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緊急事態宣言を乗り切れ!リモート音楽制作テク&機材

皆さん明けましておめでとうございます。作曲家で音楽プロデューサーの齊藤耕太郎です。ここnoteでは僕の音楽活動の裏側を書いていますが、今回は主に、緊急事態宣言直下を前向きに乗り切りたい、そう僕のように考える同世代、ちょい下の世代の方々向けに、僕が前回の緊急事態宣言の間に構築した制作システムを公開します。

安いものではないけれど、費用対効果はめちゃくちゃ高いです。全てを取り入れて欲しいというわけではありません。皆さんの課題に合わせて活かしてもらえれば幸いです。なお、基本的に僕の機材やテクニックについての記事なので、僕の音楽をリファレンスにして読み進めてみてください。

※プロユースのスタジオをお持ちの皆さん向けではありません。あくまで、PCを主軸にしたDTMを主にしている皆さんを対象にした記事です。


最初に

大変ありがたいことに、僕には34歳という音楽家的には決して若すぎはしない年齢になった今も、「教えを乞える先輩や後輩」が沢山います。

これが実は、今回の記事を書いていく上で大切なんです。僕は27歳までサラリーマンとして働き、独立後7年かけて今のテクニックを磨いてきました。サラリーマン時代の職場であった広告会社、博報堂での縁を頼りに、独立1日目からお仕事をいただき、「CM音楽制作のプロ 3軍」として現場で全てを学んできました。

自分の楽曲ではなく、大手クライアントのCMという大きな責任、そして予算が伴う現場が僕の学び舎。クラシック楽器の構造やオーケストレーション、シンセサイザーの基礎からリズムによるグルーヴの妙まで。僕が数年で音楽制作の仕事だけで生計が立てられるようになった背景には「厳しいスケジュール&要求される高いクオリティ」の中で戦い続けている事実がある。

でも別に、それは自分が凄かったわけではないと思うんです。僕は生まれてこの方、ただひたすらに「強烈に人の縁に恵まれている人間」だから。その運だけで名ばかりの音楽のプロして独立し、7年経った今、マーケティング、プランニング領域でのプロフェッショナル経験を以てしても、自分にとって最も誇れる特技は「曲作り、トラックメイク」と言えるようになった。これは紛れもなく、自分1人でここまでやってきたわけではない賜物なんです。


僕が培ってきた知識は、業界内では知らない人はいないCM音楽の巨匠 内山肇さんを筆頭に、彼らが四半世紀以上の数多の仕事で得てきたノウハウを存分に注いでいただいたものと、現代の音楽家としてなくてはならない「セルフプロデュース」のスキルを博報堂というプランニングの天才たちが集う環境での知見を融合した超ハイブリッドな方法論だと自負します。

そこに加え、今僕は20代前半の刺激に溢れる音楽仲間たちが周りに沢山いる。彼らの音楽の捉え方は、僕が先人たちから伝承いただいたものとは全く別の星から降り立ったような視点ばかり。先も話したように僕は、「強烈に人に恵まれた人間」です。時に自分の価値観を大きくひっくり返され、その度に年甲斐なく焦りと嫉妬を覚えつつも(笑)、自分とは全く違う価値観の皆に、本当にいつも勉強させてもらっています。みんな本当にありがとう。


そんな僕が、音楽産業自体を自分の能力を鑑みながら発展させ、かつ偽善者ぶらずに(笑)自分自身のブランドバリューも高めていくならば、僕自身が「橋渡し役」を買って出ようじゃないか。

もちろん僕は、2021年、音楽業界の最前線で戦っています。でも、周囲を見回しても、自分がすごいなぁ、魅力的だなぁ、と思う人たちはライバルではないんです。仲間であって欲しいんです。

僕はちょっとだけ、自分の知名度の割には音楽を仕事として成立させられていて、それで何とか今は食えている。勿論このステージで満足している訳が無い。僕自身が自分の音楽を、自分が思う「正当で妥当なステージで」世界中の沢山の人たちに届けていくためにも、僕の思想に共鳴してくれる仲間と一緒にステージを上がっていきたいです。

