#47 とってもむずかしい
さして興味のない異性からアプローチされたときの対応ほど人を困らせるものはないだろう。
そんな経験をたくさんしてきた高校時代の友人から久しぶりに連絡があった。
「付き合いたくない男子からご飯に誘われて困っている」
平たく言うとそんな内容の相談だ。
今日も世の中にはドッキドキで異性を何かに誘う人と、冷静に事を鎮めようとする人がいっぱい。とんでもない温度差で。
そう思うとなんだか滑稽だ。
でもアタックする側はそんな事情は知らずに突進してくる。
壁にぶち当たって砕けてきた経験ばっかりの私には痛いほどその頭の悪さが身に染みる。
嫌とははっきり言いにくい日本人の性格のせいか、もしかしたら、、、?みたいな希望的観測による事故が起きやすい。
今回もそんな事故に繋がりそうな一例だろう。
彼女ははっきりと断るのは苦手で誰にでも優しいタイプの人だったので、昔から良くも悪くもモテていた。
高校の頃は何かを勘違いした男子に言い寄られそうになったら部活の仲間がアルソックとして守ってくれていたが、大学生になるとそれがなくなり、危ない人に言い寄られた経験談を彼女が話すたびにヒヤヒヤしている。
前なんか、ジムに通い出したら店長にずっと言い寄られるとかいうありえん体験をしてたのだ。
だから、迷ってるとかならまだしも、好きでもない人の誘いなんかに乗ったらどんな目に遭うか分からない。
それで彼女はその誘いに関して、
「一回くらい行ってあげた方がいい?それともはっきり恋愛対象として見られないことを伝えたほうがいい?」
と訊いてきた。
私は普段ならまずいろいろと詳細を聞いて一緒に悩んでしまうタチなのだが、今回に関しては絶対行くなと言ってしまった。
一度行くということは少なからず相手に興味があるってことを意思表示していることになるし、気が進まないのにデートに行くのは相手に失礼だと思ったからだ。
せっかく誘ってくれてるし、相手の気持ちを無下にはできないし、一回行って考えればいいよね、、、
その優しさが後に相手をもっと深く傷つけることになることを私は身をもって知っている。
男性っていうのは、気になる相手がデートに来てくれるってだけで超が何個ついても足りないくらい嬉しくて、自分なりにたくさん試行錯誤して、相手を楽しませようと努力します。
その努力を無下にされることの方が何倍もつらい。
来るなら、全力で一緒に楽しみたい。
それは私も、その誘った男性も同じ気持ちであるはずです。
こんなことを彼女に伝えた。
もう長い仲だから、思ったことを正直にぶつけられる。自分の体験と重なってしまって少し熱がこもってしまったが。
その男性とは同じゼミで、断ったら後期から気まずい関係になることも危惧していたようだが、思いっきり気まずくあれ!と伝えた。
ちゃんときっぱり断ったのなら、きっとその男性も踏ん切りがついて気まずさなんか乗り越えて前を向けると思う。
後日連絡がきて、彼女は正式に誘いを断ったらしい。
彼女は断る文章もめちゃめちゃ悩んでいて、どうやったら相手を傷つけないか必死に考えていた。
断る以上、相手が傷つくのは避けられない。
だから必要以上にフォローすること(例えばこれからも友達でいよう)とかはやめたほうがいいかもねとは言っておいた。
だって、友達でいようだなんて言われてもどっちみち気まずくなるし、この先も友達としてやっていけるかどうか決めるのは振られた側であって、振る側ではないのだから。
「友達でいよう」は全然優しくない。
こういう時って、フォローが逆効果だったりして本当に難しいとは思う。
でも彼も心が震える程勇気を振り絞って誘ったんだから、彼女自身が悩み抜いて文章を考えるその誠意がとても大切だと思う。
その返信に彼女はビクビクしていたというが、男性からの返信はとても優しかったようだ。
その男性がどんな見た目でどんな性格かなどは知らないが、誰かにアタックするその情熱だけはこの先どんな結果になろうとも温め続けて欲しいと願っている。
彼女も、好きな人を誘う勇気本当にすごいよねって言っていた。
そして、「言葉だけだと大丈夫そうに見えるけど、裏はキツかったなら申し訳ない」と彼を心配していた。
彼女は誰かの想いに寄り添うことのできる優しい人だなと思う反面、その優しさが誰かを傷つける結果を招くこともあるのが、とってもむずかしいことだと心底感じた。
ただ恋愛は傷つき傷つけるものだと誰かが言っていたし、傷つくことは避けられないんだと思う。
だから彼女も、彼も、溢れる情熱で前を向いて進んで欲しい。
そんなことを感じた今日この頃でした。
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