進路選択3つの基本前提(②幼稚園入園時期)
新生児聴覚スクリーニング検査で難聴がわかったときに、最初の選択がありますが、次の針路選択は、幼稚園入園時期です。
ここでは、一般に言う「進路選択」となります。
学校を選ぶという“進路”ですね。
もちろん、保育園に既に行っている人もいるはずですが、この時期に、ろう学校の幼稚部が始まりますので、ここに行くかどうかという選択が現れるというわけです。
なぜろう学校に行くのか?
大体、こういった目的となります。
そして、難聴がわかる時期は、誰もが0歳児ではありませんので、未就学児の時期に難聴がわかったとすると、ろう学校の幼稚部に行くかどうかを考える必要がありますので、針路選択の全体像の図の中の①難聴がわかったときと②幼稚園入園時期の選択を、2つ同時にする場合もあるかもしれません。
ろう学校の幼稚部に行くか、
一般の幼稚園か保育園に行くか。
一般の幼保園に行くとすると、+療育をする場所も考える必要があります。
一般的には療育センターがありますが、大きな病院や、大学などで療育をしているところもあります。
これは地域によって異なるので、各地域ごとの事情に合わせて考えてもらえればと思います。
もしくは、幼稚園などに行かないという選択肢もありますが、その場合も、療育は必ず受けた方がいいと思います。日本手話のサポートなども含めてですね。
ちなみに、ろう学校の幼稚部は、療育もできる場所です。
ただし、療育に関しては学校ごとの差は激しいように思います。
基本は幼稚園の先生なので、言語聴覚士はいない場合ももちろんあります。
そして、言語聴覚士ではなくても、しっかり療育ができる先生もいます。
そのあたりの見極めは難しいでしょうが、在籍している親御さんに、どんなことをしているか聞いたり、実際に見学に行ったりして確かめてください。
ということで、
大きくは、この2つのどちらを選ぶかを考えることになります。
では、どうやって選べばいいのか?
それが、進路選択の3つの基本前提です。
1.母語を何にするか?
難聴と診断されたときにも考えましたが、ここでも改めて考えます。
と言いますのが、当たり前ですが、子どもの母語を使う学校に行く必要があるからです。
日本語を母語にするのか?
手話を母語にするのか?
まずは、この2つを考えます。
この時期、子どもの意思確認はなかなかに難しいと思います。
もちろん、日本語か手話かの話や、ろう学校に行くか、一般の幼保園に行くかなどの話は、子どもとする必要はあります。
しかしながら、総合的な判断力までは当然この時期の子どもにはありませんので、この時期の最終決定者は、やはり親(保護者)となります。
つまり、「母語を何にするか」については、親(保護者)の希望と言えるでしょう。
親(保護者)として、子どもにどんな道を歩んでほしいのか?
まずは、親(保護者)として子どもの未来と、未来を見据えた今を考えて、どちらを選んだ方がよりよく生きられるかを想像してください。
これは、100人100通りの答えがあります。
そして、手話か日本語かについては、当然どちらがいいとか悪いとかはありません。
考え方については、母語を何にするか?(①難聴とわかった時)をご参照ください。
2.日本語力が育っているか?(育ちそうか?)
2つ目の基本前提は、日本語力が育っているか?(育ちそうか?)です。
これは、母語を日本語にしたいと思ったときに考えることです。
もちろん、手話を選んでも日本語については勉強する必要がありますが、進路選択をする上では、母語を日本語にしたい場合、日本語力が育っているか、育ちそうかを見極める必要があります。
例えば、日本語を母語にしたいと思っても、聴覚を使えない場合があります。
聴神経がないという場合もありますし、難聴だとわかるのが遅くなって、重度難聴の場合は、聴覚を使うことが極めて難しい場合もあります。
聴覚を使えないと、いくら母語を日本語にしたいと思っても、それは無理な話となります。
読み書きは勉強できますが、音声でのコミュニケーションは難しくなるので、その場合は、手話を母語とした方がQOLは高まるのではないかと思います。
QOL:生活の質、人生の質ですね。
もちろん、これも考え方は様々なので、僕の考え方を押し付けるつもりはありませんが、冷静に状況を整理して考えてもらえればと思います。
ですので、日本語力を身につけるための聴覚が育っているか?育ちそうか?
