を学ぼうとすごく動いてくれています。
勉強もしっかり見てくれ、国語と算数に関しては、通常クラスより早い時もあったようです。(もちろん理解した上で早く進んでいます)
うちは新設1年目で、同学年2人だけなので、進みやすいようですね。

社会性に関しても、きめ細かく見てもらえるし、家で見つけた課題について共有すれば、学校でもっしっかり見てくれますし、学校での課題もしっかり共有してくれます。(もちろん先生にもよるでしょうが)

また、難聴学級では、基本、療育はありませんが、「自立」という時間があって、そこで療育的なこともできます。
もちろん先生は言語聴覚士ではありませんが、意欲的な先生なら、専門家に師事するなどして、いろんな動きをしてくれます。

うちの先生も、独自に動いて言語聴覚専攻の教授と連絡をとり、いろいろ教えてもらい、娘の苦手な「が」の発音練習をやったり、音の認識のためのクイズで何の音か確認したりしています。
この音の確認はすごく良かったです。

 娘は、車のクラクションの音がわかりませんでした。
確かに、クラクションを鳴らされたことはなかったような気がします。
車の音は、都度、「これが車の音よ」と教えてましたが、クラクションは教えてませんでした。
これに気づけたのは、本当に有難かったです。

 また、難聴学級ができることで、難聴に対する配慮については、かなり考えてもらえる状況になります。つまり、配慮のお願いはしやすくなり、受入れてもらいやすくなります。
もちろん、周りの子どもたちも意識することが多くなるので、難聴理解は進むと感じています。

 このように、勉強や社会性を身に付けたり、理解してもらいやすくする面では非常に素晴らしいのが難聴学級です。

 ただ、懸念事項は、新設すると1人になる可能性が高く、子どもが嫌がるケースがあるのと、聞こえる子と接する時間が少し減ることです。
ただ、減るとはいえ、授業も1/3以上は確実に通常クラスでありますし、休み時間もあるし、登下校時もありますので、ここはそれほど気にしなくてもいいかとは思います。

 しかし、1人クラスになるのは、やはり子どもによっては嫌がることはありますね。
友達と離れるのが嫌だという場合が多いようですが、完全に離れるわけではありません。
休み時間は一緒に遊べますし、授業も1/3以上は確実に一緒にできます。

うちの娘の場合、保育園の友達が一人もいない学校に行くことになったので、そこは全く問題ではなかったんですけど、保育園や幼稚園の友達と一緒の場合は、嫌がることはあるかもしれません。
もちろん、友達がいなくても、1人のクラスは嫌だとなる場合もあるかもしれませんね。

メリットは大きいのですが、選ぶとして、子どもが嫌がったら、このあたりを子どもがどう納得するかが大切だと思います。

 

・他の特別支援学級


地域によって様々でしょうが、例えば福岡市は、知的のクラスはほとんどの学校にあります。
難聴学級は、全国的に少ないので、新設できない場合、難聴以外の特別支援学級に入ることもできます。

ただ、特別支援学級は、障がいの特性にあったクラスになっているので、例えば知的のクラスであれば、知的に特化したカリキュラムで行われます。
当然のことですが、このカリキュラムは難聴の子にとっては不要なものです。

また、知的のクラスの場合は、授業の進みも知的の子に合わせた進み方になるので、難聴の子にとっては、進みが遅くなる可能性があります。
勉強環境を整えるために選ぶ支援級ですが、これでは本末転倒になります。

もし、自分の学年が、本人1人なら、先生さえ対応できれば少人数クラスで本人の理解度に合わせて手厚く進めることもできますが、かなり条件が整わないと、子どもにとって良い環境を作りづらいと言えます。

ただし、特別支援学級は、年度途中でも入ることができます。
なので、通常クラスのみで過ごしていて、どうしても勉強についていけなくなったとなれば、利用を検討してみるのも一つです。
まあ、かなり条件が整わないと使いづらいのですが、通常クラスでうまくいってないんであれば、緊急避難としてはアリかもしれません。

