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Salt - アルバム「VOYAGER」の産声

皆さんこんにちは。作曲家で音楽プロデューサーの齊藤耕太郎です。音楽活動はKotaro Saito名義で行っています。

前回の記事で、楽曲「Waterfall」を取り上げました。10,000字にも及ぶ壮大なレビューにもかかわらず、初日で5桁PVに到達するほど読んでもらえました。書けば書くほど、熱意って伝わるんだなと改めて思えました。うれしいです。ありがとうございました。


今回はアルバム制作を決める1曲となった「Salt」について書いていこうと思います。この曲にも多くの思い出があります。ぜひ、最後までご覧ください。楽曲について突っ込んだ解説もしています。わかりやすくなるので、是非聴きながら読んでください。

Salt - Kotaro Saito & Hajime Uchiyama


始まりは、緊急事態宣言の翌朝

僕がこの曲を語るにあたって、背景にはコロナ禍における一連の出来事は欠かせません。4月9日(月)に宣言がなされ、いよいよ不要不急な外出はできないなと思っていた頃。ちょうどその頃僕は、1ヶ月延びて完全に油断していた確定申告をやりながら、狂うに狂った2020年の計画をどう修正していくかを考える日々。

翌、4月10日。この頃は不規則な生活が1周して、毎朝3〜4時に目が覚めてしまうおじいちゃんみたいな日々を過ごしていました。確定申告の締め切りはあと数日。でも、なぜかこの日は心がゾワゾワして、早朝起きるなり迷いなく自宅のスタジオスペースに向かい、Pro Toolsを立ち上げてヘッドフォンを装着していました。


楽曲の骨は、キック作り

実はこのときはまだ、6月24日にワンマンライブがしたい、と思っていました。それに向けて、6曲程度のインストEPを用意するつもりでした。踊れる楽曲がいいな、と思ったのか、楽曲を作る最初の行程はキック作りから。


僕の楽曲の大きな特徴は、サンプルパックを使わないこと。

キックなんてなおさら。基本的にはあるタイミングから、僕のセッションには「Kotaro Kick」と僕らが呼ぶ音色があり、そのキックを軸にしてアナログドラムマシンSequential Tempestやローエンド補強のためにMinimoog Voyagerで波形を生成するなどして、楽曲のキャラにあわせて理想のキックを生み出していきます。

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この作業を例えるなら、ラーメン屋さんの秘伝のスープ、みたいな作り方でしょうか(笑)

朝早く起きてしまって、その前の日も寝付けなかった僕は、朝から妙なハイテンションぶりでした。空が明るくなると共に、脳天に直撃する60~110Hzのローエンド成分。自分が気持ちいいキックを目指して、アナログアウトボードを何度も通しながら検証すること1時間ほど。BPM123で4つ打ちしていたキックの1小節に、「踊りたい」と思える瞬間が訪れました。

後述しますが、この曲の一番のこだわりはキックです。ここで作ったキックをさらに、楽曲のセクションによって微妙に音色変化させることでより、巻き込みの強い粘りあるグルーヴを生み出しました。


気品とマッドネスに満ちた、Prophet-5ベース

いつものように僕自身が踊りたいと思えるキックができたところで、次に手を伸ばしたのは僕のサウンドの要であるProphet-5

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言うまでもなく、実機です。その日は3日ほど電源を入れっぱなしにしていたので、非常に調子もよく良い音が鳴っていました。

ベースラインを作るときは、それこそ毎回その場のノリです。この日はどうもF#mの気分だった。キックを鳴らしながらMIDIデータを録音してループしていこうと思い、録音ボタンを押して弾きだした一撃めのベースラインが今のもの。このとき、「キターー」と朝から大声で叫んでしまいました。

だいたい、作っているときに「俺って天才だわ(笑)」と思えたものはうまくいくジンクスがある。今回のベースラインはまさにそれ。細密に波形とモジュレーションをいじり倒して、かなり長めのフレーズを録音して微妙に変化する音色にしています。

キックを鳴らしながら、録れているMIDIデータに沿いベースを鳴らしながらループすること20分ほど。すっかり緊急事態宣言が発令されていることも忘れて、家の中でヘッドフォンをしながら踊り狂っている自分がいました。

時間、午前5時(笑)