を、言語聴覚士の方と相談し、判断してください。
ここは、素人では判断できませんので、専門家の方と一緒に考えてください。
3.子どもに合っているか?
最後、3つ目が子どもに合っているか?です。
これも非常に重要です。
ここは、子どもの様子で見極めます。
母語を何にするかは、まずは親(保護者)の希望で考えました。
これに関しては、子どもが総合的には判断できないからです。
ただ、その言語を使ってみて、子どもが過ごしやすいかどうかは非常に大切で、それは、その言語を使っている環境で、子どもが活き活きと動けているかどうかで確かめることができます。
これは、僕の身の回りで実際に経験したことですが、
非常に聴覚をうまく使えていて、発音もうまい、歌もうまく歌っているという難聴児がいました。
ところが、聴覚を使う療育の場では、なかなか自分を表現できなくなっていました。
それで、試しに手話を使う環境に行ったところ、その子は、当時手話をほとんど知らなかったにもかかわらず、明らかに様子が違って、活き活きと動いていたとのことでした。
手話と日本語、どちらがいいとか悪いとかはないと僕は思っています。
(ただし、聴力が低ければ、うまく聴覚を使えていたとしても、日本語の聞き取り、読み取りは神経を使うのは間違いないですが)
全く聞こえないから手話だ。
聴覚が使えているから日本語だ。
と、画一的に考えることではなく、一人一人に合ったやり方があると思います。
聴覚が使えていても手話がいいという人もいますし、聴覚はほとんど使ってなく、読唇だけで日本語の会話をしているけど、特に手話がなくても困ってないという人もいます。
2歳児に、細かい感覚はわからないでしょうが、その言語をつかう環境での振舞いというのは確実に見ることができますし、そこで、合っているかどうか確かめられることもあります。
もちろん、なかなか振舞いに出ないこともあるかもしれませんが、「子どもに合っているか?」という視点で子どもを見れば、何らか見えてくるものはあると思います。
自分の希望は一旦脇に置いて、子どもが活き活きと動けるのはどちらか?という部分を見極めてください。
ですので、一度、今いる環境と違う環境に子どもを連れていってみることも良い方法です。
特になかなか自分を表現できてないなと思うときなどは絶対におススメですし、今現在順調でも、1回経験して確かめると、より確実な選択になっていくと思います。
3つの基本前提を考え、総合的に判断する
3つの基本前提をそれぞれ考えて、総合的に判断します。
ここで判断するのは、以上児の期間(3~5歳児期間)、どこで、どのように言語力を含め、人として成長していってほしいか?です。
ちなみに言語力とは、日本語力、手話力、どちらのことも言っています。
これは、例えばこんな感じで考えるという事例を出してみたいと思います。
例えばの考え方の例を出しましたが、もちろん、100人100通りの考え方があります。
このような感じで、小学校入学までの3年間で、何を身に付け、どのように成長していってほしいかを考えてみてください。
3つの基本前提を考えて出した方向性を満たせる学校と療育方法を探す
さあ、3つの基本前提から総合的に考えて、小学校入学までの3年間で、何を身に付け、どのように成長していってほしいかを考えました。
これに基づき、学校を選ぶわけですが、
手話ならろう学校、日本語なら一般の幼保園と、必ずしもなるわけではありません。
実は、ろう学校でも全く手話を使ってない学校もありますし、療育センターで、手話を取り入れているところもあると思います。(確認はできていません)
それぞれの地域で、特徴があると思いますので、地域の施設の状況をまずはしっかり調べてみてください。
特に、引っ越すときは要注意です。
今までの地域でのことと、引っ越し先は、全く違うシステムということもあります。
なので、ろう学校は手話、療育センターは聴覚活用などと決めつけずに、まずは話を聞いて、見学することをお勧めします。
(今はなかなか見学できないかもしれませんが)
進路選択の3つの基本前提を考えて、小学校までの3年間で身に付けたいことを出したら、それができる学校を調べて選びます。
日本語力を高めたい場合、状況によりますが、
ろう学校幼稚部は平日毎日あるので、そこで重点的に日本語力を高めるという方法もあります。
ろう学校は、手話メインのところが多いでしょうが、日本語もしっかりやるところが多いはずです。
ただ、ろう学校幼稚部には言語聴覚士さんはいない可能性があります。
一方、療育センターは、言語聴覚士さんがいるはずです。
ですので、療育センターで日本語力を高めるのも一つの方法です。