 

・支援員さん


少人数クラスが利用できないときに、勉強環境を整えるとしたら、支援員さんをつけてもらい、聞こえなかったときに、先生の言葉を教えてもらうといった方法が一つあります。

しかし、地域で状況は異なるでしょうが、福岡市では、支援員さんがあまりいないらしく、手配するのも難しい状況のようです。
このような状況なので、2人を超えて配置できなかったり、いろんな制約があります。

あと、僕が実際に見た支援員さんは、理科の実験を子どもに代わって支援員がやったりしていまして・・・
これが稀に見る人ならいいのですが、かなりの確率でいたら困りますし、これも選べるわけじゃないのでなかなか難しいところですね。

 

療育と勉強環境は、その組み合わせが限定される


さあ、以上の選択肢から、療育と勉強環境をそれぞれ選んでいくわけですが、この組合せが、ある程度限定されてしまいます。

このような特別支援学級などを利用する場合、就学相談というものを受けて、市側が割り振りして保護者と意思確認して決めていくのですが、
難聴学級、他の特別支援学級、通級教室のうち、一つしか選べないのです。

上図で説明しますと、✔をつけたものの内、一つしか選べません。
つまり、療育か、勉強環境か、どちらかしか選べないということになるのです。

 これは、極めておかしなシステムだと思ってまして、なぜ、療育と勉強環境という全く別のテーマをどちらかしか選べないなんてことになっているのか?

 だってですね、これは、「住む場所を取りますか?食べ物を取りますか?」って言われてるのと同じだと思うんです。
どっちも必要ですよね?

 このシステムを運用してる人たちは、誰もおかしいと思わなかったのか・・・
ちなみに、就学相談で僕は指摘しましたけど、全くピンと来てませんでしたので、おかしいと思う人はいなかったんでしょうね・・・

 また、東京は、地域の小学校では、現在、通級教室しか選択肢がないようです。
じゃあ、勉強環境をどうしてるんだ?と思いましたが、東京はろう学校が多いらしく、手話を使わない学校があったりもするようですし、中度前後の難聴の子たちが多い気がすると現場での感覚も聞いたことがあります。
おそらく、勉強環境を整えるために、ろう学校を選んでいる人もいるんだろうと思います。

そして、自宅近くにろう学校が一杯あるという話も聞いたことがあるので、地域の中で学校に行けている子も多いのかもしれません。(そうではないところもあるかもですが)

 地域の小学校の中に難聴学級がある意義もあるのですが、この話は別の機会にしたいと思います。

 というわけで、話を戻しますと、
勉強環境で、難聴学級か他の特別支援学級を選択すれば、
療育は、難聴特化放課後等デイサービスか、病院や民間の言葉の教室か、通信教育かになります。

 療育で、通級教室を選択すれば、
勉強環境は、支援員さんしか方法がないのが現状ですが、支援員さんをつけられない場合もあります。

 あとは、ツールのサポートですね。
これは、選択にかかわらずできます。
通信機能付きマイクが使えるなら使う。
音声文字変換アプリで、前に字幕がでるようなシステムがもし常備されるようになれば、高学年ぐらいからは使えそうですね。

まあいずれにしても、今のところ、通級を取ると、勉強環境の整備が難しいというところです。
(もし、他の方法に心当たりのある方は教えてください)

 いろいろ制約はありますが、このような組み合わせで選択していきます。

 

C聴力管理


そして、これも地域によって変わるでしょうが、地域の小学校を選ぶと、聴力管理をどうするかを考える必要があります。

ろう学校なら、ろう学校で検査もできるし、補聴器のフィッティングもできるはずです。
補聴器のフィッティングは補聴器屋さんが行っていることが多いとは思います。

地域の小学校に行くと、難聴学級や通級教室は、聴力検査の機械を持っているところもあります。通級教室はかなりの確率でもっているはずです。

しかし、聴力を測れない先生もいます。
それは言語聴覚士ではないので、ある意味当然ではあります。
そして、補聴器のフィッティングも、多くの場合、補聴器屋さんが学校に来てやってくれていると思います。
(本当は、難聴のわかる言語聴覚士を市の管轄で雇用して、難聴学級なり通級なりに配置、もしくは巡回できるようにして、その指導の下、検査もフィッティングもできるようにするのが理想ですけどね)