そのために、僕自身が100%オススメできる機材をここに公開します。


①まず何より電源

断言します。どんな機材より、まず一番大切なのは音を鳴らす「家」そのもの、もっと噛み砕いて言えば「家の電源環境」です。

音楽を作っていると「どうしても低音が抜けない」「もう一歩音が前に出ない」みたいな悩みをよく耳にします。多くの人がその理由を

プラグインじゃ限界あるからアナログ機材に買い換えよう
楽器や音源が悪いから、もっと太い音のソフトシンセや楽器を買おう
オーディオインターフェースが悪い

と話しているのを見聞きします。それも間違ってないと僕は思う。でも、一番最初にやるべきは、それらを動かしている「電気」そのものの質をあげることなんです。断言してもいいです。実際、僕は今のスタジオに引っ越して数日、壁コンセントに電源を挿して強烈に違和感を覚え、電気工事を行って全く同じ設定で電気を通して、「そうそうこれ!」ってなったばかりです。

電気工事の必要性

僕は賃貸のマンションに住んでいますが、僕がやってもらった元気工事は、不動産会社の方に許可を頂いて行いました。金額は業者の方次第であったり工事の内容にもよりますが、オーディオインターフェースを買うほどの値段はかかりません。そして以前の家では、出るときにも結局復旧しなくて良いとのことで、修繕費もかかりませんでした。オススメですよ。きっと今の機材でも、劇的に音を良くしてくれます。


何をやるか

僕は、エアコンのためについている200Vの電源を100Vに降圧し、ノイズフィルターを使って電源供給しています。

壁コンセントから供給されている電源に比べて、200Vからの降圧電源は低域がバリッと明瞭に聴こえ、結果的に重くなります。そして高域もとんでもなく上に抜けます。EQもコンプも、ちょっとの変化もすぐに気がつけるようになります。この微細な変化の気づきが得られることこそ、自宅で最高音質の音楽を作り上げる第一歩だと僕は思います。

200V電源があれば工事可能

賃貸でも、エアコンの電源にしばしば200Vの電源は使われています。これがある物件ならば、電気工事は可能です。お近くの電気工事業者の方に電話してみてください。何よりまずこれがオススメです。

200Vから電源を引いてくる場合、当然ですが100Vへの変圧器が必要になります。オーディオマニアの方々が色んな議論をされていると思うので、変圧器についても是非検索してみてください。

ちなみに僕は工事とは関係なく、電源系のケーブルなどはマスタリングをしてもらっているDr. SWINGさんに売ってもらいました。SWINGさんはTwitterで最近、超絶的な自宅スタジオ環境を公開しているので是非ご覧あれ。


②同軸モニタースピーカー

電源の次は、やはりスピーカーだと思います。僕が使っているのはこれ。

もうおそらく生産完了しているのでしょう、自社サイトはページが閲覧できませんでした。これもSWINGさんにオススメしてもらって購入し、もう4年目になります。このスピーカーはペアで15万円程度なのに、同軸という機構で、あり得ないほど高低域共に音像がハッキリくっきりと「見え」ます。

僕はその前はEve AudioのSC205を使っていましたが、ミッドレンジ中心にハリがすごいEveと違って、このスピーカーは満遍なく、特に低域の処理を細かく行う上で非常に効果を発揮するスピーカーです。とにかくどの帯域も明瞭に音が視覚化される。このスピーカーを使うようになってから、それまで音の「前後 = コンプレッションと空間処理、歪みなど」「左右 = 定位、ステレオウィズ」しか操れなかった僕が、

ベースやキックの重心を下げる→EQで低域と中域を微細に管理
音にスピード感を出す→ミッドレンジを特定のプラグインEQで処理
裏打ちで飛べるハイハット→聴こえない帯域もハイパスフィルターで処理

などなど、ミキシングやトラックメイクの重心となりうるパートの制作に対して思い通りのポジションとキャラクターを作り込めるようになりました。

日本のポップミュージックは依然として、低域の作り方が海外のトップトラックと比べて非常にナヨナヨとしている曲が散見されます。低音が出るスピーカーで聴いてみてください、一聴瞭然です。「体に来ない」って感覚、ありますよね。それです。

せっかくキックが「低音域」で鳴っていても、Bluetoothスピーカーで腰骨から胸ぐらにかけてエグられるような印象の楽曲はそう多くはありません。これらの要因の一つに、「低域が聴こえないスピーカーをモニターにしている」という可能性は未だ少なくないと僕は感じています。