僕はお酒が飲めません。飲んでいないのに常に酔っぱらっているようなテンションだと肇さんや周りの仲間には言われています。この日は、一人で朝の5時にノンアルで完璧に宇宙に飛んでいました。起きたばかりだったことを忘れるほどでした。その高揚感を緻密に、でもそのまま楽曲にしたかったので、この「Salt」という曲はキックとシンセベースがかなりシンプルな形で使われています。ベース、たったワンフレーズですからね。この曲のベースは一切コード進行せず、このまま完結させようと直感的に決意しました。


ピアノを弾いた瞬間に降りてきたメインリフ

この曲は、キックとベースの時点で既に「EPにするなら深く体にしみ込ませて踊れる曲にしよう」というイメージがありました。このときまだ、曲名は決まっていませんでした。


僕のピアノフレーズは常に、Garritan社のAbbey Road CFX Concert Grand。もう5年くらいこれしか使っていません。ピアノに関しては中途半端に生を使うよりこれの方が僕の理想の音になります。

こちらも、一瞬でした。キックとベースをいったんオフにして、気持ちを落ち着けて鍵盤に触れた瞬間にイントロのメロディが降ってきました。

あ。奇跡だ。1日に2回も来てしまった。

先ほども言った、自らに対する天才感を2度も感じてしまった。普通、決めになる要素は1曲につき1要素。この曲は、たった1〜2時間で2回訪れた。普通じゃない。こんなにも、作りたくて仕方のない衝動に駆られるのは、何かおかしい。普通じゃない予感を感じた瞬間に降りてきたアイデア。それが


あ、これはアルバムにしなくちゃいけない。

でした。


開始から約1時間半が経過していました。確か、5時半頃。メインのピアノリフが決まったところで一瞬SNSをみたら、肇さんがオンラインなことに気づいた。「肇さん、起きてるじゃん」そう思って、電話をかけたのが5時半(笑)肇さんは60歳にも関わらず超ショートスリーパーなので、この時間に普通に起きていることは割と日常茶飯事。


肇さん!アルバム作りませんか。
世界に希望をもたらすアルバムを。今だから作るべき作品を。


半分寝ぼけていた肇さんでしたが、曲も聴かずに、「そうだね。やろう。やるしかないな。」と言ってくれたので、あとで曲を送るとだけ伝えてまた作業に戻りました。うん、マジで迷惑なやつ(笑)


何の迷いもなく組み上がったトラック

そこから先は、作りたくて仕方がない衝動に駆られている状態だったからあまり覚えてはいないです。ただ、壮大な低音から華々しく天空を舞うようなリードシーケンスに至るまで、Jupiter-8、Juno-106、Prophet-5など僕が所有するありとあらゆる、最高級のシンセサウンドを惜しみなく使ったのはよく覚えています。

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みなさん、シンセと聞くとデジタルな楽器だと思われがちですが、上記の機体たちはどれも電気信号を発振させて音を出す、アナログシンセたち。つまり「生の電気の音」なんです。0か1かのデジタル楽器やソフト音源とは全く別次元の「音が生きている」という実感を出音一発目から強く感じることができる。人間はそんな、人で言う肌触りとか、その人の後ろを漂うオーラや空気感みたいなものを、実は敏感に感じ取れる。この魅力は楽器を鳴らせば伝わることなんです。

今回のアルバム「VOYAGER」はその点において、全曲通じて一切の妥協をしなかった。僕と肇さんが所有する最高級な楽器を贅沢に用いて作った、パワフルなのに人に圧を与えない優しい音がする音楽にできました。その象徴とも言えるのが、この「Salt」じゃないかと思います。

僕は特に、キックとベースラインがメインリフやシーケンスに絡むところがお気に入りです。ハイハットとシーケンスで中高域の裏打が絡み合いながら、ふた回しめでハイハットのキャラクターに16分が追加される所とか、完全にKotaro節、爆発状態。今作「VOYAGER」では全体的に、低音要素と同じくらい高域を司るハイハット・ライドシンバル使いもこだわっています。

ブレイクの使い方に至るまで、ほぼ僕が4月10日に仕上げたデモの段階で今の形ができあがっていた「Salt」。4時間が過ぎる手前くらいで仮ミックスしたものを肇さんに送って、「神が降りたな・・・」と言ってもらったのを今でもよく覚えています。リリース後も、音楽通な方にこの曲がいいとSNSに書いてくれているのを見かけます。楽曲のサイズ感、構成に至るまでシンプルで強い楽曲を目指しているので、本当にうれしいです。


なぜ「Salt」なのか?

