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読書日記(20240418)〜「ぼくらの七日間戦争」 追悼・宗田理さん

宗田理さんの訃報を知った。
宗田理さんが死去 作家、「ぼくらの七日間戦争」:日本経済新聞

中学時代のバイブルの一つで、本当に面白かった。
小難しいというか、説教くさい本ばっかり置いてある中高の図書館で、いつも貸出中だったシリーズだった。夢中になって、気がつくと高校時代までシリーズが出ると買っていた。

95歳でも最新刊の「ぼくら」

13歳だった私は、この「ぼくらシリーズ」に夢中だった。
中学校の男子全員が姿を消し、廃工場に立てこもって「解放区」と称し、大人たちへの反乱を起こす、というストーリーだ。

ちょうど反抗期に突入し、「大人なんて汚い」「テストの成績なんてクソなのに、どうせ大人はそれしか見てないんでしょ」という気持ちが現れ始めた極々フツーの(単純な)中学生(私)には、ワクワクの塊だった。

今、手元にある「七日間戦争」には、「先公(センコウ)」(もう死語か?)とか「ポリ公」とかの当時の大人が目をひそめそうな言葉がいっぱいある。
でも、書いているのは55歳のオジサン(宗田さん)だった。眉をひそめる大人の一味。なぜ、そんなことが可能だったんだろう。

子どもの心をつかみ続けたのだろう。
そして、なぜ95歳になるまで、ずっと描き続けられたんだろうか。

この作品が本当にあるのかな、と思うのは、中学校のある「クラス男子全員」が工場に立てこもった、ということだった。ハブにされる男子はいない。スクールカーストなんて言葉もなかった。

すでに偏差値競争が凄まじく、イジメも(今と形は違うけど)あっただろう1985年の話だけど、大人対子ども の構図はあっても、陰湿さはない。

「七日間戦争」のなかに出てくる中学生の一人は「全共闘」出身の両親に育てられている。クラスメイトの一人の親は、「全共闘出身の親に育てられた子どもが我が子を扇動した、この人たちはゲバ棒を持って暴れて警察に逮捕されているんだ」と教師に訴える。受験の結果を気にするママだ。

それも、我が子を守りたい母親の愛情なんだろう。

しかし、その声を聞いた子どもたちは、「誰に扇動もされてない。ただ教師の規則に俺たちはうんざりしただけなんだ」と答える。

「保守的な大人」を見透かす子ども、というシンプルすぎる構図ではあるけど、ある意味でこれはこれで健全だなあ、と思う。

SNSにあふれる陰湿なやりとりや、スクールカーストなんかより、ずっとマシだ・・・ と思うのは、私が古いんだろうか。
それでも、今の子どもたちもこの本を読んでいる、というのはどこかで、七日間戦争のような世界を求めているからなのだろうか。

「大人」に対する反抗は、世代を超えて変わらない何か。
大人はいつか、そのことを忘れてしまう。宗田さんは、ずっとその目を持っていた稀有な大人なのかもしれない。ご冥福をお祈りします。





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