これを読んでいる方の中には「どうしたら低域を強く出せるのか」という疑問を持っている方がいるかもしれません。答えは簡単です。低域が出せるスピーカーで聴くのです。低音の魔法は数値じゃ調整できません!その点、このPioneerのRM-07は本当にオススメします。

同軸のいいところは、部屋が狭くてもスピーカーの定位を聴きやすくできることです。通常スピーカーを鳴らすにはある程度の奥行きが必要ですが、同軸型の場合文字通り「ニア・フィールド」として配置箇所から耳までの距離が1mほどでも理想的な鳴りを実現できます。

ただし、同軸型は理想的なリスニングポジションがものすごく狭いので、その「点」に耳を置かないと全然違う音を聴くことになるので要注意です。


③最低限のシンセ

僕が音楽を作る上で一番大切にしているのは「楽器の音の力」です。この力を自由自在にコントロールできるようになれば、現代の音楽を作る上での6割はクリアできるんじゃないかとさえ思います。

その中で、時代的に、ほぼ全ての音楽に使われているのがシンセサイザー。一聴してその印象が全くなくても、「低域」を強く感じられたり、「空気感」「抜け感」が気持ちの良い楽曲には必ずシンセサイザーが隠し味で使われていて、実はその「質感」こそが、音楽における美やお洒落さなんです。

例えば僕の仕事で言えば、最近のお気に入りCM音楽。コスメデコルテ。

最近化粧品カウンターでも流れていますね。ありがたい限り。

ピアノとチェロ四重奏を使ったこの楽曲ですが、影の主役は中盤から鳴り続けているシンセベース。とは言っても、おそらくPCで聴いても気が付かないでしょう。その「鳴っているか気が付かない音」こそが、現代の音楽でありモダニズムなんです。

シンセベースをローエンド付近で「ドドドド・・・」とコード弾き16分で鳴らして、本来はピアノと弦で完璧に埋まるミッドレンジをアナログシンセのパッドで微かに埋めて、高域にはピアノに深々とかけたリバーブ&ピンポンディレイをハイパスフィルターして高域のみを残して配置。これを三段、徐々に出てくるように作り込めば、ロングトーンのオーケストレーションでは出てくるはずがないグルーヴが出てくるんです。

平たく言って仕舞えば、僕が「お洒落、美しい」と音楽に評してもらえている秘訣はこれです。楽器の力を作りたい曲ごとに最大限発揮させるから、そうなれるのです。楽器は本当に音楽家の生命線です。

で、じゃあどのシンセ使えば良いのよ、って話なんですが、僕の持ってるシンセを皆さんに揃えたら?って言うのは正直無理がある。何せ、物によってはほぼ手に入らない代物もあるから。その中で、今でも比較的出回っていたり、現行モデルで惚れたものを書いていきます。


Minimoog Voyager & Roland JUNO-106

手間がJUNO、奥がボイジャーです。これら2つを推す理由は、これぞアナログシンセと言う最強の質感を分かりやすく手に入れられる2台だからです。

特にJUNOは、状態の良いものを買えば10万円台で買えます。(2021年1月現在。どんどん値段は上がってる)楽器は値段と音が比例しません。安い(前提で言うけどJUNOの値段は安い方)からと言って悪いわけではないです。僕が〇〇回ローンで買った同社JUPITER-8と比較しても、10万円台前半で手に入れたJUNOが劣るわけじゃありません。

JUNOの良さはその操作性。とにかくシンプルで、シンセで音を作るビギナーの方から玄人まで本当に使い方の幅が広い!そしてそのサウンドはまさにストリートラグジュアリー。僕が好きなファッションブランドで言えば

みたいなポップさとキレの両面を兼ね備えた楽器です。入れるだけで今のファッショナブルなエレクトロトラックに変化します。

一方。

ボイジャーは、Moog社が誇る最強のアナログシンセです。こんなに、一撃で存在を示してくれる「武神」のような楽器を他に知りません。とにかく音が太い。存在感がありすぎて、か細く繊細さを求めるような音楽だと浮いてしまうほど、ザ・野太いアナログシンセです。