話は元に戻りますが、この曲を作っていた日は一月期限が遅れていた確定申告の山場でした。制作しながらあちこちに領収書の束が散らかっている状態。ふと一段落してデスク左側においてあるRoland JD-800の上に、領収書を漸次的に入れてあった袋が。

その袋のお店が、こちら。

伊勢にある、僕がすごく気に入っているお塩のお店。読んでいただければわかるのですが、天皇家への奉納品でもあり、天然由来の非常に体に優しい成分の一品。それをみてピンと来て、「あ、塩はすべての始まりだ」と感じた訳です。たったそれだけの理由で、「Salt」というタイトルに。

伊勢における二見神社の意味

日本屈指のパワースポットであり、僕や肇さんが音楽を作る上でものすごく強い力をいただいている伊勢という存在。楽曲「Reason」はリリース前に外宮にお参りに行ったほどで、マスタリングを行う時は、伊勢でもらったネックレスをかけるなど、その強い波動で楽曲に生命力を与えてもらっている。

そんな伊勢のお詣りにおける、入り口と言われる場所がここ、二見興玉(おきたま)神社です。夫婦岩というふたつの岩が象徴的。

この写真は昨年末の12月17日、前夜に行われた日本の年中行事「月次祭(つきなみのまつり)」に伺ったときのもの。スマホで撮影したものですが、わかりますか?この厳かで、強い力を発する姿。

月次祭に関する詳細はWikiでみてみてください。

ここ二見輿玉神社にお詣りした後、外宮、内宮にお詣りするというのが正式な参拝手順。僕らにとってここで採れるお塩は身体や心を清め、新たな旅に向かう始まりの象徴です。そのイメージが楽曲の世界観にぴたりと重なり、僕も肇さんも「Saltがいいね」と意見が一致しました。


物質的、表層的な価値や情報に踊らされがちなコロナ禍。僕も例外なく、様々な意見やニュースに心を痛め、何をよりどころにしていいかわからなくなったこともあります。

そんなとき、伊勢で毎回体験する出来事は、人間の叡智を遥かに超えたような自然の畏怖、説明が難しいですが「光や風が優しく迎え入れてくれる」感覚など、普遍的かつポジティブな空気に包まれています。僕らの作品は一貫して伊勢で経験した宇宙性、景色や食材からかいま見る自然への最大限のリスペクトが込められています。

この楽曲はそんな象徴的な一面を切り取り、たまたま曲が降ってきたタイミングで僕の目にその名が留まり、完成した作品なんです。これはきっと、偶然ではないはず。だから、軽めのEPではなく、フルアルバムにしたかった。


伊勢と同じ空で結ばれた、肇さんの箱根スタジオ

この曲の大きな特徴の一つでもある、肇さんの天空を舞うようなギターサウンドは、ほかの楽曲同様に肇さんの箱根スタジオで収録されました。

人里離れて、非常に恵まれた環境下、ログハウスの反響とギターアンプの音がマイクを通じて染み入ってくるそのサウンド。まさに光がきらめていて、早朝の箱根で感じられる澄んだ空気がそのまま音に現れています。これは、肇さんが贅を尽くした東京のスタジオで録るサウンドとは全く別もの。

一貫して肇さんは、今回のアルバム作品のギターを「クライアント仕事のように締め切りを設けず弾きたい」と言っていました。自分の心と空の色、空気の匂いが曲と一致した瞬間に録る。そこに強いこだわりを持って楽曲制作に臨んでいた。ので僕は納品に対してピリついたけども(笑)結果的に、僕は肇さんにリテイクをお願いしたことは一度もありませんでした。しかも、基本的に、ワンテイクしか録音していないのだから驚き。


時は昨年末までさかのぼり、僕と肇さんは共通してU2の伝説的なアリーナツアー「Joshua Tree Tour 2019」を見に行っています。そのとき、彼らの圧倒的かつ愛に満ちたパフォーマンスに、僕は膝から崩れ落ちそうになり、涙があふれていた。僕らが目指す音楽表現の、一つの完成系を見ました。

天空まで届くようなTHE EDGEのギターサウンドは僕の音楽表現において強い影響を与えてもらったもの。肇さんもそれは共通していて、僕らが作った曲はそろってディレイ(やまびこ)表現が多用されています。二人とも、その原体験はTHE EDGEだと感じています。

そのサウンドがまさに、「Salt」のギターにも強く現れています。前半の世界観は、まさにU2オマージュ。彼らが表現してきた音楽を僕らの感性で、アナログシンセを力強く用いて別物に表現したのがこのサウンドスケープ。

