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「HIV感染症」、そう言われた僕は

今年8月、ロケ撮影を終えた晩から頭痛と熱を引き起こし、一日中寝込む日々が続いていた。
時期も時期だったので、近くの病院でPCR検査を受け、解熱剤をもらい熱は少し下がったものの、陰性の結果を受けて2日後にはまた熱がではじめた。
頭痛がずっと続くものだから、熱中症かと思い、常に水分を取り休んでいたのだが、状態は一向に良くならず、約2週間続いた8月14日に大きめの病院の予約をなんとか取り(コロナの影響で熱が出てる人の受診がめちゃくちゃに大変、、)、2度目のPCR検査を受け、陰性結果の確認後病状を診てもらった。
その時に先生に言われたのは「髄膜炎」。

髄膜炎とは 頭蓋骨と脳の間には髄膜という膜があり、脳を包み込んで保護する役割を持っている。 この髄膜に細菌やウイルス、結核菌、真菌(カビ)などが感染し、炎症を起こした状態を髄膜炎という。

しかしこの時点で僕の症状は最悪な状態で、頭痛が酷く嘔吐までしており、一人で歩くこともままならない状態だった。病院まではタクシーやバスに乗って周りの人に迷惑をかけたら大変だと思い、自転車で30分かけて来ていたものの、また自転車に乗って家に帰れる状態ではなかった。
意識が朦朧としている中、先生から入院していってもいいと言われたので、僕はそのまま入院することになった。
髄膜炎は、髄膜に細菌やウイルスが感染することで引き起こすと言われているので、3度目の(きっと精密なやつ)PCR検査を受け、3日間ほど厳重な病室に隔離された。これはコロナ感染者だった場合、他の患者や看護師、先生にうつさない為だろう。
3度目の検査でも陰性が出たのだが、翌日担当の先生が部屋に来るなり僕にこんな質問をしてきた。

こんな質問をして申し訳ないのですが、最後に性行為をしたのはいつですか?」「男性との関係を持たれてますか?

この質問の答えを返すよりも先に、僕は自分がHIVに感染したことを悟った
部屋を移し、血液検査の結果を一通り見せられ、HIV感染の値が異常値を出していた。それを見ている間も、先生が説明をしている際も僕は冷静を保ちながらも、ほぼ放心状態だった。
髄膜炎は、HIVウイルスに感染すると免疫力が一気に下がり、インフルエンザのような症状を起こす初期症状中(初期症状に気づかずHIVに感染していることに気付けない人もいる)に引き起こしてしまったようだ。
以前、ウェブメディアsoarにてHIV感染者で、当事者としてHIVに関する偏見や間違ったイメージを払拭するために活動されている奥井裕斗さんのコラム記事の撮影を担当したことがあり、「HIV=死の病気」ではないことは理解していた。だからきっと、知識が全くない人よりかは、すぐに自分が感染者であることを受け止められただろう。しかし想像以上に自分がHIV感染者になったという事実はショックが大きかった。

僕は今まで厨二っぽくて恥ずかしいが、本気で不死身だと思っていた。車に轢かれようが、ビルから落ちようが、100歳を迎えようが、生き続けていると思っていた。そのくらい、自分の死がリアルではなかったのだ。
パソコンの画面に映し出された異常値を目にし、「あなたはHIVに感染しています」と言われ、初めて「いつか死ぬんだ」と感じた。
もちろん、治療をしっかり行えば、治りはしないが、エイズを引き起こすことはほぼないくらいに、医療は発展している。

エイズとは HIVがTリンパ球やマクロファージ(CD4陽性細胞)などに感染した結果、これらの細胞の中でHIVが増殖します。このため、免疫に大切なこれらの細胞が体の中から徐々に減っていき、普段は感染しない病原体にも感染しやすくなり、さまざまな病気を発症します。この病気の状態をエイズ(AIDS:Acquired Immuno-DeficiencySyndrome、後天性免疫不全症候群)と言います。代表的な23の疾患が決められており、これらを発症した時点でエイズと診断されます。(HIV検査・相談マップより)