このシンセを推す理由は、現代のトラップ・ポップミュージックにおける「ズーン」と沈むサブベースを楽器の力一つで再現できるから。低域を知りたきゃボイジャーを鳴らせ!乱暴に言えばそんな感じ(笑)僕は飛行機が低空飛行で飛び去っていくときに壁が揺れると、「あれ?ボイジャー鳴った?」といつも勘違いを引き起こします(笑)

この楽器の低域は、未処理の状態では量感が過ぎてトラックへの破綻をきたすほど。そんな音を自由に使って作れる低音、良いでしょ?最高ですよ。こっちはまぁまぁ、値段も高いかもですが、探してみてください。中古は出回ってるかと思います。

Sequential Circuits Prophet-5 Rev.4

去年1番びっくりしたこと、それは僕が愛する名機、Prophet-5が現代版となって復活するというニュース!僕は今のところ、ヴィンテージを大切に使っているので手は出しませんが、正直これを今の時代に買える皆さんが本当に羨ましい。だって、現代の楽器だからUSBも使えるし、変な不具合も出にくい。それでこの楽器の持つ、本気の音を使えるだなんて。

僕もまだ出音を聴いていませんが、ウェブで音を聴く限り、めちゃくちゃ良いと思います。値段は5音発音のProphet-5で40万円後半、10音のProphet-10でも50万円前半か・・・僕のヴィンテージ品の買値より安いやんか・・・

Prophet-5の持つ最大の特徴は、鳴らした瞬間の「気品」です。ファンキーで跳ねるベースも最高です。僕の楽曲で言えば、「Cactus」「Ginger」そしてアルバム「VOYAGER」のトップバッター「Salt」のベースも。

粘りとえぐみのある低音がたまらない、とってもグルーヴィな音が出せるシンセ。僕がオススメするまでもなく、名機中の名機です。

また、分かりやすくProphet-5のリードの音を示すとすれば、「Soil」で終始鳴っているシーケンスもそうです。

Prophet-5は、晴れの空より曇り空が似合う楽器だと僕は感じます。Moogが大地、Rolandが空や風、海、KORGは異星な存在。気品の正体は、絵も言われぬ趣であり、その音が加わった瞬間に音楽が纏う上品、上質さ。質感で悩んでいる人は、ローンを覚悟してでも楽器を手に入れてみることをオススメします。仕事道具は仕事で返せば良いし、きっと皆そんな感じで、頑張って道を切り拓いたはず。一緒に頑張りましょう!


Roland JUPITER-Xm

で、最後に、アナログシンセ以外に最近僕が大惚れした一台を。

実はこれ、先日取材の一環でRolandさんからお貸出しいただいたものなんですが、気に入らなければ即ご返却しようとしていた(Rolandさんすみません)ものを試しに今作っているソロアルバムで使用してみたところ、劇的に音楽が華やいで、一気にベタ惚れ。僕は楽器は特に忖度とか一切しませんが、この楽器は名機です。音が一気に「今」になる代物です。

現代の楽器であるがゆえに、僕が持っているJUPITER-8、JUNO-106、SH-101などのアナログシンセの名機だけでなく、JVシリーズやピアノ音源で有名なRDシリーズ(僕もライブの時RD使います)の音源をモデリング、実装したもの。本物の音と比較するというより、80年代のアナログシンセでは出せない音を高品位に形にした、現代のシンセサウンドを実現しています。

機能面でも素晴らしいらしいのですが、それは僕には解説できないので製品サイトを見てみてください。色んな音源を追加実装できるっぽいです。

僕が良いなと思ったのはプラック、パッドあたりです。昔のシンセに比べて操作性が少し複雑なのですが(いまだにオシレーター2のいじり方が僕はわからない 笑)、覚えてくればある程度自由に使えます。プリセットが優秀なので、僕は最新作ではそのまま結構使ってます。

アナログシンセを持っていると、低域〜中低域はアナログで、高域に向けて抜けが欲しい時はJUPITER-Xmを使います。勿論、ソフトシンセに比べたら間違いなくこの楽器の音は豊かで素晴らしいので、コンパクトサイズなJUPITER-Xm、是非試してみてください。