頻度よりも、質の高いものをしっかりと積み重ねることができると思います。
もちろん、療育センターにはよるでしょうが。
そして、デフファミリーで、将来的に日本語でのコミュニケーションが取れるようにと考えているのであれば、療育センターで学ぶのも一つの方法です。
デフファミリーであれば、発音はなかなか教えられません。
そこを身に付けたいのであれば、やはりプロの言語聴覚士が必要です。
もちろん、ろう学校幼稚部に言語聴覚士がいればそちらの方がより良いでしょう。
手話に切り替えていくのであれば、手話をメインにしている学校を選びます。
ろう学校は比較的手話メインのところが多いと思いますが、使わないところもあります。
療育センターで、手話を使うところもあると思います。
そして、地域によっては、日本手話を学びたいけど、日本手話を使っている学校がないということもあると思います。
そうなると、学校ではなく、協力してもらえるデフファミリーを探すことになるかもしれません。
そちらの方が難しいかもしれませんが、こちらの希望を満たすことができる施設や方法を探してもらえればと思います。
ただ、日本手話をしっかり使っている学校は、現実的にはほとんどないと聞きます。
明晴学園とかぐらいでしょうか。
これに関しては情報がなくすみません。
今はろう学校は、手話もやるけど口話もやるといったスタイルが多いはずなので、口話をするとしたら、日本語対応手話寄りにはどうしてもなりますよね。
手間ではありますが、日本手話、日本語対応手話と、使い分ける方法もあるとは思いますが、これは現実的ではないかもしれませんね。
なので、日本手話を学ぼうと思ったら、ほとんどの人が、デフファミリーさんの力を借りる以外、なかなか方法はないのかなという現状ではあります。
勝手なことを言っているのは重々承知しています。
地域の状況によっては、周りに選択肢がないこともあるはずです。
でも、今はインターネットという環境はあります。
もちろん、リアルに勝るものはないと僕は思ってますが、それでも、オンラインで可能な部分はあります。
もし、どうしても場所に制限があるのであれば、簡単なことではありませんが引っ越しという方法もあります。
探せば、何かが出てくるはずです。
もちろん、僕も及ばずながら手伝います。
僕が知っている情報は少ないですが、ツテはこの7年間でいくつかできました。
できる限りのことは手伝います。
だから、最善の選択ができるよう、探してみてください。
お気軽に、言葉のかけはしにも相談してください。
うちではなくても、身近な人で頼める人がいるなら、聞いてみてください。
子どものためにも、ぜひ、探して、頼んでみてください。
ちなみに、こちらでも難聴関連の情報を集めてくれています。
ほっとりんく↓
まとめ
難聴というものは、なかなか全体像が見えていません。
だから、全体像を表す取り組みを僕はしているわけですが、なかなか全体像がわからないので、そのときに提案された内容、その時にたまたま調べた情報で決めてしまったりすることはよくあることです。
そして、周りの人がみんな選んだから、我が家も同じものがいいという理由で選ぶ場合があることも耳にします。
全体像と、針路選択の考え方が示されていないから起こることです。
これほど重要な決定を下す必要のあるものに、考え方や、全体像がどこにもないというのが、僕には信じられないのですが、これは大きな問題だと思っていました。
だから、針路選択をするための考え方を示しました。
考え方なので、どなたにも当てはまると思います。
そして、その根拠は、100人100通りでしょう。
考えて選んだ道こそが子どもにとって望ましい道になり得ます。
暗闇を何となく進むのではなく、
明確な灯りを持って歩いていく方が思い切り進めますし、軌道修正もしやすくなります。
そう、軌道修正もできるのです。
選んだ道が合わなかったということももちろんあります。
でも、だったら軌道修正すればいいだけの話です。
全体像が見えていて、考え方がわかっていれば軌道修正も簡単にできます。
この考え方が針路を考える一助になればと思っています。
最後に、繰り返しになりますが、考え方に沿って考え、出した選択でも、実際に選べるかどうかはわかりません。
日本手話を教えてくれる人がいないとか、デフファミリーで日本語を母語にしたいと思っているけど、発音を教えてくれる人がいないとか、そういった面は出てくるかもしれません。
でも、方向性が明確になれば、何かやれることはあるはずです。
言葉のかけはしも、できる限りお手伝いします。
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