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ちなみにギターは僕もお気に入りの1974年ラージヘッドのFender Stratcasterで、実はエッジもこのギターを使っているのだとか。

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さらに、僕が大好きなこの通称「RADIOHEAD Guitar」。Ed O'Brienのモデルで、音が永遠に伸びていくサスティナーがついているのが特徴。シンセではなくギターで作る美しいアンビエンスが、Juputer-8などで作り出したシンセのアンビエントと折り重なることで生まれる美。肇さんの十八番と言える、ギターアンビエントオーケストレーションが光ります。


インスト楽曲で楽曲の世界を描いていく。
そのために一番大事なのは、
どんな音色で、どんな表現で弾くか。

肇さんは、30年間のCM音楽制作のフロントラインで、この技術を完璧に会得しています。その熟練でいて常に斬新なサウンド表現を追求するスタイルを、今回僕はかなりの濃度で吸収できました。

そのサウンドは、箱根という強いエネルギーを放つ場所から、天まで昇り、僕らが強く影響を受けている伊勢まで一直線につながり、何か特別な力を宿しているように感じています。そのつながる様が、マイクを通じて音として収録されている。僕はなんだか、音が録れたというよりも、エネルギーを記録した感覚の方が近いです。


ミックス①展開によって使い分けるキック

このセクションかなり専門的です。

この楽曲は後述するLAのBrendan Dekora氏の手に渡るまで、ずっと僕が細かく音の調整をしていました。Brendanについては前回の記事「Waterfall」についてをご覧ください。

前半で話したように、僕のこの曲一番のこだわりはキックです。何にこだわったかというと、セクション別にキックのキャラを微妙に変えたこと。感覚的にトリップしてもらえるように、ものすごく細かい編集をしています。

せっかくなので、その中身を少し解説。
本当はこういうのは有料にしようと思っていたけど、
PRも兼ねて特別に。


①キック 最初の一打とベースの絡み

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ここに、命かけてます(笑)

それまでのアンビエントな空気から一変する、一打目で引き込めなければこのアルバム全体に没入できなくなってしまう。美しく、でも必ず、マッシヴな音楽表現でなければいけない。そのためにどうしたらいいか。

僕はこのセクションで使うキックの音に、鋭く尖った刃物のような切れ味を求めました。そこで思いついたのが、手持ちのシンセで最も高域に抜けと鋭さを持つ、Access Virus TI2 Polarを混ぜてキックを作ることです。

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90〜2000年代に一世を風靡し、デジタルながらアナログモデリングシンセとして初期EDMでも大活躍したドイツ製のシンセ。この楽器の持つ抜け感はアナログの追従を許しません。アナログシンセのような低域の太さはありませんが、ミッドからハイにかけての「点の強さ」は誰も追いつけない。

Tempestを基調としたアナログ由来のローエンドは十分に担保できていたので、思い切って粘りと硬質さをデジタルで加えました。キックのリリースはなるべく短く、タイトなグルーヴを心がけています。

1音めのボリュームを思い切りつまんで、2音めからベースとドラムが絡み合うようにしました。このとき、ベースで裏のグルーヴをしっかり取れるように、あえてサイドチェインを過度に使わず録れたままのエンヴェロープ(音が発振して終わるまでの長さ)を活かしています。


②ハイハット登場

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ここから、少しキックの音色を変えています。ハイハットが前め、かつディレイで16分ぽく聴こえているので、そのグルーヴでスピード感は保ちつつキックに粘りを足していき、グイグイと巻き込む楽曲にすることを狙いました。キック全体のボリューム感は変えずに、ローミッドの要素を少しだけ多めに出し、若干アタックを遅くすることでキックの「キレの点」を拡げています。これだけで全く違うグルーヴになるのが、リズムの沼であり魅力。


③リードシンセやギターが登場

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ここで、キックの音色をがらっと変えます。よりローエンドを出して、リードシンセやギターが持つ中高域のパワーを支えられるよう全開で鳴らしています。上のフレーズで鳴らしている音とベースラインのコードが絶妙にずれているのもポイントで、それを感じさせないほどリズムはステディで気持ちよく、上のフレーズを聴くと前に進んでいく印象にできるよう意識。

ハイハットが裏で鳴っていて、こちらは少しミッド強めにしてよりグイッと心をグリップしにいっています。2回しめでより裏が気持ちよくなるよう、16分にディレイさせたハイハットが重なってくるところもこだわり。