感染宣告を受けた夜は、親や友達に申し訳なく、恥ずかしく、涙が止まらなかった。自分の体を守れなかったことが悔しくてたまらなく、一晩中ベッドの中で謝り続けた。
「まだ23歳なのに」「恋人一生出来ないわ」「親が育ててくれた体なのに」「医療費めちゃくちゃ高いんだよね」「生きたい」
色んな言葉が頭を過ぎった。

ありがたいことに、母親が僕の病状を見てすぐにHIVかもしれないと家族に話してくれていたおかげで、母親に電話をした時は「そうだと思って構えていたよ。」と力強く受け止めてくれた。その言葉に尚申し訳なさを感じたよ。

ひとまず、僕が入院していた病院はHIVの専門科がないので、別の病院を紹介してもらい、熱が下がった段階で退院して、今は国立国際医療研究センター病院に通院している。(また別の記事でHIV治療に関しては詳しく書こうかな。医療費、アホ高いんよ。)
家族や友達にたくさんのサポートを受けながら、精神的にも今では自分がHIV感染者であることをおおよそ受け入れている。薬の治療が始まれば、また一層実感するのだろう。

僕がこうして自分がHIV感染者であることを公表するのかというと、HIVにはまだまだ間違ったイメージがある。それが原因で差別や偏見が起こりうるからだ。
僕自身、HIV感染を聞いた時に、「じゃあもうセックスできないの!?」ってなったけど、薬をしっかり飲んでいれば、セックスだってできる。汗や唾液で感染することもないから、みんなと運動だってできるし、食事にだって行ける。知識をつけることで、不安は和らぐし、正しい向き合い方ができるんだ。僕のことを知ってくれてる人たちには少しでもHIVの正しい知識を知ってほしい。それが、あなた自身を守ることでもあるから。

そしてもう一つ。
僕はいつ誰からHIVウイルスをもらったのか分かっている。その人はデーティングアプリで会った人だが、名前も知らないし、普段何の仕事をしているのかも知らない。セックスをする際にコンドームを付けなかったことに対して、僕はNOが言えなかった。同意を得るよりも先に挿れられていた。もちろんその時点で「やめて」と言うこともできただろう。だけど僕は言えなかった。僕が一番苦しんでいることはこれだ。僕も望んだ上でセックスはしたが、コンドームを付けないでセックスすることは全く望んでいなかった。被害者ぶりたいわけではないし、僕が断る権利を使わなかった"せい"にすることもできる。僕は未だに自分がNOを言わなかったことを責め続けているし、同意を求めてこなかった/コンドームを付けずにしてきたあの人を恨んでいる。「生でヤったのが悪いんじゃん」「気をつけなきゃダメじゃん」って言われることがどれだけ辛いか。わかってるよ。全部望んでなんかいなかった。

性病はHIVだけではない。ほとんどの性病が治療すれば治るが、HIVのように一生治らないものもある。セックスに関わる相手や自分が傷つかないように、常に自分が加害者/被害者になる可能性があるということを心に置いてほしい。難しいかもしれないけど、僕も少しずつ勉強したり、話を聞いたりして、一緒に学んでいきたいなって思ってる。いつか自分のことも、相手のことも責めずに過ごせる日が来ると信じてるから。

めちゃくちゃにまとまってないnoteになってしまったけど、正直僕の頭の中もこのくらいにしかまとまってないの。まだ治療も始まってないし、治療費の問題もあるし、いろいろと始まったばかりすぎて僕自身の知識も追いついていない。だからひとまず、「僕はHIV感染者であり、変わらずこてつだよ」ってことだけ知っておいてくれたら嬉しいな。

HIVについては今後もいろんな話をしていきたいなと思っているので、読んでくれたら嬉しいです。今回はこのくらいで。

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