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【0007】えむしたのこと「じゃあな、おまえら。おつえむって言え。」
でも、えむちにはえむちの交友関係があったし、わたしも慣れない外の生活に日々ついていくのに必死で、高校では会話らしい会話を交わさなかった。必要があれば交わしていたのだろうけれど、その必要性をお互い感じなかったのだから仕方がない。でも、偶然にも接点はあった。わたしたちはインターネット上の配信サイトで毎晩、ハンドルネームと二次元の固定キャラクターを設定して、ラジオ番組のような、リスナーとの雑談配信をとっていたのだった。
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ルームシェアをしながら、歌い手活動をしている「明日」と「えむち」。明日の部屋の一輪挿しが枯れ、花瓶の水が澱みはじめた頃、えむちはようやく今回の失踪が普段の気まぐれとはどこか違うのではないかと察する。不安は的中しており、明日の体には常盤色化と呼ばれる異変が生じはじめていた。植物の蔦を模したようなしみが皮膚に広がり、やがて全身を覆ってしまう奇病。一方、えむちはある事件をきっかけに人前で歌うことができなくなっていた。移り変わってゆく、彼女たちの季節を追う物語。
小説「えむしたのこと」
300円
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