④マイクプリアンプと、マスタリング用コンプ

そして、楽器を使うにも、ミックスする段階で音に倍音などの生命力を加えるためにも、「プロの音」にすべくアナログ機器を導入することを強くオススメします。ここでの手間が、ミックスを劇的に楽にしてくれるんです。

僕の使用機材はこちら

この2台も当初、上述のDr. SWINGさんに機材の指南をいただいた時にオススメ&売ってもらったもの。もう4年くらい使っていますが、僕は散々購入検討した挙句、当面これ以外のプリとコンプはなくて良いかなと思っています。機材が僕の音を作ってくれた、と言っても過言ではないです。

マイクプリは字の如く、元々マイクで録音するときの中継地点役。マイクが良くても、マイクプリがちゃんとしてないと「埋もれない」「豊かな」音は録れません。僕は誤解を恐れずに言えば、現代の音楽にとってマイク以上にマイクプリの方がトラック全体に影響する投資だと思っています。

なぜならば、マイクプリのゲインはPC内部で鳴らした音にも使えるから。僕はピアノ音源は完全にPC内のソフトシンセを使っていますが、ここでの設定とアウトボードを通すことで、唯一無二のKotaroピアノになります。それこそ、Spotifyで130万回以上再生されている、「Right」の質感とか。

僕のミックスにおいて、キックやベースの処理を行う時にも、ゲイン、倍音を司る「VHD」と言われる歪系エフェクトを駆使します。これらを通って、さらに色付けがほとんど無いDangerous Compressor(名前の割にピュアな音なのが笑える)に入り、音楽として洗練され、ステレオ感も整理されて2MIXとしてスピーカーに鳴り響くのです。

マスタリングコンプを使っているのは、ミックスの段階でもマスターコンプはアウトボードに頼るからです。これによって、ステレオが整った状態で書き出せるし、録音にも使える仕様にしておくことで兼任できるんです。

マスタリングコンプは高級なシンセほどの値段がしますが、電源の次に分かりやすく音楽のランクを一つ上に高めてくれるのでオススメです。プラグインのマスターコンプを使った後、歪まない程度に最後にこれを通すだけで質感が一気に変わりますよ!


⑤サミングミキサーと、トランス

さて、ここまでは2019年までにある程度構築した僕のオーディオ環境でしたが、2020年に僕の音は劇的な進化を遂げることになりました。更なるアナログ環境の改善を行ったからです!

サミングミキサーを皆さんはご存知でしょうか。DTMを行う方々にとって、自分の音楽を一気に有機的な「コンソールサウンド」に変えてくれる魔法のアイテムです。僕のセッティングの一番下に鎮座しているのがそれ。

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僕は日本のスタジオメーカー「Cafe Au LabeL(カフェオレーベル)」という方々が作っている「AMATERAS」というシリーズを愛用しています。アウトボードの入り口出口に使われているトランス回路を巧みに使って、安価でアナログの本気の質感を提供しているとっても志あるメーカーです。

サミングミキサーをこの値段で買うのは他のメーカーでは困難だと思います。僕もVintage NeveやらManleyやら色々検討しましたが、先も話したCM音楽の巨匠内山肇さんとアルバム「VOYAGER」を作っていた最中、費用対効果が高いと判断してこちらの購入に踏み切りました。

実は、これを買う前にここの2chライントランスを2台入手しました。

上のルンダール社のトランスはかなり高域特化型のトランスで、ハイハットなどの金物をさらに上に突き抜けさせながら「決して耳が痛くない」という魔法を生み出すのに最適です。

対して僕がサミングミキサーを買うに至ったカーンヒル社のトランスは現行のNeve製品にも搭載されている通り、「低重心、ワイドレンジ、ハイスピード」が魅力。BPMが2ほど上がるような錯覚に至るミッドの鋭さと、普通のスピーカー再生には縦に伸びすぎたローエンドを重心を損なうことなく横に拡げてくれる印象。

これを買って使った瞬間から、僕はミックスの最終段階、Dangerous Compressorを通した後さらに、この2chを通すことで完成としています。

楽曲をアレンジする段階から、僕はPro Tools内の出力で音を聴いていません。録音した音は全てAux出力で各パート毎、具体的には

リード楽器
バッキング楽器
ベース
ドラム
キック & サブベース
Fx

に分けてトラックをまとめて、それぞれをサミングミキサーのステレオ4ch(実質8ch)に振り分けます。サミングミキサー経由で2MIXとなった音源をオーディオインターフェース、僕の場合はApollo 8 Quad(マスタークロックはAntelope Audio)そ経由しスピーカー出力します。つまり、音楽を作る最初から最後まで一切、PC内部で出力された音を聴かないのです。