ちなみに、ろう学校を使ってない人は、年に3回、ろう学校の教育相談というものが受けられて、このときに聴力を測定することもできます。
ただし、通級教室を利用していたら使えないなどもあるので、地域ごとに確かめてください。

そして、大学病院などに年に1,2回程度定期的に通っている人も多いと思います。
通っていれば、そこで小学生以降も聴力管理はできます。

ただ、通ってない人もいるでしょうし、大学病院などは、予約して1ヶ月後とかになるのが普通だと思いますので、急に聴力が落ちたようですぐに調べたいというときにはなかなか使いづらいかと思います。

なので、かかりつけ医のようにすぐに聴力検査ができるところがあるに越したことはないと思います。

小学生になれば、裸耳の検査は、町の耳鼻科でできると思います。
ヘッドホンをつけての検査ですね。

ただ、補聴器をつけての検査では、ヘッドホンを使えないので、専用の機器を使って、本人の様子を見て検査していくことになります。
小学校低学年は、それほど細かいことを言えないので、検査する側が判断できるスキルが必要になってきます。
町の耳鼻科ではできるところはほとんどありません。
(できるところももちろんあるでしょうが少ないはずです)

補聴器屋さんは、「検査できますよ」という方もいますが、誠実な補聴器屋さんは、
「補聴器店で“測定”はできますが、“検査”はできません」という言い方をされます。

やはり、言語聴覚士という専門家にしっかり見てもらえる体制は必要です。

そういう意味では、ろう学校や通級教室などで聴力を測れたとしても、やっぱりなじみの言語聴覚士さんを作れるに越したことはないなと思います。
大学病院でももちろんいいのですが、欲を言えば、何かあった時にすぐに見てもらえる人もいれば理想かなと思います。

 

まとめ


というわけで、小学校の進路選択は、
3つの基本前提で地域の小学校か、ろう学校を選びます。

そして、地域の小学校を選んだら、
療育先はどこにするか?
勉強環境はどう整えるか?

を選びます。

この選択肢によっては、ろう学校を選ぶことがベターとなることもあります。
(ろう学校にもいろいろあるので、ろう学校=手話メインというわけではありません)

そして、地域の小学校を選んだら、「聴力管理」をどうするかも考えます。

 地域によっては、なかなか2テーマとも選べないことがあるかもしれません。
でも、時間は待ってくれませんので、何かを選ぶ必要があります。

 時間がある方は、年少ぐらいから、どうするかを落ち着いて考えてみてください。
この時期、家族が増えて、引っ越しを考える人も出てくると思いますが、最適な選択ができる場所を考えての引っ越しもできます。

時間がなければ、現状でベターな選択をし、できるだけのフォローをしたり、次年度以降どうするかを考えて動いていってください。

ちなみに、今選択しているものを変える場合、7月の就学相談を受ける必要があります。
そして変わるのは次年度4月からです。
ですので、早目早目に動いていくことが大切です。

選択肢がいろいろあり、文章に書いてあるだけだとなかなかわかりづらいと思いますので、何かご質問などあれば、どなたでもお気軽にご連絡ください。

もしご要望があれば、オンラインで1時間程度講座もできますので、よかったらお気軽にご相談ください。(1人でもスケジュールさえ合えば実施できます)

地域によって選択肢は変わってくるでしょうが、考え方はどなたでも使えるものです。
ベストはなかなか難しくても、ベターは目指せます。
ぜひ、この考え方でベターを目指してもらえればと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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