④再びキックとベースが主役に

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③の配合を生かしながら、ボリュームオートメーションで②のキックキャラに寄せて、前後のつながりを強めました。このセクションの手前で2小節キックをオフにして、1拍空けてリバースキックで4つ打ちに戻すところにも命かけています(笑)

この曲はとにかくキックとベースが強く心に残ってほしいと考えていたので、なるべく展開自体もシンプルにそれらだけを聴かせる工夫をしました。


⑤アナログのノイズ登場

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ここからマッシブなキックと共に、③で使っていた裏打ちのハイハットも再登場させて高揚感を最高潮に持っていっています。ボリュームオートメーションで、最もこのセクションが立つように作っています。

決してケミカルな音色は入れず、それでいて音程感のないサウンドでキック&ベースのセクションに展開を作りたいと考え、最後の最後に僕の最狂シンセのひとつ、REON Driftbox Sを使いました。

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レバーで強烈なモジュレーションをかけられるこの一台、僕の楽曲では今作の「Soil」、昨年リリースの作品では「Reason」「Memento」で使っています。音程を出すなら同ブランドのRの方が向いていて、Sは完全なる飛び道具。でも、サウンドスケープを美しく作り出すときはこんなに優秀な楽器はありません。汚しこそが美を引き立てる。という概念を地でいっている。

このノイズがサイドチェインで微妙にうねるので、キックも追従してリリース長めのローエンド増し増しなサウンドに。拍の頭も後ろめも裏も全部ノレるグルーヴを目指しています。


ここでも登場、LAグラミーサウンド

そしてこの曲も「Waterfall」同様に、LAのグラミーエンジニアBrendan Dekora氏にミックスをお願いしました。

彼の仕事遍歴をみると、その幅の広さに圧倒されます。世界的スーパースターたちのサウンドを支えていることが如実に伝わってきて、「Waterfall」同様ファーストミックスから唸るサウンド。

特に、ここでも低域の処理のうまさが際立ちました。冒頭から豊かな低音でアルバムのオープニングを彩ってくれて、それでいてキックが入ってくる瞬間もしっかり個性を際立ててくれた。二律背反かと思っていたイントロとキックインの迫力を両方かなえてくれたことが何より衝撃的でした。


ハイブリッドなマスター音源制作

この楽曲のさらに特徴的な点は、マスタリング後にマスタリング音源とミキシング音源をくっつけて最終テイクにしたことです。普通あり得ないことなんですが、これには僕らにとって不可避な理由が。

キックが出てくるまで&エンディングはマスタリング音源
キックが鳴っている間はミキシング音源

要は、どちらのよさも捨てられなかったんです。マスタリングを終えた音源を聴き続けながら、「Waterfall」中心に再マスタリングすると決めた朝。(くわしくはこちら)マスタリング後の音源と前の音源を比較して、マスタリング後明らかに美しくなった中高域が魅力の前半&エンディングと、野太く迫力満点に推進していくミキシング音源のキックやベースのサウンド、どちらも素晴らしかった。ならば、僕らの音楽だし、僕らがいいと思ったことが正解だ!と二つのWAVデータを切り取って、貼付けました(笑)

その上で、改めて32bit / 48kHzから24bit / 48kHzへとマスタリングスタジオでダウンコンバートしてもらったところ、見事に僕らが望むサウンドに変貌したのです。32bitでトゥーマッチだったローエンドの破壊力が24bitに書き出された瞬間にすっきりスマートに。タイトなのに、とてもパワフルなキック&ベース、天に伸びるリードシンセやギター、儚げに響くピアノの音色、すべてが理想的な形にまとまりました。奇跡だと思いました。

アルバムの顔である「Salt」は、最後の最後までいろんな助っ人の皆さんの力を借りながら、全くの妥協がないイントロダクションになりました。


最後に

僕らはこの曲に出会ったことで、この楽曲で始まる最高のアルバムを作ろうというモチベーションを持つことができました。この曲がなければ、緊急事態宣言の中こんなに夢中になれることは見つけられなかった。そう考えると、この曲が紡いでくれるストーリーは本当に尊いです。

ALBUM VOYAGER、今もおかげさまで好調ですが、より多くの方に届きますように。改めてリンクを貼ります。興味を持ってくれた方、是非「コメントをつけてシェア」してみてください。皆さんのコメント、SNSで探してシェアさせてもらいます。


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