なぜか。それはまるで、加工食品で出汁を取る感覚に等しい。天然由来の食材と書いてあっても、調理されたものからはホンモノの旨味は出ない。

PCの色付けは凄まじく、音が一気に(言い方が悪いですが)汚染されたような状態に陥るからです。電源に気を遣っている僕のMacですらそう。

Pro Toolsは特に、僕がHDXではなく個人用を使っているからか、DAW内で各トラックを結合するだけで微妙にミッドが痛くなります。だから2MIXをアウトボード経由で書き出した後、変にフェードを書いてアナログの音に傷をつけないように工夫しています。それにより、アナログ本来のワイドレンジなサウンド、高音から低音まで、ラウドなのに痛くない、パワフルでオーガニックな透明感溢れるサウンドになるんです。

AMATERASは使ってみて本当に良質な音楽機材だと感じたので、購入を躊躇っていた方、知らなかった方は是非、ライントランスからチャレンジしてみてください。ちなみに、何度も出てきている内山肇さんは、僕と共作しながらこの話を聴きトランスの有無を音源比較して、速攻買ってました(笑)


最後に

気がつけばまた1万字を超えそうですね・・・

実は先日、制作者だけでなく音楽業務の依頼をしたいと考える依頼者の皆さん宛にもリモートワークにおける音楽制作業務のノウハウを書いていたのですが、制作の話に入る前に長くなりすぎて挫折したんです(笑)制作、しかも制作者向けに書いてもこんな感じなら、絶対に全部書いたら2万5千字くらい書いてたな・・・書籍にできそう(笑)

僕が書いてきたこの文章は、かなり自画自賛に聴こえてしまいそうな部分もありますが、全ての内容は僕が大切にしてきたことを、「音楽制作の世界の中で"特段"音にうるさい、現役で大活躍中の音楽プロデューサーや作曲家の皆さん」に褒めてもらったことをまとめました。

もちろん録音ミックス・マスタリング機材は上を見出したらお金が何億円あっても足りません。みんな、少しでも一音の感動を豊かにしたい一心で、投資対効果なんて考えずに音に情熱とお金を注ぎ込んでいる、もしくはそうなりたい人たちなんだと思っています。僕はその中で、自身が見て聴いて感じてこれた類まれなラッキーな経験を元に、自分自身で使って良かったもので紹介したいものを書きました。クオリティは僕が保証します。


緊急事態宣言、音楽の世界はまたも、大きな壁に向かい合っているのかなと感じます。でも僕はなぜか、以前のように迷いや不安を拭うために音楽を作ろう、というモチベーションではありません。すっかり変わってしまった世の中に対して、「今だから必要な音を作ればいいじゃん」と、誤解を恐れず、言葉を濁さず言えばかつてなく「攻めな」マインドの自分がいます。


耕す男、みたいな名前を両親につけてもらった齊藤耕太郎は、
僕が死に物狂いで手に入れたノウハウや感動をシェアします。
それによって、僕の考えが伝播し、大きな渦になり、
僕だけの想いだったものが別の誰かに伝わり始めたら、
絶対に音楽はもっといい音楽を産み始められる。すなわち
音楽で人を幸せにできる絶対数が増え、幸せや希望は増える。


そう思い、僕自身も常に急死に一生な気持ちで、心身を削って音楽を作っていきます!皆さん、一緒に乗り越えましょう!!


2021.1.12 齊藤 耕太郎 / Kotaro Saito


追伸:

最後まで読んでくれた皆さんへ。今回は音楽制作者の方が読者になりそうなので、せっかくなので僕が年末年始に録音した最強のドラム音源の一部をお裾分けします。僕から皆さんへの「お年玉」です。自由に使ってください。本当はあげたくなかったけど、まぁ、一部なら、いいかと(笑)ホンモノ、マジで凄いですよ。

Roland TR-808
Kick, Snare, Closed & Opened HiHat, Clap

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